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Leaf Visual Novel Series Vol.2 "Kizuato"



柏木家のカレンダー


柏木家のお花見 その5

by 森田信之



 

 

「唐突だけどさ」

梓が四つ目の太巻きをほお張りながらいきなり口を開いた。

「梓、飲み込んでからにしなさい」

「はいはい……ふぅ、そいで唐突なんだけど」

「なに?」

「ここにいるうち三人は未成年なのよね?」

「そりゃそうだ。成人してるのは俺と千鶴さんだけだからな」

「…んじゃあどーして酒が5合もあるわけ?」

ふと千鶴さんが持ってきたバッグの中身を見ると、確かに日本酒(5合ビン)が一本入ってる。

「あ、こ、これはね…」

「千鶴さん……」

「ほら、お花見の席にお酒は付き物じゃない?だから耕一さんが…飲むかなぁ……って…」

周囲の冷たい視線のせいでどんどん千鶴さんが小さくなっていく。

いくらなんでも、二人しか飲む人がいないのに5合はないだろう。そりゃあ俺だって酒は飲めるよ。でも花見で日本酒5号も飲むほどの酒豪じゃない。

「千鶴お姉ちゃん、5合は多すぎるよ」

「うん、俺もそう思う。1合か2合くらいで良かったんじゃないかな」

「やっぱり…多すぎますか?」

「うん」

と、四人が同じに肯く。

まったく、千鶴さんこういう所もでもズレてるんだからなぁ。やたらと(相手が未成年でも)酒をだそうとするし…

「ま、まぁないよりはマシじゃない?ほら、耕一さんどうぞ」

どこから取り出したのか、大き目の杯を俺に手渡す。そしてこれまたどこから出したのか解らないようなとっくりを差し出した。

「ひょっとして…もう入れてあるの?」

こくり。

と、隣りにいた楓ちゃんが肯く。良く見ると顔が赤い。耳まで赤い。首筋まで赤い。

「千鶴さん…まさか楓ちゃんに…?」

「あ、あの…楓が少し飲みたそうにしてたから…」

「千鶴姉!」

と梓が立ち上がる。が、ちょっとフラフラしてる。おまけに「ちづるねえ」が「ちじゅるねえ」になってた。まさか…こいつも!?

「あんたねぇ、楓(かえれ)にまれ飲ませて、なぁに考えてるのよぉ」

いかん、こいつもすでに出来上がってる。

…って、良く見たら5合ビンの中身ってもう半分近く減ってるじゃないか!

さすがに初音ちゃんは飲んでないみたいだ。さっきから一人で麦茶を飲んでる。

「梓お姉ちゃん、座った方がいいよぉ」

「うー…」

といいながら座る。

「千鶴さん…」

「は、はいっ?」

「未成年に酒飲ませるのは止めた方がいいよ」

「そ、そうですね。そうみたいですね。あはははは…」

やれやれ、千鶴さんらしいといえばらしいけど…

「あ、楓お姉ちゃん…」

俺によりかかって寝ちゃった楓ちゃんはどーするんだよ…やっぱり俺がおんぶして連れてかえるんだろうなぁ…。

「すみません、耕一さん」

「いや、しょーがないよ。でも今度からあんまり楓ちゃんには酒のませない方がいいね」

梓はしばらくして正気を取り戻した(?)ものの、楓ちゃんは静かな寝息を立てたままだ。で、結局俺がおんぶして家まで連れて行く事になった。

「あーぁ、楓のやつ幸せそうな顔しちゃって。いい夢見てるんだろうね」

当然俺からは背中にいる楓ちゃんの表情は見えない。ただ、規則的に首筋にかかる寝息がやたらとくすぐったいだけだ。

「よほど耕一さんの背中が居心地いいのね」

「あれ?千鶴お姉ちゃんやきもち?」

「そ、そういう訳じゃないわよ」

後ろからは微笑ましい長女と末っ子のやり取りが聞こえる。だが…

「おーい、誰か門開けてくれよぉー」




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