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Tactics ONE short story



夕焼けのそら


〜思い出にみえるもの〜

by まろびー



「氷上・・・氷上シュン。」 確かそんな名前だったな。奴は。
 確か、俺、が消える前の一ヶ月かそこらで知り合った奴だ。
 
 「・・・誰の事ですか?」と、隣を歩く茜がそういった。どうやら俺のつぶやきが聞こえたらしい。
 「知り合いさ。・・・少し前の。」そう言うと俺達は歩いて行く。
 還って来てから一週間、俺と茜はこの夕暮れ時をあの公園で過ごすのが日課になっている。
 茜と再び出会えた「あの場所」が俺達にとってのかけがえのない場所となったからだ。

 「綺麗な夕焼け」と茜が眩しそうに西の空を見て言った。
 夕日が落ちていく。
 たなびく雲を茜色に染めながら。

 「・・・茜色の空か。少し儚げで郷愁にそそられ、そして暖かいな。
  まるで、茜そのものだな?」
 少しのろけて言ってみる。顔が赤いのは日差しかな?
 「そんな事、ありません。」と即座にご返答。でも顔は微笑んでいる。
 
 ベンチに腰掛けて、ワッフルを取り出す。今日はストロベリーだ。
 二人で一緒に食べる。うん、やはり、このくらいの甘みが適当だなぁ。
 食べている間、俺達はあまりしゃべらない。話をしなくてもお互いの肩が触れ合っているだけでも、「今」が満たされるのが実感出来るからだ。・・・でも今日は俺は口を開いた。

 「氷上って奴は・・・」
 茜に奴との出会いを聞かせる。部活での事、話をしたことを。
 茜は黙って聞いている。
 「今、思えば、あいつがあの時言おうとしてた事がわかる様な気がする
  あいつ、と俺は本当の意味で同じ立場だったんだ。
  そして俺は茜と出会えた。しかし、奴は・・・・一体どうなったんだろう?」

 空を紅い雲が流れていく。行き先を求める様に。


 「僕は、『自分』が消えない理由を探していたんだよ。」

 突然声がした。

 「誰・・・・・・・・・・?」 茜が周囲を見回す。
 そして「奴」は現れた。 あの音楽室で出会った時の笑みを浮かべて絶望という言葉より深い虚無の瞳でこちらを見ながら。

 「久しぶり、と言えばいいのかな? 氷上。」俺は声をかけた。
 「うん、久しぶりだね。・・・・君とも、人間と話をしたのも・・・・。」
 奴は微笑んでいる。嬉しそうに。なのに・・・・・。
 この、不安、はなんだ?
 そして、奴は歩いてきた。

 ぎゅっ。

 ん?茜が俺の腕をつかんでいる。そしてこう言った。
 「あの人は今にも消えようとしています。」小声だが、はっきりと。

 「僕にとっては、人のふれあいや、思い出すらどうでもいい事。
  過去にすがる事すら無益なものだけどね。ただ・・・・・。
  もう、消える事が待ち遠しくなってしまった今になって・・・。」

 氷上が俺を見つめる。痛いほど、苦しいほど、そして哀しいほどに。
 「ただ一度、縋ろうとした、『君』の事を、おもいだして、しまった。」



                      ・・・もう少しだけ「続く」
                         ごめんなさいです(T_T)。


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