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Tactics ONE short story



夕焼けのそら


〜未来にみえるもの〜

by まろびー



 紅い紅い夕焼けの空の光が俺達を照らしている。
 「・・・泣くな、茜。」
 「ないてなんかいません。」と、しゃくりあげている。
 
「・・・・忘れ無いぞ。氷上。」
 
 
 時はうつろい、回りの風景が変わるのを「あの時」と同じ視線で見続けている。
 俺達ふたりは。

 夏、満天の夜空を見上げながら、
   過ぎ去りし日々と時の悠久の流れに思いを馳せる。

 秋、舞い落ちる紅い葉の中を歩き、
   変わりゆく時と自らの時間を感じる。

 冬、降り積もる雪を見つめる瞳にも、
   昔とは違った自分達を写しだしている。


 ・・・そして、春
   芽吹く新緑と、咲き乱れる桜に新しい思いを感じ始めて・・・・。


 「もう、桜も、終わりですね。」
 茜がそう言った。

 俺達は、色々な時を感じ過ごしながら、
 この公園でのひとときだけは、欠かさなかった。
 それは、俺自身の「この場所」へのこだわりもあったし
 又、ただひとつ、約束の場所だからだ。
 
 「今日は、桜のワッフルでしたね?」
 「あ・・・ああ。」
 桜の色のあんを何かの葉で包んでさらにワッフルで巻いてある、
 新製品だそうだが、どうも・・・・・・・・・・。
 「きわもの、だな?」と俺が言う。
 「そんなこと、ありません。」と、お返しが来る。
 
 当たり前の日常。
 暖かい日常。それは、春の日差しのように。
 でも、いつも、同じではない。自分達も変わっていく。
 水の波紋が形が同じでも広がって行くように。
 そして、気づかないといけない。永遠の「幸せ」の形より
 変わっていく、一度しかない、その時々の「幸せ」の形を。

 ベンチに座る俺達に向かって、夕日を背に影法師が伸びてくる。
 俺達はそれを見つめる。
 当たり前だ。
 それは、知り合いの奴なのだから。
 
 「やあ、おいしそうだね。ひとつ、わけてくれないかい?」

 「ああ、こんなのでよかったらな。」

 「こんなのじゃないです。おいしいです。」

 俺は、奴に言うべきか、迷った。でもやめた。
 通り一遍のあいさつが何の意味がある?今の俺達に。
 これから、当たり前の、そしていつも新しい時間を過ごして行くのだ、みんなで。
 だから・・・・・
 
 「よく、かえったな。氷上。」と心で呟くことにした。



           〜夕焼けのそら〜   FIN.


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