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Tactics ONE short story



後日譚


〜長森 瑞佳〜

by keita



「浩平、浩平っ!」
「うーん…」
「浩平ってばー、もー、起きてよー」
「うーん、もうちょっと…」
「もうちょっとって…」
「もうちょっと…」
「時間ないよー」
「…ぐー…」
「もー…」
「…ぐー…」
「浩平ー…」
「…ぐー…」
「……キスしたら起きてくれる…?」
「…うん」
「やっぱり起きてるんじゃないっ、浩平っ」
「キスは…?」
「起きてる人にキスなんてしてあげないもんっ」

しぶしぶといった感じでやっと浩平は起きてくれた。

「ほらほら、早くしないと遅刻だよっ」
「…気分が悪い…」
「え?」
「…気持ち悪い…」
「えぇ?」
「…なんか学校行けそうにないかも…」
「ど、どうしたの浩平っ、大丈夫っ?病気っ?風邪でもひいちゃったのっ?」

浩平のおでこに手を当ててみる。
…うーん、熱は…ないみたい。

「熱はないよっ浩平っ。頭痛いのっ?お腹痛いのっ?」
「…………」
「なんか言ってよ〜、浩平〜」
「…………」
「え?声が小さくて聞こえないよ?」
「…………」
「え?なになに?」

浩平〜、声が小さくて聞こえないよ…
声出す元気もないの〜?
…浩平の口元まで耳を寄せる。

「はい、もう一回言って?」

…チュッ…

「さーて学校行くかっ」
「え…?」
「何してんだ、瑞佳。遅刻しちゃうぞ」
「え…?」
「さーて、今日も一日の始まりだな」
「学校行けないんじゃ…」
「あぁ、ウソ」
「ウソ…?」
「ぜーんぜん健康だ」
「……もしかしてキスしたかっただけなの…?」
「うん、そう」
「…はぁ…」
「そんな朝から疲れたような顔するなよ…」
「疲れちゃうよ…さっき心配して損しちゃったもん」
「そうか?」
「そうだよ。どうせならもっと役立つことに頭使ってよ…」
「まぁいいじゃないか。キスしたくなったんだから」
「もう…あ、そんなことより時間、時間っ!」
「え…うぁ、もうこんな時間かっ」
「はいっカバン。早く着替えて来てよっ、私、下に行ってるからっ!」

…トタトタトタトタ…

時間は…まだ走ればだいじょうぶかな。
はぁ…もう、やっぱり毎朝走ってばっかり。
……あ、そろそろ来たかな?

…ドタドタドタドタ…

「待たしたなっ、瑞佳。さ、行くぞっ!」
「うんっ」

…………

いつも通りの朝。
いつもとおんなじ学校まで走って、
いつもとおんなじ授業が始まる。
そして、いつもと同じような放課後が始まって、
いつもと同じように浩平と家に帰る。
他愛ないおしゃべりをしながら…
軽く手なんかつないだりして…
ふたりでいっしょに帰るんだ。
そう、浩平が帰って来てくれたあの時から…

…………

浩平の家に着いた後、私は自分の家に帰り着く。
私の部屋には浩平から貰った、あのうさぎのぬいぐるみが大切に飾ってある。
今度浩平を私の部屋に呼んで、うさぴょんの声を一緒に聞こうかなっ?
浩平は絶対に恥ずかしいからイヤだって言うと思うけど…
……うさぴょんはこんなに素直なのにねぇ〜
…でもね、私はそんな恥ずかしいことを言ってくれる浩平が好きだよ。
さ、明日はお休みだし浩平とどこかに行ーこうっと♪

…………

「あれ…?」

私、自分の部屋で寝てたのに…

「ここ、どこ…?」

いつもの見なれた自分の部屋じゃないよ…?
どこもかしこも真っ白で、
それがずーっとずーっと遠くまで続いてて…
……あ、そうか夢だ。
これは夢なんだ。
夢の中で夢なんだって考えてるのも変だけど…夢なんだ。
…夢なら浩平とか出て来たりしないのかなぁ…?
私、いっつも浩平のことばっかり考えてるからなぁ…
私がそんなことを考えながら、
とりあえずじっとしててもしょうがないのでそこらを歩いてみようかなぁ…
と思ったとき……

