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Leaf Visual Novel Series Vol.3 "To Heart"



姫ぇ〜っ!どこに行ったのですかぁーっ!」

「どこにもいないわね…またにでも出かけたんじゃない?」

「なんとっ!?姫お一人で!?

「あら、別に驚くことじゃないわよ。姉さん時々出かけてるから」

「なななななんとっ!?そのような事は聞いておりませんぞっ!」

「言うわけないじゃない。言ったら外に出してくれないでしょ?」

「………っこうしてはおれん!誰かおらぬかぁ!?街へ芹香様を探しに行く!」

「…無駄だと思うんだけど…」

綾香様っ、なぜこのセバスチャンに何も言わなかったのですかっ!」

「だってぇ、姉さん出かけたそうだったから。暇だったんじゃない?…それよりそのセバスチャンって何よ(笑)」

「これは長瀬家の家長が名乗る事の出来る由緒正しい…」

「そー言えば姉さん探しに行くんじゃなかったの?」

「はっ!い、いかんっ!」

どたどたと数人の家臣を引き連れて城の廊下を走るセバスチャンこと長瀬源(推定79歳くらい)のこめかみにはすでに血管が浮き出ています。このジジイ、このまま逝っちゃうんじゃないかと思うような形相で馬にまたがり、城門から飛び出していきました。

「やれやれ、あの歳でよく頑張るわねぇ……」

ここ来栖川藩には二人の美しい姫がおりました。

一人は天守閣の欄干に寄りかかって、城下町をのんびりと眺める綾香姫、そしてもう一人が今、騒動の原因となっている芹香姫。

が、困った事にこの二人の姫は誰の許可も得ずに、お忍びで城下町へと出かけてしまうという趣味があったのです。

芹香様ぁ〜っ!

そのせいでこの長瀬源(職業:老中)は今こうして必死の形相で街を駆けずり回っているのでした。





のどかな日々





by 森田信之



浩之ちゃ〜ん、もう起きないと昼だよぉ〜」

「いいじゃんか別に。もーちょっと寝かしてくれよ」

「だめだよぉ。いつまでも寝てたら、それこそいつまでたってもお店継げないよ」

「…ったく、どーしてお前まで小姑みたいに……」

うるさく言うのかねぇ。

こいつは幼なじみのあかり。小さい頃からこうして俺にまとわりついちゃあ色々と世話を焼きたがる。まったく、俺なんかの世話やいて何が楽しいんだか…

「まだ親は現役で頑張ってんだから、俺が今しゃしゃりでることもないだろ?」

「う、うん…それはそうだけど…」

「ふぅ…ほら、起きたぞ。これでいいか?」

「うん、それじゃお昼食べようよ」

「あ、何だまた作ってきてくれたのか」

「ほら、今日はイワシの煮付け。ほら、早く食べよ」

「そうだな。ちょっと腹も減ったし、ちょうどいいや」

昔からこんなことをしてるせいか、どうやら周囲は俺たち二人は将来夫婦になるものだと思い込んでるらしい。親まで「あかりちゃんだったらあんたの世話も焼いてくれるし、ちょうどいいんじゃないかねぇ」とか言ってやがる。

「今日もいい天気だね」

「そーだな」

「明日も晴れるといいね」

「そーだな」

「ねぇ浩之ちゃん、明日もどこにも出かけないの?」

「そーだな」

「……聞いてる?」

「あぁ、聞いてるぞ」

「…何見てるの?」

「外」

何やら外が騒がしい。

材木問屋「藤田屋」の目の前で何か騒動でも起きたか?

芹香様ぁ〜〜っ!どこにおられるのですかぁ〜〜〜っ!?

おやおや、誰かと思えば厳めしいジジイかよ。

確かこの藩の老中だったっけ?長瀬…だったかな。息子が変なカラクリの研究にうつつを抜かしてるって噂だけど…お姫様をさがしてるのか。大変だね。

「…どうしたのかな?」

「さぁ?それよりあかり、おかわり」

「あ、うん」

ふぅ、のどかなもんだ。こうしてのんびりと昼飯を食えるのも天下泰平のおかげってやつか。

なんて和やかモードに浸ってると…

「浩之ぼっちゃ〜ん、大旦那がお呼びですよぉ〜」

という丁稚の声。やれやれ、また説教か?

「あかり、ちょっと待っててくれ。あ、このイワシ俺のだからな。食うなよ」

「うん、わかった」

階段を降りて一階へ。そこでは十数人にも及ぶ店員(?)でにぎわっていて、その中に見慣れない女の子が一人いた。新しい丁稚か何かかな。

「なに?」

「おお、浩之か。新しい丁稚が入ったんでな、お前が一番歳が近いし、挨拶させようと思ってたんだ」

「あっ、あの…」

何だ、ずいぶんちっこい子だな。耳に変な飾りなんかついてるし…

マルチ…です。よろしくお願いします」

「はぁ?マルチぃ?」

「は、はいっ」

…変な名前。異国の娘なのか?

「いや、そうじゃない。どうやらこういう名前らしい。まぁいろいろと教えてやってくれ」

「あぁ。わかった……さてと、それじゃとりあえず家の中でも案内するか」

「はいっ」

やたらと返事だけはいい。…どーいう子なんだ?

「……で、厠やこっち。…大体こんなもんか」

「広いお屋敷ですね〜、お掃除が大変そうです…」

「ん〜?まぁね。でもそれが仕事になるだろうな。ま、頑張ってくれよ」

「はいっ、頑張りますっ」

「ん、それじゃ俺はまだ昼飯の途中なんでね」

またてくてくと階段を上がっていく。何かまた変なのが増えたなぁ。親父も変なのの面倒見るのが好きだから、まあしょーがないか。

「あかりー、俺の分取っといただろうなぁ?」

「あ、うん、大丈夫だよ。それより何だったの?お説教?」

「いや。新しい丁稚の子が入ったんだってさ」

「へぇ、それじゃあとで街を案内してあげようよ。この辺入り組んでるから、迷子にならないうちに」

「…それもそうだな。それじゃこれ食ったら出かけるか」




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