Back/Index/Next
Original Novel
Nobuyuki Morita Presents



月光






「すみません、いきなりお邪魔して」
「いいのいいの、私もちょうど退屈してたしね。お茶いれるからちょっとまってて」
 そういえば晶良に「お前はコーヒーだけは客に出すな」って言われてたっけ。何でなんだろう?私のコーヒーってそんなにまずいのかな?
 とりあえず緑茶だったら味に差も出ないし、一番無難かな。
「はい、お待たせ」
「ありがとうございます」
「ごめんね、今ちょうど綾姉も深雪も晶良もいないのよ。深雪がいたら面白かったのにね」
「そうですね。…私もあんなに自分にそっくりな人って初めて見ましたから」

 うーん、喋り方がしっかりしてるのも深雪と同じなのね。あの子は綾姉と同じでちょっと天然が入ってるけど、肝心なところはしっかりしてるし…
「で、今日はあの…えーと…そうそう、祐介さんはどうしたの?一緒じゃないの?」
「はい、祐介さんは今日は学校でどうしてもはずせない用事があるって言ってましたから」
「へぇ、学校ってどこの?東京の大学?」
「そうです。こう見えても私も一応は大学生なんですよ」
 これはかなりびっくり。深雪と同じで童顔だから、ひょっとしたら中学生かもしれないと思ってたのに…

 しばらくは普通の世間話。こうして二人で話してても全然違和感がないところなんかは、さすが親戚ってところかな。顔も深雪みたいだし、なんだか妹と話してるみたい。
 …だったのが、いきなり話題が急転換した。
「私…」
「…?どしたの?」
「…私、今妊娠してるんです」
 危うく口に含んだお茶を吐き出しそうになった。
 妊娠?こんな小柄な…中学生にも見えちゃいそうな子が?この子のお腹の中に…
「ににに妊娠…って……赤ちゃんが…?」
 小さく一つ肯く。
「相手は?やっぱりあの…祐介さん?」
 また一つ肯く。
「…そのことは彼は知ってるの?」
「はい、知ってます」
 妊娠って言ったら大変なことじゃない!何だってこんな…二十歳にもならない子が…?
「あの…勘違いしないで下さいね。私…本当に子供がほしいんです。今すぐにでも」
「だからって…」
「子供を育てることが大変なのは分かってます。でも…どうしても子供が欲しいんです。祐介さんの…祐ちゃんの赤ちゃんが産みたいんです」

 次第に目が潤んでいく。そしてとうとう涙が溢れはじめた。…なんとなく深雪に泣かれてるみたいで心が締め付けられる。小さい頃からあの子が泣くところを見るのは苦手だったもんなぁ…。
「祐介さんは何て言ってるの?」
 もし堕ろせなんて言ってたら今すぐにでも殴り込んでやる。こんなにいい子を泣かせるなんて許せないよ。
「すごく喜んでくれたんです」
「へ?」
「子供ができたっていったら…今まで見たこともないくらい喜んでくれたんです」
 それと、聞けば彼女たち二人は実家から譲りうけた財産がものすごい額になるんだそうな。けっこう私達と共通するところがあるのね。 「なーんだ、それじゃあ問題はないじゃない。心配して損しちゃった」
 そう言ったと同時に、きょとんとした表情になった。
「もんだい…ない…?」
「そう。だって父親も子供ができたことを喜んでるし、沙耶ちゃんだって望んでできた子供なんでしょ?それにちゃんと育てられるお金があるんだったら喜ぶべきよ。何にも泣くことなんてないじゃない」

 最近の綾姉もそうだもんなぁ。まだ結婚もしてないのに育児雑誌とか買ったりしてるし、挙げ句の果てに、最近は赤ちゃん用の毛糸の帽子とかも編んでるし…晶良も大変かもしれないな。最近あの二人、一緒に寝てるみたいだし。…ちょっとうらやましい…かな?
「あ、あの…本当にそう思ってくれるんですか?」
「決まってるじゃない。すごくおめでたいことよ。…そうだ、今度祐介さんが時間ある時にうちにおいでよ。みんなでお祝いしよう。うちの綾姉ももうすぐ結婚するんだけど、今から子供がどうのこうのって言ってるのよ。いろいろ話してみたら?知識だけはあるみたいだから」

