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Tactics ONE short story

BGM演奏

ころころ・・・
ころころ・・・
何の音だろう?どこかで聞いたことのある音。
白い部屋だ。僕はここを知っている。
そうだ、あれは・・・

カシャア!
「ほら、浩平!起きなさいよ!」
朝露の香。小鳥のさえずり。いつもの朝。そしていつも起こしてくれる幼なじみ。
(夢を見ていたのか)
折原浩平は、長森瑞佳の声で、12月10日の朝を迎えた。
「さ。早く起きないとまた遅刻だよっ」
瑞佳は、テープであればとっくにすり切れたであろうこのせりふを今朝も口にした。
「馬鹿っ。長森のせいで夢の内容忘れてしまったじゃないか!というわけで、俺は今から夢の続きを思い出してくる」
言いつつ再び浩平は瞼を閉じた。
「わーっ。浩平駄目だよ!また寝たらっ」
ゆさゆさと瑞佳に揺り起こされ、浩平もいやいや寝床から這い出る。その間に瑞佳は制服と鞄を用意する。長年の経験が生み出す、絶妙のコンビネーション。
5分後には、浩平は一階にいた。
「早かったね」
居間で待っていた瑞佳が声を掛ける。
「ま、俺もその気になればな」
二度寝しようとしてたことも忘れて、浩平は得意げに答えた。
「じゃあ、いこ」
「ああ」
出発間際、浩平はふと居間の奥、普段は誰も使っていない部屋の扉が開いていることに気がついた。 (由起子さんが開けっ放しにしたのか?)
浩平の目が一瞬、その部屋の奥にある「位牌」に止まった。
「こうへーい!」
振り返って浩平は扉へ向かい、誰もいない家にそっと声を掛ける。
「いってきます・・・」





輝く季節へ


清水なつき編

第1章


by 荒竹



 
BGM演奏 

乾いて澄んだ空の下、この2人にしては珍しく、走って登校しなくてもまだ始業時間までに余裕があった。
「もうずいぶん寒くなったね」
「相変わらず個性の無い話題を振るな、長森は。歩いて登校するなんてめったにないんだ。どうせなら話題も銀河系の未来くらいに大きく出来ないのか?」
「そんな話題出てこないし、想像もできないよっ」
「バカっ 挑戦もしないであきらめる奴がいるか!」
何気ない、彼らにとってはいつものやりとりをしながら、通学路を通っていく2人。交差点にさしかかったとき、瑞佳はふと立ち止まった。
「あの娘・・・」
その目の先、道路の向かいの歩道には、一人の少女が映っていた。髪の毛は自分と同じくらいの長さであろうか。大きな眼鏡をしているのが特徴的な少女だった。制服が瑞佳のものと違うことから、他校の生徒であろう。少女はうつろな目で交差点で佇んでいた。
「どうした長森、忘れ物か?」
「違うよ、浩平。あの娘。信号が青なのにぼーっと立ってて。それに、あの制服。このあたりの学校の娘じゃないよ」
「さぼりか?真面目そうなやつにみえるが」
話している間に信号が点滅し、赤に変わる。浩平達も交差点を渡るタイミングを逸してしまった。
だが3秒後、浩平は赤信号の横断歩道を全速力で渡ることになった。
「あいつ!」
眼鏡の少女はふらり、と道路に飛び出した。当然通りの車は動き始めていた。
響きわたるクラクションの音。間一髪、タックルして少女を歩道まで押し戻す。
「何してるんだ!死ぬぞ!?」
「え?」
少女はたった今目覚めたかのように、浩平の顔をまじまじと見つめて呟いた。
「そう・・・また助けてくれたんだ。お兄ちゃん」
「はい?」
車の音が遠くで聞こえるような錯覚を感じる。
めったなことで驚かないと瑞佳のお墨付きの浩平が、この日は数十秒で2度驚かされることになった。

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