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Tactics ONE short story



輝く世紀へ




by laughcat




≪5月13日≫
本日も運行ダイヤに大きな乱れはなく、電車は定刻通りに到着した。そして梢ちゃんも時間通りに、待ち合わせの場所に現れた。
「お待たせ、翔君」
「全然待ってないよ。時間通りだし」
「ホントに?よかったぁ」
「ホント。ホント。ところで、まずどこから行こうか?」
「アレッ?」
目の前で素頓狂な声を上げたのは、長森さんだった。
「どうしたの?2人とも。日曜日のこんな時間に」
「長森さんこそ、どうしたんですか?」
俺は長森さんの質問をかわすべく、そのまま返してやる。
「私?私はこれから出掛けるとこだよ」
なるほど、ここは駅だから、どこかに行くのに、ここに来るのは当然と言えば当然だ。
「それで翔君達は?」
そう訊かれても、果たして何と答えたら良いのやら…
「ひょっとしてデート?」
そう言われてドキリとする。そういう意図が無い訳ではないが…
「エヘヘッ」
俺が返答に困っていると、梢ちゃんはどっちとも取れるような笑みを返している。
「あは、そうなんだ」
長森さんは長森さんで納得しているらしいが、下手に誤解されている可能性も無くはない。しかし、あえて誤解を解くのも…
「あ、それじゃあ私行くから。またね」
そう言って長森さんは駅の中に消えた。
「それじゃあ、行こぉ」
長森さんが行ってしまうのを確認すると、梢ちゃんはそう言って歩き出そうとした。
「え、どこに?」
「取りあえず、近いところから」

無くなってしまった空き地、遊具の外された公園、塗り直された橋、建替えられた児童館、落書きが残っていたお稲荷さんの祠。
梢ちゃんの思い出の数々、今と昔、変わってしまったもの、変わらないもの。そして、俺達は小学校に来ていた。
「変わってない筈なんだけどねー」
「どうしたのさ」
「あの頃と全然、目線が違うのよー」
「そりゃそうだよ。あそこの門柱なんて、とてつもなく高く見えたけど、今じゃ手が届くからね」
俺は右手をピッと挙げるポーズを取って見せた。
「…どのくらい来てた?」
彼女は恐る恐ると言った感じで訊いてきた。
「1年に1月位かな」
「全然気付いてなかったなぁ」
「覚えてる人なんかいないよ。きっと…同窓会に行ったって、駆だと思われるだけだろうね」
「…」
彼女は黙り込んでしまった。
畜生!何で駆の事なんか口に出したりしたんだっ!
「ごめん」
俺にはそれしか言えなかった。
今まで立ち寄った場所に、どれくらい駆の思い出があるのだろう?そんな事も考えずに、俺は誘ったりして…
「梢ちゃん…」
言葉が続かない。俺は彼女に何を言えば良いのだろう?何を言おうとしているのだろう?
「梢ちゃん」
もう一度呼んでみる。
すると彼女は、ゆっくりとこちらを向いて
「ごめん…なさい」
と謝罪の言葉を口にした。
何で?何で謝るんだよ?
「やっぱり良くないよね」
「何が?」
「こんなの…良くないよね?…私…翔君の事考えていないんだもの」
何だよ?考えていないって…何を考えるんだよ?
判っている筈じゃないか…その答えを知っているんだろ?…気付きたくなかっただけだ
何が?何に気付くって?
「私…翔君を通して…駆君の事ばかり見ていた」
!!
判っていた事だ…
判っていた事じゃないか。何を今更。
まだ目を背けるのか?
…背ける?そんな事はしないさ!
だったら訊いてみろっ!彼女に訊いてみろよ!
「だからっ…何だって言うのさっ?」
「何って…私っ。翔君の事身代わりにしてたんだよぅ」
「そんな事関係ないよ!俺はっ、俺は…」
『俺は』何だっ?何を言うつもりでいる?
「判ってないっ!私が好きなのは駆君なの。目の前にいる翔君じゃなくて、もういない駆君なのっ」
そう言うと彼女はどこかに向って走り去ってしまった。追おうと思えば出来たのに、俺は…そうしなかった。俺にはそんな事をする権利なんか無いんだ。俺は駆を利用したんだ。彼女が駆が好きな事を、俺が駆とそっくりな事を、自分に都合が良い様に利用しただけなんだ。

全ては僕のせいなんだ。
全ては僕が残した物のせいなんだ。
(キミは物事を悪く捉える方みたいだね?)
実際に悪い方にしか変わっていない。
僕が残したものは全て悪影響しか及ぼさないんだ。
(そう悲観的になるものでもないよ。もう暫く見ていてごらん)


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