 しばらくの沈黙。そして、急に声を上げて、きれいな顔をくしゃくしゃにして泣き出した。…晶良が一回死んだときの綾姉と一緒ね。
 ずっと何かを一人で抱え込んでて、その堤防が壊れるとこうなるのよ。
「…今まで誰にも言えなかったのね……大丈夫、私たち親戚じゃない。姉妹と一緒なのよ。何でも話してくれていいからね」
 多分、祐介さんにしか言えなかったんだろうね。それで思いつめて…
 まったく、こういう所は深雪というより綾姉みたい。何でも一人で考え込んで、結局抱え込んじゃうのよ。
「私…わたし……」
「いいの。今は好きなだけ泣きなさい。私のこと、本当のお姉さんだと思っていいから」
 昔を思い出すなぁ。まだ深雪が小さい頃、泣き虫だったあの子が泣くたびにこうしてなだめてたっけ。泣く子をなだめさせたら綾姉の方が上だけど、今は私しかいないしね。


 しばらく泣いて、ようやく落ち着いた頃には深雪も帰ってきた。最初は泣いてる沙耶ちゃんを見てびっくりしたみたいだけど、理由を聞いてもっとびっくりしたみたい。
「すごーい!おめでとうございます!!」
「…ありがとう……」
「うわぁ〜、そうなんだ、赤ちゃんが…お腹触ってもいいですか?」
「え?う、うん…」
 恐る恐る沙耶ちゃんのお腹に手を当てる。そういえばこの子も子供が大好きだったっけ。
「そうそう、身体大事にして下さいね。妊娠三ヶ月までが一番大事な時期らしいですから」
「うん…」
「あとお腹冷やしたりするのもだめみたいですよ。今日保健でちょうどやったんですよ。そうかぁ〜、可愛いんだろうなぁ〜」
 と、少し垂れぎみの目尻をさらに下げちゃってこの子ったら。でも沙耶ちゃんの方が逆に驚いてるみたいね。
「あの……」
「ん?何?」
「ありがとうございます…こんなに喜んでもらえるなんて……今日は泉水さんになじられるのを覚悟してたんです」
「なじるって…何で?」
「二十歳にならないうちに子供ができるなんて…」
「年なんか関係なし!望んでできた子でちゃんと育てられるんなら最高じゃない」
「島の人たちは…多分喜んでくれなかった……」
「どうしてですか?赤ちゃんができたのに…」
「多分…『また鬼の子が生まれるのか』って…」
「何言ってんの。生まれる子供にはなんの罪も無いじゃない。それに私たちってレアな存在なんでしょ?一人でも増えるのはいいことよ。…元気な子だといいね」
「……はい」

 なるほど、それで今日来たときにちょっと思いつめたような顔してたんだ。
 多分、子供ができたことを誰かに喜んで欲しかったんだろうな。でも喜んでくれる人は祐介さんしかいない。他の人に話したら「堕ろせ」だの「ちゃんと育てられるの?」といわれるに決まってるもの。それでストレスたまってたんだね。
「あの…今日はもうそろそろ帰ります。祐介さんにも教えたいから」
「教えるって…何を?」
「…泉水さんと深雪さんがこんなに喜んでくれたことです。祐介さんも多分喜ぶと思います。それにもうそろそろ帰って晩御飯の支度してあげないと…あの人料理全然できないんですよ」
「なるほど。それじゃ駅まで送るよ。深雪、留守番お願いね」
「うん。それじゃ沙耶さん、また来てくださいね」
「うん…ありがとう」