『おねえちゃん』
「は、はいっ!?」

いきなり声をかけられてびっくりしたぁ〜
声をかけられたので振り向いてみると…
小さな女の子…?
あれ…?
この女の子…

『おねえちゃん。わたし誰だかわかる?』
「え、うーんと…」

…私、この子知ってる…
知ってると言うよりも、
この子は……

「……私の小さいとき…?」
『そう、みずかだよっ』

その子は笑ってそう言った。

「……え?だ、だって瑞佳は私だもん」
『わたしもみずかだもん』
「な、なんで私が二人も…?
……あ、そうか。これは夢だったね。
夢なら私がふたり居てもおかしくないもんねぇ」
『夢じゃないよ』
「え?」
『これは、ほんとのことだよ』
「えぇ?」
『うーんと…そうだ、ほっぺたつねってみたら?』
「あ、そうだね………いたぃ…」
『あはは、ね、夢じゃないでしょ?』
「うん…そうみたい。あれ…?じゃぁあなたは誰なの…?」
『わたしはみずかだってばぁ』
「え、わ、私も瑞佳なんだけど…?」
『うん、おんなじだね』
「おんなじ…」
『うん、おんなじ。…今日はね、おねえちゃんとお話ししに来たんだ』「私と…?」
『うん、おねえちゃんと』
「なぁに…?」
『うん、浩平のこと…あ、ごめんね呼び捨てにしちゃって』
「え、ううん、それはいいんだけど…浩平のこと知ってるの…?」
『うん、よーく知ってるよ』
「なんで…?」
『……じゃぁね、ちょっと長くなるけどはじめから聞いてね』
「うん」
『あのね…おねえちゃんが浩平とはじめて逢った時のことは覚えてるよね?』
「う、うん。小さい時に近所に引っ越して来た男の子…」
『うん』
「そこでずーっとずーっと泣いてたのが浩平で…」
『うん』
「私は浩平と遊びたいな、と思ったから声をかけて…」
『…なんて?』
「え?」
『なんて声をかけたの?』
「なんて…って普通に遊ぼう、って…」
『ほんとに?』
「え…?」
『ほんとにそれだけ?』
「うーん…他になにか言ったかなぁ…?」
『…………』
「うーん…」
『ねぇ、ほんとに覚えてないの…?』
「え?」
『あの時、浩平になんて言ったのか覚えてないの…?』
「えーと…今思い出そうとしてるんだけど…」
「…………」
「うーんと…」
『……もういいよ。じゃぁ、浩平があの時なんで泣いてたのかも知らないんだね』
「浩平が泣いてた理由…知らない…」
『…おねえちゃん、なんにも知らないんだね』
「え、そ、そうかな…」
『うん。でも浩平も悪いのかな。なんにも言ってないみたいだし…ね』
「…あなたは知ってるの…?」
『うん、よーく知ってるよ』
「なんで…?」
『…わたしはね、おねえちゃん。
おねえちゃんが浩平とはじめて逢った時に、わたしも浩平と出逢ったんだよ』
「え…?」
『おねえちゃん、これから話すことをよく聞いてね』
「う、うん」
『あの時ね…浩平がずっとずーっと泣いてたのはとっても哀しいことがあったからなの』
「とっても哀しいこと…」
『うん、浩平とふたりきりの妹がね…病気で亡くなっちゃたんだよ…』
「妹が…病気で…」
『そう、それでね…
あんまり哀しいからずーっとずーっと浩平は泣き続けたの。
妹といつまでもいつまでも一緒にいれた筈なのに…
妹といつまでもいつまでも一緒にいれると思ってたのに…
…でも、そうじゃなかったの。
…そうじゃないことに気づかされたの。
楽しかった時間はいつまでもいつまでも続かないんだ…って。
楽しかった時間はいつかは終わってしまうんだ…って。
泣き続けて泣き続けて…
それでも哀しすぎるから…
最後に待ってるのが、こんな大きな悲しみだったなら…
ずっとずっと妹と一緒の時間を…永遠に一緒の時間を過ごせるだけでいい。
…それだけでよかったのに。
浩平は、やっぱり永遠なんてなかったんだ…って。
妹とずっと一緒に…永遠にいられるなんて事出来ないんだって気づかされたの』
「浩平が…」
『うん、だから泣き続けたんだよ、浩平は…
ううん、泣き続けることしか出来なかったんだよ…』
「泣き続けるだけ…」
『そう。だけど、その涙を止めたのが…』
「私…」
『そう。おねえちゃんだね』
「私…なんて言ったの…?」
『…………』
「私、浩平が…そんなに哀しかったなんて知らなかったよ…
私、浩平がそんなにつらい思いをしてたなんて知らなかったよ…
そんな時に…
私なんて言ったの…?
なんて言って浩平を慰めたの…?」
『おねえちゃん、
おねえちゃんはね…
こう言って浩平を慰めたの…』

