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Wizardry The Curse of Ancient Emperor



極悪忍



Nobuyuki Morita Presents


 

――ボッタクル昇天――

 

 

「ん?今なんて言った?」

「…ほ、本当に買っていただけるんですか?」

「だって仕方ないだろ?またダンジョンの中であの「ぺたぺた」って足音聞かされるよりはマシだ。ついでだから服も買ってやるよ」

「あ、ありがとうございますっ!」

思いっきり頭を下げた拍子にドアに頭をぶつけた。…骨の髄までトロい奴だな。

「………痛いか?」

「ぐすっ…い、痛いですぅ…」

「自業自得だ。ほら、さっさと行くぞ」

何だかこいつに付き合ってると俺までトロくなりそうだ。

さて、ここはおなじみのボッタクル…じゃない、ボルタック商店。ここの親父はきわめて自己中ということで有名だ。何しろ買い値は売り値の半額というのだからどれほどのボッタクリ野郎かが分かる。

「すごく嬉しいです。私、こうして服買ってもらえるなんて…」

「感謝しろよ」

はいっ

「それなら礼は身体で払えよ」

「えっ?」

「当然だろうが、お前ができる礼って言ったらそれくらいしかないんだからな…」

「……はい(かぁっ)」

…って本当に真っ赤になりやがった。こいつひょっとしたら本当に「身体で払う」つもりなのか? …まぁそれならそれでいいけど。夕べ尻触った感じではそれほど幼児体型でもなさそうだ。着やせする、といった方がいいかも知れんな。

 

店の中は実に雑然としてる。多分どこに何の商品があるのか、このオヤヂも把握してないだろう。

「おいオヤヂ、ホビット用の服出してくれ」

「………(じろっ)…」

オヤヂは無言でもそもそと店の奥に消えていった。

「あ、あの…」

「んー?」

「私ホビットじゃないです、こう見えてもエルフなんです」

「………何ぃぃ!?

「ただ背が低いだけなんです…」

…ふ、ふーむ、こいつは誤算だ。

「オヤヂ、ホビット用じゃない、エルフ用のやつ出し…」

ふざけんなぁぁぁぁぁぁああ!!!

突然オヤヂが切れた。般若のような形相でこっちに迫ってくる。マルチはあまりのことに反応すらできてない。

せっかくワシが、このワシが探しに行ったのに何じゃとぉ!?エルフ用じゃとぉ!?

だめだ、完全にイっちゃってる。いや、このままだと逝ってしまうかも知れない。まぁそれはそれで全然かまない。どーせこのオヤヂがここで心臓麻痺で死のうが俺の人生には何の関わりもない。とりあえず金を頂いていくだけだ。

しかしこーまで逆ギレだと、かえって見てて面白い。脳の血管が切れるまでおちょくってみようか。ただでさえこめかみに血管浮き出たジジィなのに、こんなに血圧上りまくりな怒り方したら十五分程度で脳溢血だろう。

「まぁそう言うな。俺様は客だぞ?」

だからなんじゃ!ワシがせっかく探しに行ってやったのに、それを後になって変えるとはどういう了見じゃ!

うーん、まだ逝ってるな。スパークどころかバーストしてやがる。よく見ると手が震えてるし、店のカウンターには酒ビンが…

なんだ、このビンに入ってるのってエチルアルコールじゃないのか?これって…飲んだらやばいやつじゃなかったっけ?

大体キサマら若いモンは…

「あー、判った判った。それで服は?

ただでさえ赤面般若のような顔だったのがさらに紅潮していく。茹で上がったエビのような色だ。マヨネーズかけて食ったらうまいかもしれない。…でも食当たり起こしそうだな。

「ほれ、金なら出してやる。これでてきとーに……」

いやだーお客さぁん、それを早く言ってくれなきゃぁん

後ろでマルチがコケた。俺も危うくコケそうになってしまった。突如としてオヤヂの声が2オクターブほど上がる。フォントも痩印体からいきなり丸文字ゴシックになった。

金を見たとたんに般若からオカマになりやがった。まるで「お客様は神様です」とでも言わんばかりの営業スマイルだ。しかも到底老人とは思えないほど軽やかな身のこなしで店の奥から服を取り出してくる。

しかしオヤヂのオカマってのも気持ち悪いもんだ。はたから見るぶんには特に問題ないが、少なくとも俺様の半径1メートル以内に近づなよ。

こちらなんかいかが?今年の流行りですよぉ?

「あ、あの……」

あらぁ、お気に召しません?とってもお似合いなのにぃ

「…(ロ、ロア様……この人恐いです…)」

「…(まぁもうちょっと見とこうや。面白いから)」

ほらぁ、こちらなんか今年のパリ・コレで発表されたんですよぉ?…ほーらぁ、お・に・あ・いぃ♪

といって取り出したのは、どう見ても実用的じゃないヒラヒラな服だ。しかもそれをマルチに当てて恍惚な表情になっている。もはやどうしてこんなボロい店にパリコレの服があるのかは問題外だ。

その後もオヤヂの一人ファッションショーは延々二十分も続いた。終わり頃になるとマルチが泣きそうになってきたんで、そこそこアーマークラスを下げられるやつを買って店を出た。もちろん安いやつだ。それでもオヤヂは

お客さぁん、また来てねぇ♪

というまるで駅前のインチキぼったくりバーのママのような声を背中に投げかけた。取り合えずこの店には二度と来るまいと心に決める。それにはマルチも無条件で賛成したようだ。

 

 


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