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Tactics ONE short story



瓶の中の手紙




by laughcat




あなたは死んだんだと思う事にします。

あなたがあの場所で消えてから1年が経ちました。

今であなたが帰ってくるような気がします。

でも、1年は長すぎます。

わたしはもう、わたしを置いていなくなるような人を好きになりません。

いて欲しい時にいない人を好きになりません。

だから、あなたは死んだんだと思う事にします。

この1年間、わたしは喪に服していたんだと思う事にします。

帰ってきてもあなたは知らない人です。

さようなら。 里村茜より



***



冷たい物が顔に当たった。

さっき流した瓶はもう見えない所まで流れていった。

また当たった。また雨が降り出したらしい。

彼との別れは雨の中だった。今日、その彼に心から別れを告げた。もう雨が降るたびに、

彼の事を思い出さなくてもいいんだ。

これから雨の日は、彼の為じゃなく、自分の為に過ごそう。

それが楽な事なのか、寂しい事なのかはわからないけど。

わたしはお気に入りの傘を取り出して目の前で広げる。

こうしてみると子供っぽい柄かもしれない。でも何処も痛んでいない。

まだ使えるのだから当分この傘で良いのだ。

広げられた傘を頭上にかざすと目の前に立っていた人物が目に入った。

その手には先程流した瓶がある。

「手後れ…かな?」

その人はわたしの手紙を掲げて見せる。

「遅刻です。」

「やっぱり俺は知らない人か?」

わたしは前に進み出て彼の頭にわたしの傘をかざす。

「濡れますよ。」

そう言うと彼は申し分けなさそうに膝を軽く折って、かがみ込むような姿勢になった。

そして…わたしは彼の唇にキスをした。


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