…そう言ってその子は言葉を切った。

……私は泣き出していた。
浩平にそんな哀しいことがあったなんて…
浩平がそんなにつらかったなんて…
そんな時に私はなんて言ったんだろう…
なんて言って浩平を慰めたんだろう…
浩平の気持ちも知らなかったくせに…
……そう思ったらまた涙が出て来た。

……その子が口を開く……

『永遠はあるよ…』
「…………」
『ずっとわたしが側にいてあげるよ、これからは…
そう言って、おねえちゃんは浩平に口付けをしたんだ』
「…………」
『…このときわたしは浩平に出会ったんだよ。
浩平と出逢ったままの姿で…
浩平が望んだ永遠の世界でずっとずっと一緒にいるために。
それが永遠の始まり…
それが永遠の盟約の始まり…
だからわたしはあのころのままの…小さな頃のままのみずか、なんだよ』
「…………」
『子どもの頃に交わした他愛ない約束…そうだよね。
だけど、そこから全てが始まったんだよ…』
「始まり…」
『そう、始まりだよ…
いつか浩平が言ってたよね。
お菓子の国に行きたがってた女の子の話…
あれはね、そのまま浩平とわたしの約束の事だったんだよ。
だから、浩平は約束した通りこの永遠の世界に来たんだ…』
「そう…だったんだ…」

…やっと思い出したよ。
私が浩平に言った言葉を…
『永遠なんて、なかったんだ…』
そう言って泣く浩平に、私は言ったんだ。
浩平が哀しそうだったから…
浩平に泣き止んで欲しかったから…
『ずっとわたしが側にいてあげるよ、これからは…』
……これは私の本心だったよ。
私は浩平と一緒にいたい、って思ったんだよ…
だけど、私が何の気もなしに言った言葉…
『永遠はあるよ…』
……ずっとその言葉に縛られてたんだね。
浩平も、そして子どものままのみずかも…
そして私も…かな。

「やっと解かったよ…
浩平がいなくなった理由が…」
『…………』
「浩平は、昔の約束を…
子どもの頃の約束を守ってくれたんだね…」
『うん…』
「約束を守って、あなたの所に来てくれたんだ。優しいね浩平は…」
『うん…』
「私は…約束なんて忘れてたのにね…」
『…………』
「……なのに、なのになんで浩平は私の所に戻ってきたんだろうね…
こんな酷いことしたのにね…」
『……それは違うよ、おねえちゃん。
浩平は言ってたよ。
変わってしまったんだ、って。
時間が過ぎることで…
そして、たくさんの人と出逢ったことで…
もう永遠はなくなってしまったんだ、って言ってたよ。
…そしてね、わたしにもそのことを教えてくれたんだ。
でもね、浩平に気づかせてくれたのは…おねえちゃんだよ』
「私が浩平に…?」
『うん。浩平の止まったまま動こうとしなかった時間を動かしてくれたのは、おねえちゃんなんだよ』
「私が…」
『浩平が自分から変わろうとしたから。
おねえちゃんとずっとずーっと一緒にいたいと思ったから気づいたんだよ。
今のままじゃ……永遠のままじゃいられないんだ、って。
だから、おねえちゃんのところに帰ってこれたんだよ…』
「…………」
『わたしも浩平に教えてもらったから、やっとわかったんだけどね…』
「…………」
『だからね、おねえちゃん。
浩平とずっとずーっと一緒にいてあげてね』
「ずっと一緒に…」
『うん、ずっと一緒に。わたしはもういなくなっちゃうけど、おねえちゃんがいるからだいじょうぶだよね』
「あなたが…いなくなる…?」
『うん、そうだよ。わたしも教えてもらったから……変わるんだよ。
いつまでもこのままじゃいられないんだよ。
永遠はもうないんだよ…
だから、おねえちゃん。
わたしの代わりにずっとずーっと浩平の側にいてあげてね。
だって、どっちもおんなじ『みずか』なんだから…』

