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Original Novel
MH/DAS Presents



ぬいぐるみの奇跡


第1回



キィィーーーン…

甲高く鳴り響く音。
普通なら耳が痛くなる嫌な音のはずだが、何故かこの音は心地よかった。
そして私は一段と深い眠りにつく…。

小一時間気持ち良く眠り、突如ぱっと目が覚める。p もう何も眠けが残っていない、サッパリした起き心地。
こんな寝起きの良いのは初めてだ。
そしてすっくと立ち上がると、もう日差しが差し込み始めている窓の方へと歩いて行く。

窓を開けると、心地よい…とは思いにくい寒気が、部屋の中にすうっとは入り込んだ。
パジャマ姿ではさすがに身にしみて、すぐにぶるぶると震え出してしまった。
せっかくの心地よさが風とともに一気に吹き飛んでしまった感じである。

急いで窓を閉め、部屋のヒーターのスイッチを入れる。
そして、その場しのぎにパジャマの上に一枚はおる。

私は柊彰子。今中学三年の十五歳。
何かと考え込んでしまうお年頃である。
心配事は山ほどあって、気の休まる暇も無い。
更に親には高校進学を執拗に迫られている。
中学をおりたらデザインを勉強するため上京したいというのには耳を貸してくれない。
いつも「あなたにはまだ…」とか「自分だけでやっていけるの」とかばかり。
もう充分一人でやっていけるっていうのに!

ところできのう、ある玩具屋でぬいぐるみを買った。
これがまた珍しいもので、小さい割りには音を出す機能がついている。
今日、心地よい眠りにつけたのも、この音のおかげだった。
昨夜はたまっていた宿題をどうにかやりとげ、眠けが襲うはずだったのだが、
徹夜のためのコーヒーが聞きすぎたせいか、なかなか寝付けなかったところである。
そこで、とりあえずぬいぐるみの音でもつけてようと思った。
そうすると、その甲高い音が脳波を小さくさせたのか、
急に眠けが襲ってきて、そのまま気持ち良く寝たのである。

まさかこんなぬいぐるみにおやすみ機能が?と思ったが、
案の定、脳波を鎮める効果があると書いてあった。
私にはまさに効果てきめんだったらしい。

私にはなんだかこのぬいぐるみが幸運を呼ぶお守りになるのではと思い、
年甲斐もなく、通学用の鞄の中に忍ばせる。
そして着替え、朝食をとり、コートを羽織って学校に向かった。

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