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Wizardry The Curse of Ancient Emperor



極悪忍



Nobuyuki Morita Presents


 

11

彼女の事情

 

 

「で?何なんだよ、事情って」

「え?何の話?」

と、いつもの調子でとぼけるヤシャ。この女、全然変わってないな。

「さっき言ってた『まじめな事情』だよ。何なんだよ」

「んー…聞きたい?」

とマルチの方をむいて逆に質問をする。こういうひねくれたところなんかは300年前のままだ。もちろん、そんな事知る由もないマルチは大きな垂れ目をぱちくりさせている。

「お前が言うまじめな事情ってのもけっこう興味あるからな。ほら、話せよ」

「別にいいじゃない。ね?」

「お前がよくても俺がよくない。話せ」

「しょーがないわねぇ、そういう強引なところも全然変わってないんだから。ま、そこが可愛かったりもするんだけどね」

うっ…なんか寒気がする。

ヤシャに可愛いなんて言われるとどうもあのおぞましい過去が思い出されていかんな。

黄泉の女帝よ」

「あん?」

「黄泉の女帝。この国の一連の事件の黒幕よ。そいつに用があるの」

いきなりこの話のラスボスをバラしやがった。まったく、話の筋ってものを全然気にしてないな、こいつ。

「用って何なんですか?」

「ん〜?まぁちょっと恨みがあってね。晴らさなきゃいけないの。マルチちゃんも手伝ってくれるわよね?」

「え?は、はい……」

「いい子ね。さ、もういいでしょ?それじゃ行きましょ」

「ちょっと待てよ、『まぁちょっと恨みがあってね』じゃ全然判らんぞ」

「………いいの。今はこれ以上は話さないわよ。どうしても聞きたかったらベッドの上にして

「…………わかった、聞かんよ」

危ない、またこいつのいつもの手に乗るところだった…

 

さて、地下九階の落とし穴を抜けてようやく最下層部へやってくる。ついこの前まで、ここはあのハルギスの居城のようなものだった。

地下十階。空気はひんやりとして湿っている。どこからか水滴が落ちる音が聞こえるが、ずっと遠くの方なのだろう。ここからは見えない。薄暗い廊下が延々続いている。

「…あった、やっぱりだ」

俺様の指先に何か触れるものがある。壁がほんのわずかにだが、ずれているようだ。少し力を入れて押してみると、案の定隠し扉だ。前ここに来たときはマルチといちゃいちゃするのに夢中で気がつかなかったな。

「……けっこう広そうですね」

「そうだな。ヤシャ、お前先に行けよ」

「えー?こういう時に女を先に行かせるわけ?」

「いつもは止めても真っ先に突っ込むだろうが。ほれ、レディーファーストだ」

いつも言っていたことの揚げ足を取られて反論できないようだ。ふん、日頃の行いが悪いからこういう事になるんだよ。

「…ねぇ、何か変じゃない?」

「なにが?」

「……敵が少なすぎるのよ。さっきから全然出てこないじゃない」

「そういやそうだな。いないんじゃないか?」

「どーしてあんたはそう楽観的なのよ。変だと思わないの?仮にもここは古代皇帝の居城だったんでしょ?ザコの一匹でも出てきても不思議じゃないじゃない」

そう言えばそれも道理だ。横でマルチが「出てこない方がいいですぅ」という顔をしているが、取り合えずそれはそれ。ここまで敵がいないのはおかしい。

「このドア開けたらいきなり出てくるとか…」

といってヤシャがドアを開ける。その直後、ヤシャも自分の行動を後悔したようだ。

突然目の前が白い光に包まれる。周りの風景が溶け、そして再合成される。テレポートプレートだ。

 

 


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