Back/Index/Next
Wizardry The Curse of Ancient Emperor



極悪忍



Nobuyuki Morita Presents


 

14

風の魔神

 

「…ん?」

ドアの向こうから現れた姿には見覚えがあった。そう遠くない昔だ。

わはははははっはぁ!このワシが現れたからにはきさまらここから生きて出ることは出来んぞぉ!どーだ?んー?恐かろう?恐ろしかろう?泣け!喚け!這いつくばって命乞いをするがいい!ぐわはははははっははは!

「……はぁ…」

取り合えずため息一つ。全然変わってない。

こいつには見覚えがある。今から十五年ほど前、今みたいにダンジョンで賞金稼ぎをしていた頃にこいつと会ったことがある。

その頃からこうだった。傲慢下品粗野、おまけに口が臭いときてる。

「おい、マイルフィック…」

…っほぉ、ワシの名前を知っておるとは…んー、いい心がけだ。その心がけに免じて八つ裂きにしてやろう!がははははははは!

もー訳が分からん。一人で暴走しまくってる。ボルタックのオカマオヤヂといい勝負かもしれないな。

「ふう、どうやらこいつのバカは死ななきゃ治らんな…」

なっ、にゃにおう!?若造の分際で、このマイルフィック様にそんな口を利くとはいい度胸…

「十五年前ハナミズ垂らしながら俺様に命乞いしたのはどこの誰だ?」

……な…?

「ハナミズ垂らして土下座しながら『もー人殺しはしません、心を入れかえます、だから命だけは助けてぇー!』って声裏返しながら命乞いしたのは誰だったかなぁ。んー?」

…し…しししし知らん!そのよーな事は無い!大体キサマのよーな若造に何がわかるっ!

「…確かお前あんとき俺様からムラサメ盗もうとしたよなぁ。それに気付かれて半殺しになったんだっけ?」

………な…じ、じゃあお前…は……

マイルフィックの爬虫類チックな顔がどんどん青ざめていく。

まぁ十五年前の出来事はそれだけと言えばそれだけだ。俺様がこいつを半殺しにした、ただそれだけ。

「クックックック…さぁてと、昔話は終わりだ。どーやってイビり殺してやろうか…」

ままままま待って!お願い!解らなかっただけじゃないスか?自分なんにも悪気はないっスよ!

「んー?何のことだ?さっきの勢いはどーした?」

ややや止めてぇ!イビらないで!殺さないで!お願い!

「…そうだなぁ、それじゃあ…」

は、はいっ、何でもします!させていただきますっ!

「…やっぱやーめた。死ね」

……この人でなし!非情!冷血漢!鬼!悪魔!係長(?)

「ん〜、死んでいく奴の戯言は聞こえんなぁ」

…こっ…このガキぃー!

マイルフィックの爪が襲い掛かる。が、そんなのわざわざ食らってやるほど俺様も親切じゃない。軽々躱してムラサメを構える。

「確かお前が俺様にタテついたのは二回目だったなぁ?」

ひっ…

ムラサメをマイルフィックの鼻先に突き付けて一歩前に出る。

「まさか俺様にタテついて生き延びられるとは思ってないよなぁ?」

たっ…助け…

さらに一歩。

「祈れ」

へ?

「祈る時間をやる。そのあいだに俺様に刃向かった事を悔やむんだな」

お…お願いっス!助けて下さい!人の情があるのなら!

ねェなそんなものは(きっぱり)

じじじ自分は無抵抗なんスよ?それを…アンタ主人公でしょ?正義の味方なんでしょ?

「だから?」

い、いや「だから?」ってアンタ…

ぅオラァ!

と、いきなり剣を振り下ろす。

ひぃっ!!…なななな…

「ちっ、外れたか。往生際の悪いやつだ」

外れたか…って…そんなちょっと、卑怯だと思わないんスか?正義の味方がいきなり何の予告もなく、しかも無抵抗の相手に斬りかかっていいと思ってるんスかぁ!?

「ふん、『卑劣』といえ卑劣と。より格調高く!エレガントに!そう、この美しい俺様のように!

……こ、壊れてる…

「おっと、時間かけすぎたな。そろそろ死ぬか?」

……って何でぇー!?

いいんだ!お前は死ぬんだ!いいな!?死ね!!

剣光一閃、マイルフィックは(理不尽だぁぁぁあああ)という叫びを残して絶命した。合掌。

うん、これで良しと。

 

「さ、行くか」

「ロア…あんたも変わってないわねぇ。マルチちゃんと一緒にいるくらいだからちょっとは人間丸くなったかと思ったけど…」

「そう簡単に人間変わらんよ。ほれ、それより急ぐぞ。夜までには地上に戻りたいからな」

横でマルチが困ったような顔をしてる。どうせ

「あんまりです、ロア様」

とか考えてるんだろうが、俺様は昔からこうだ。今さら、しかもマルチに何か言われたところで痛くもかゆくもない。

「あのぅ……」

「んー?何だマルチ?」

「さっきの人(?)…お知り合いの方だったんですか?」

「まぁね。むかし半殺しにしたことがある。あれで懲りてりゃ長生きできたのに、まぁた俺様の前に出てきやがったからなぁ」

「………ロア様って…すごいんですね」

「んー?そうか?」

意外な返事だ。だんだんこいつも俺様の影響受けてきたかな。

「それより先を急ぐぞ。あんまりぐずぐずしてたら腹が減ってくるからな」

「あ、私おやつ持ってきてます(^^)

「あらぁ、用意がいいわねマルチちゃん。私にも分けてね」

「はいっ」

…完全に感化されたな。

まぁ仕方ない。こいつもそろそろレベルは3桁に手が届く。これくらいの余裕は欲しいもんだ。少なくとも戦闘中以外は。

 

しばらく歩いたところで、そのマルチが異変に気付いた。

「どうしたの?」

「この辺…やたら蝿が多くないですか?」

「そーいえばそうだな。近くに死体でも転がってるんじゃないか?」

マルチが「やめてくださいよぉ」という顔をする。が、現実はそんな程度じゃなかった。遠くから響くような、まるでエコーとリバーブを深めにかけたような声が響いてきた。


Back/Top/Next