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Wizardry The Curse of Ancient Emperor



極悪忍



Nobuyuki Morita Presents


 

10

再びダンジョンへ

 

さて弱った。

一撃で首を刎ねられる程度の強さとはいえ、あのハルギスが一応のラスボスだからなぁ。あいつの後ろに何かがいるとすれば、やっぱりこのダンジョンの中にいる事になるだろう。だがこのダンジョンはほとんど隅から隅まで調べ尽くした。階段なんてのもなかったし、落とし穴もないし…

「あ、ロア様」

「んー?」

「ほら、隠しドア

マルチが指差す先には、確かに壁にカモフラージュした隠し扉が…

「…なるほど、そういう事か」

「え?」

「そうかそうか、面白いことしてくれるな」

「え?え?……え?」 

「マルチ、マロールでどこまで行ける?」

「え?マロールで、ですか?えーと……9階までなら直接行けますけど…」

「よし、んじゃあ9階に行くぞ」

「え?…で、でもどうしていきなり?」

「やり残した事があるみたいだからな。もうあそこにはリルガミン・アニキ倶楽部はないし、何も心配いらん。ほら、さっさと行くぞ」

「は、はいっ」

マルチの気が高まっていく。

自分の痕跡が残るところと今いる場所はかなり離れているが、マロールというのは便利なものだ。物理的な空間の距離を一瞬でゼロにしてしまう。座標軸平面を無理矢理捻じ曲げて、離れた二点をくっつけるという魔法だ。ちょうど折り紙を折り曲げて端と端をあわせるようなもんだが…誰が考えたんだろうな…

空間が捻じ曲がった。周りの景色が一気に別の姿に変わる。

行きますっ!

マルチの声と同時に景色がズレた。

次の瞬間、見覚えのある場所にいた。そして、そこには見たくもない顔もあった。

「あらぁ、マルチちゃんじゃない。ロアもいるのね」

「ヤシャさん?」

まるで親しい友達にでもあったようにヤシャはにこにこしながらこっちへよってくる。その足元にはグレーターデーモンの死体が、少なく見積もっても5つは転がっている。

「何でお前がここにいるんだよ」

「えぇー?別にいいじゃない。ねぇ?」

といってマルチにウインクする。こいつら二人をくっつけるとどーもマズいようだ。とりあえず入りたくはないが俺様が間に入る。

「…そもそもどーしてこの国に来たんだよ。お前今賞金稼ぎしてたはずだろ?」

「ええ、してるわよ。でもこの国に寄らなきゃいけない事情があるの」

「事情?」

「そう。まじめな事情がね。……ってゆーわけでぇ、どう?私も入れてくれない?」

「はぁ?」

「ねぇ〜ん、お・ね・が・い

胸元のボタンを外して俺様に擦り寄ってくる。これがマルチなら即座に襲い掛かっていたところだが、ヤシャの怖さは身を持ってよく知っている。そんな色仕掛けに引っかかるかよ。

「誰がお前なんかと…」

「あら、そお?…ふーん、そーなんだ、私に向かってそんな口利くんだ。へぇ〜」

と、何か企んでる顔をする。

「ねぇマルチちゃん、ロアの恥ずかしい秘密、知りたくなぁい?」

「え?ロ、ロア様の…?」

「そ♪とぉっっても恥ずかしい秘密

「なっ……ま、まさかあの事……」

「え?え?何なんですか?」

「そうよぉ、あの事よ。あんなこと知られた日にゃあ、この子にもでかい顔できないわねぇ」

「くっ……相変わらず…歪んでやがる……」

「ロアに言われたくないわよ。さぁ、どうする?足手纏いにはならないわよ」

「え?あ、あの……ロア様…?」

「いーから黙ってろ!……仕方ない…入れてやるよ……」

「やったぁ♪さすがロアね。お礼に今夜…」

「断る!マルチに手を出すのも断る!」

「…?」

俺様とヤシャの間でマルチが訳も分からずに真っ赤な顔でおろおろしている。

「いいか!マルチは俺の女だ!今夜も明日も明後日もその次も俺が抱く!」

「…はいはい、解ったわよ。相変わらず駄々っ子なんだから。冗談なんだからそんなに目くじら立てる事無いじゃない」

畜生、どうしてもヤシャがいるとペースが乱れる。

でも正直な話、こいつは仲間になればかなり強力な戦力だ。職業はビショップだが、剣術の腕前はそこらの高レベルな戦士など剣先をカスらせることもできないくらいだ。気がつけば斬られている、そんな感じだろう。その餌食がここに転がってるグレーターデーモンだろう。多分こいつら、斬られた事にも気づかなかったんじゃないかな。

「さ、行きましょ♪」

と、ヤシャだけが意気揚々と歩き出す。

「……ふぅ…」

「あ、あの…ロア様?」

「ん?」

「元気ないですけど…大丈夫ですか?」

大丈夫にみえるか?

ふるふると頭を横に振る。うん、なかなかいい目をしてる。

「…まぁ、なったものはしょーがない。行くぞ」

「は、はい」

 

 


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