そう言って、その子は笑った。
……ううん、もう一人のみずかが…
…もう一人の私が笑ってくれた…

『…さ、もうお別れだね』
「え、もうさよならなの…」
『うん。そうだ最後に聞いておこうかな。
おねえちゃん、浩平と逢えて良かった?』
「浩平と出逢えて…」
『うん』
「…私は…」

…浩平と出逢ってからのいろんなことが思い出される…
浩平との毎日の朝のやりとり。
学校まで走っていく私と浩平。
浩平とのクリスマス。
はじめてキスした日。
はじめて結ばれた日。
浩平がいなくなった時。
浩平がいなくなってからひとりで過ごした日々。
寂しかったけどそんな私を元気付けてくれたうさぎのぬいぐるみ。
そして…浩平が帰ってきてくれた日。
…ほんとに私たち、いろんなことがあったよね…

「私は……乱暴で、不器用で、口が悪くて、朝とか全然起きてくれなくて…
もっともっと言いたいことはたくさんあるけど…
そんな所ぜんぶぜーんぶまとめて…
そんな浩平のことが、大好きだよ…
だからずっとずっと一緒にいたいよ…
だから浩平と出逢えてよかったと思うよ…」
『……うん。 わたしも浩平とおねえちゃんと逢えてよかったよ。
ふたり…ずっと一緒にいてね。 じゃ、本当にばいばい…』
「……うん。ずっとずーっとあなたの分まで浩平と一緒にいるよ。
だって私たちおんなじ『みずか』だもんねっ」

みずかはまたニッコリ笑ってくれて、
ゆっくりと…消えて行った。
私もなんだかボーッとして…
視界が真っ白になってきて…
頭の中まで真っ白に……

…………

……気が付くと、見慣れた自分の部屋。
いつものベッドで私は寝ていた。
ふと時計を見ると、いつもなら浩平を起こしに行く時間。
でも、今日は休日だよ…
浩平なんて絶対お昼くらいまで寝てるんだよ…
わかってた、わかってたけど…
私は浩平の家に走った…