 駅までは歩いて大体三十分。ちょっと遠いけど、二人で歩くことにした。
「私たちね…」
「え?」
「親戚にはいやな思い出しかなかったんだ」
 私たちはまだ子供だったけど、今でもはっきり覚えてる。お父さんとお母さんが死んだときのあの人たちの目…
 叔父さんと叔母さんがいなかったら、多分三人ともあの人たちに食い物にされてたんだろうと思う。ひょっとしたら、今こうして生きてなかったかもしれない。
「だからずっと親戚付き合いとかはしなかったんだけど…会えてよかった」
「泉水さん……」
「親戚って、ずっと財産目当てで近づいてくるような人たちばっかりだったから……でもなんでだろうね、沙耶ちゃんと祐介さんは全然そんなこと意識しないもの」
「私たちと同じなんですね」
「…沙耶ちゃんたちもそうだったの?」
「はい…私と祐介さんは特に鬼の血が強くて…みんな……両親以外はみんな私達のこと冷たい目で見てたんですよ。『お前達なんか生まれなきゃよかったんだ!』っていわれたこともありましたし…」
 それはひどすぎる。生まれてこない方がよかった人なんていないのよ。みんな産まれたときはすごくきれいな心なんだから。それを「産まなきゃよかった」とか思う人たちが汚していくんじゃない。本末転倒なのよね。
「これからも何かあったらうちに来てね。沙耶ちゃん達だったらいつでも大歓迎だから」

 二人で今までのことや今のこととかを話すうちに駅に着いた。もう空は少し薄暗くなってる。日が長くなってるけど、さすがに今の時間は暗いみたい。
「それじゃ気をつけて帰ってね。祐介さんによろしく」
「はい、それじゃあ…今日はありがとうございました」
「ありがとうございましたなんて、そんな他人行儀な言い方しないでよ。ありがとう、でいいのよ」
「…ありがとう……」


 窓に明かりが点いてる。もう沙耶が帰ってきたのかな。確か今日は古門さんちに行くって言ってたっけ。
「ただいま」
「あ、お帰りなさい」
「…どうしたの?なんだか嬉しそうだけど……」
「…うん、今すごく幸せな気持ちなの」
 どうしたんだろう。こんなに嬉しそうな沙耶なんて久しぶりに見たな。赤ちゃんができたって言ったとき以来だ。
「泉水さんと深雪ちゃんがね…すごく喜んでくれたの。赤ちゃんができたって言ったら、それじゃあ今度みんなでパーティーしようって。祐ちゃんも一緒に」
「…そうか…そうだったんだ」
 なるほど、それでこのごちそうか。嬉しいことがあると必ずごちそう作るんだよな。

 こないだまで、古門さんたちに会うのは正直言って恐かった。千年も前に別れた親戚を見て、「だから何?」とか冷たくあしらわれるのが恐かったのかも知れない。いや、多分そうだろう。
 でも彼らは僕と沙耶を温かく迎えてくれた。まるで小さい子供の頃から知っていたように、まるで本当の兄弟みたいに…
 島にいた頃はこんなことは一度もなかった。なじられたことや冷たくあしらわれたこと、無視されたことはあっても、暖かく「またいつでも来るといいよ」なんて言ってくれることなんて、今回が生まれてはじめてかもしれない。
「ねえ祐ちゃん、今度二人で古門さんの家に行こうよ」
「…そうだな、それじゃ来週の週末にでも行こうか。平日だったら晶良さんも綾音さんも忙しいだろうから」
「うん、何かお土産もっていかないとね」

 時計を見るともう夜の八時。いつもに比べると少し遅めの夕食だ。でもいつもと同じように沙耶と向かい合って食べる。小さい頃からこうしてたんだから、別に違和感とかは感じたことがない。
「沙耶」
「…うん?」
「元気な子だといいな」
「……うん」
 今の鬼はまるで自ら望んで滅んでいくみたいだ。僕らと同年代の鬼はもういないし、島には今から子供を作れるような人達はいない。一部からは「鬼は滅ぶ運命にある」という意見も出てた。僕らが産まれた後、父さんと母さんは周囲から散々な目に合わされたらしい。ほとんど人目から隠すように育てられた時期もある。もちろん沙耶の両親も。
 その時の苦労がもとなのかは解らないけど、僕の両親、沙耶の両親ともに今はこの世にはいない。若くして病死してしまった。
 それからは二人でずっと寄り添うようにして生きていかなきゃいけなかった。父さんと母さんの死後、鬼は滅ぶ、という意見が島の大半を占めてたからだ。当然子供の僕らは邪魔になる。何度か殺されそうになったこともある。助けてくれる人なんてほとんどいなかった。近い親類でもそうだ。

 何かが間違ってる、そう感じたのは高校生の頃だった。そして決断したのもその頃だ。直接のきっかけは、三年前に起きたある事件だった。あれは多分、この先一生忘れることはできないだろう。
 両親が残した遺産を使って島を離れた。多分もう二度と戻ることはないだろう。沙耶と二人で東京都内の大学に進学して、二人で暮らしはじめた。東京はいろいろな所からいろいろな人が来ている。木の葉を隠すなら森、というのと同じ理論だ。これだけたくさんの人がいるなら、誰も僕らのことを気にすることはない。二人で静かに生きて行こう、そう約束したんだ。
「祐ちゃん」
「ん?」
「……これで…よかったんだね」
「…ああ、そうだね」
「私のことであんなに喜んでくれる人なんて…今まで誰もいなかったもん。あの人達ならうまくやって行けるよね」
「ああ、僕もそう考えてたよ」

 沙耶も誰かに喜んで欲しかったんだろう。子供ができた、ということを誰かに言って、一緒に喜んで欲しかっただろうに、誰も知り合いがいない東京では誰にも言うことはできない。島の人間に言ったらまた同じ事の繰り返しだ。大学の友達に言っても喜んではくれないはずだ。
「よかったよ。勇気を出して会いに行って」
「うん…そうだね。やっぱりああいう親戚って…いいものなんだね」
「……そうだ、お土産考えておこう。何持っていけばいいかな」
「私が何か作るよ。料理だったら自信あるから」
「そうだな。沙耶の手料理が一番ないかもしれないな」
 多分今が今までの人生の中で一番幸せな時間だろう。沙耶の幸せそうな顔を見てたらそれがよく分かる。
「祐ちゃんのそんなに幸せそうな顔…久しぶりだな」
「ん?僕の?」
「うん。今すごく幸せそうに笑ってたよ」
 意識しなくても笑顔になってしまう。
 そうか、これが幸せってものなんだ。…そうか……これがそうだったのか…


「大体のところは分かりましたよ」
 デスクの上は相変わらず散らかっている。まるで書類の山に埋もれるように座っていたのは三浦滋だった。
「おう、ようやく調べてきたか」
「これが最近三十年間の三島の出生人口です。ほら見てください。ここ二十年近く、一人も子供が生まれてないんですよ」
「…確かにこれは異常だな…」
 机の上のディスプレイには折れ線グラフなどのいろいろなグラフが出ている。どこでどう調査したのか、そのグラフは九州は五島列島の南にある三島、という島の資料だ。
「ものすごく急速な高齢化ですね。古い資料はなかったんですけど、このままだと確実に三島に住む鬼は絶滅します」
「で、この最後に生まれた子供が…こないだのあの子ってわけか」
 その子供が生まれる一年前に生まれていたのが三島祐介だった。
「…なーんか気にかかるな。三島家っていったら、要するに三島の統領みたいなもんだろ?それがどうして島を出たんだ?」
「時代の波ってやつですかねぇ」
「ほかに何かないのか?少なくともこないだのあの子の様子から言って、ただ進学のためだけに出てきたって訳じゃなさそうだったぞ」