…………

…パタン…

いつものように浩平の部屋へ入る。
休日の朝なんて浩平は起きてる筈がない。
予想通り、浩平はまだベッドで寝てた。
私は寝てる浩平の側に立ち…

……寝てる浩平めがけて抱き着いた。

「ウァッ!?なんだなんだっ!?」
「…………」
「瑞佳か…?」
「…………」
「今日は学校休みだろ…?」
「…………」
「…出かけるにしても早すぎるぞ…?」
「…………」
「…瑞佳?」
「…浩平っ、ごめんねっ…」
「ごめん…?」
「ごめんね、ごめんね浩平っ…」
「なにを…?」
「ごめんね、浩平……」
「……瑞佳。泣いてるのか…?」
「…………」
「事情を説明してくれないと、謝られても何がなんだか…」
「…私ね、あの子と逢ったよ…」
「だれと…?」
「…みずかと逢ったんだよ…」
「瑞佳…?」
「みずかと逢ったんだよ…」
「……瑞佳……もしかして…あのみずか、か…?」
「そうだよ、あの子に逢ったんだよ…」
「…………」
「…あの子が全部教えてくれたよ。
はじめて逢った時…
浩平が泣いてた理由も、
浩平がいなくなってしまった理由も、
浩平が帰ってきてくれた理由も…」
「そう…」
「だから、ごめんね浩平っ…」
「なにを…?」
「…小さい時の約束…
…私は浩平と一緒にいたいって思ったよ。
だからずっと側にいてあげるって言ったよ…
だけど、永遠はあるよ…って言ったことは…」
「…………」
「約束したことさえ…」
「…………」
「……私のせいで浩平も、あのみずかも…」
「…逢えたんだよな。瑞佳のおかげで」
「……浩平…?」
「……みずかにさ。俺に哀しいことがあったってことは聞いてるんだろ?」
「…うん」
「それで俺が永遠の世界を……みずかと一緒にずっと暮らせることを望んだことも聞いたな?」
「…うん」
「でも、俺はそうしなかった。俺が帰ってこれた理由も聞いてるんだろ?」
「…うん」
「で、だ。あの時の瑞佳との約束…ずっと側にいてくれる、っていうのは守ってくれるんだろ?」
「え…う、うん。私は浩平の側にずっとずっといたいよ…」
「なら別に謝ることなんてないじゃないか」
「え…だって…」
「俺もみずかも、瑞佳の一言のおかげで出逢えたんだ。
そして、お互いに変わることが出来たんだ。
…多分、みずかもそんなこと言ってただろ?」
「…うん」
「だろうと思ったよ。あのみずかならな…
…最後にみずかは言ってたよ。俺に、笑ってお別れしよ、ってさ」
「みずかが…」
「うん、俺と、みずか…お互いに何にも後悔なんてしてないぞ。
最後まで、出逢えてよかったな、ってお別れしたんだから」
「そう…」
「瑞佳はもう一つの約束も守ってくれるんだろ?」
「うん…」
「ならなんにも瑞佳が謝ることなんてないさ」
「浩平…許してくれるの…?」
「許すも許さないも…瑞佳には感謝してもし足りないくらいさ」
「…………」
「…どした?」
「……浩平…あのね、私、みずかに言われたの…」
「なにを?」
「あのね、私とみずか。
どっちもおんなじ『みずか』だから……浩平の側にいてあげてね、って。
みずかの代わりに私が浩平の側にいてあげてね、って言われたの…」
「…そう」
「でも、みずかと約束したからじゃない…
小さい時にした約束だからじゃない…
それもあるかもしれないけど…
何より私が浩平とずっとずっと一緒にいたいから…
浩平の側にいてもいいかな…?」
「……瑞佳。いつかのクリスマスのやり直しのとき瑞佳は俺に言ってくれたよな。
『浩平の側にいたいよ、私は浩平でないとダメなんだよ』ってさ」
「…うん」
「俺も言ったよな。『俺も長森じゃなきゃ駄目だと思う…』って」
「…うん」
「あの時が俺と瑞佳との新しい約束だったんだよ…」
「新しい…約束…」
「もちろん俺も瑞佳と一緒にいたい」
「……浩平っ」

…私は浩平にキスをした…
浩平の唇と、私の唇が重なり合う…
お互いを感じられるように。
浩平を感じられるように。
精いっぱい浩平を抱きしめた…
浩平もそんな私を抱きしめてくれた…

「…やっぱり優しいね、浩平は」
「…そうか?」
「うん、だから大好きだよ。浩平…」
「……なぁ瑞佳」
「なに…?」
「もう小さいころの約束は忘れて、新しい約束をふたりで守って行こう…」
「…うん」
「これからが…俺と瑞佳との本当の始まりだ」
「うんっ」

いつまでもいつまでも浩平の側にいることが出来るんだ。
いつまでもいつまでも一緒にいたい人の側に…
ずっとずっと一緒にいることができるんだ…
そう思ったら…自然に笑えたよ。
浩平の側で一緒に笑ってられるんだね。
…ずっとずーっと一緒にいられるよね。
…そうだよね、浩平…

…………

ひとりの少女の願いは届き…
ひとりの少女の唄は止み。
新たにはじまるふたりの唄は…
想いを、気持ちを唄に変え…
新たなはじまりの唄となる。
ふたりの想いが時計の針を…
ふたりの時間を刻み出す。
時はうつろい変わりゆき…
季節はやがて巡りゆく……

〜そして、輝く季節へと〜


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