 滋にとって一番の謎は、どうして彼ら二人がわざわざ故郷から遠く離れた東京に出てきたのか、という点だ。大学ならもっと他にもたくさんある。一番近いところで言えば長崎大学とか、そういう所でもいいはずだ。将来三島の統領となる身分の彼らが、どうしてわざわざ東京に来たのか。彼はその点に異様に執着していた。
「別に不思議じゃないと思いますよ。地方から東京の大学に出てくるのはそう珍しい話じゃないですし、それに…」
「そうじゃないんだよ。おまえは実際に三島に行ったことがないから分からんだろうが、状況が普通とはずいぶん違うんだ」

 三島祐介と広瀬沙耶。この二人が島を出たのは今から三年ほど前のことだ。彼らが島を出た直後、かなりの大騒ぎになった。つまりこの二人は「誰にも告げずに」島を出たということだ。
「考えても見ろ、普通その土地の名士の、しかも跡取り息子が島をこっそり抜け出したりするか?」
「はぁ…そう言われてみれば…」
 しかも、三島の老人達は二人に好意的な感情を持っていないどころか、嫌悪感をあらわにしていたのだ。滋が取材に行ったときも露骨にいやな顔をしていたらしい。おまけに三島祐介のことを口をそろえて「あの鬼っ子が」と吐き捨てたのだ。
「な?何かあるだろ?」
「あの、素朴な疑問なんですが…」
「何だ?なんかあんのか?」
「三浦さん、独りでその三島ってところに行ったんですよね?」
「ああ、一人だ」
「…三島祐介一人であれだけ圧倒されてたのに、よく取材なんかできましたね」
 そう言えばそうだ。三島祐介からは、普通に話していても背中一面に脂汗をかくくらいの圧迫感と恐怖感があったが、三島の「鬼」達からはまったくそういったものは受けなかった。
 三島は言ってみれば現代の鬼ヶ島といっても過言じゃない。そんな所に行って、彼は悠々と取材をこなしてきたのだ。
「そう言えば…そう言えば変だな。あの二人はあれだけ威圧感があったのに、どうしてあの島の連中は……」

 ふいに電話が鳴り出した。話を途中できって受話器を取る。
「はいもしもし?」
 だが受話器からは何も聞こえない。
「もしもし?」
 突然切れた。無言電話か間違い電話だろう。
「誰だったんですか?」
「いや、多分間違い電話だな。…で、何の話だったっけ?」
「ほら、三島の話ですよ」
「ああそうだったな。まぁあの島の連中のことはいいとして、どうしてここ二十年子供が産まれてないのかだよな。…この場で考えられる理由はないことも無いが…」
「どんな理由ですか?」
「…いいか?三島ってところでは血族結婚が当たり前だったんだ。そうやって鬼の血脈を伝えてきたんだからな。そういう近親婚が何代も続いたことで、次第に生まれてくる子供の生殖能力が弱くなった…まぁ医学的な根拠には乏しいけど、これが今んところ一番の有力候補だろうな」
「つまり血が濃くなって…」
「そういうことだ。公には法律にかなった近親婚だけど、多分もっと近いところでの近親婚もあったんじゃないか?たとえば兄妹とか、そんな感じでだ」
「…なんかドロドロしてますね」

 だが、血族結婚の夫婦間に生まれた子供が遺伝的に劣る、という説には医学的な根拠にかけるところがある。外部からの免疫の遺伝子などが入ってこないせいで感染症が大流行した際に危険であろうという予測はつくが、今のところ確実な根拠にはならない。
「何にしても謎が多すぎるな。どうして三島祐介と広瀬沙耶の二人は黙って島を出たのか。なぜそのことを島の連中が大騒ぎしたのか。それと、鬼はこの先どうなるのか」
「ふーむ…難しいですね」
「だから調べるんだよ。なんつっても鬼は今かなり注目を集めてる存在だからな。町中には「ニセ鬼」がいるくらいだ」
 そこまで言うと、三浦滋は上着をつかんで席を立った。
「ほら行くぞ!ボーっとすんな!」
「え?い、行くって…俺まだ帰ってきたばっかり…」
「いいから行くんだよ!」
 社会部のドアが少し乱暴に閉じた。


Back/Top/Next