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Tactics ONE short story



夕焼けがみえるなら




by まろびー



 それは、突然の事でした。
 あの人は消えてしまった。
 わたしの前から。
 みんなの前から。
 ・・・そして、みんなの記憶の中から。
 でも、私はおぼえている。
 私だけがおぼえている。
 あの人の
 あたたかい声を
 わすれられぬ肌のぬくもりを
 かけがえのない数々の思い出を。

 「・・・・くん。何があったの?・・・・」
 私は、あれからも、よくこの場所に来る。
 いや、正確には、入れて頂いているのだけど。
 「やっぱり、ここにいた。もうやめなさいっていったでしょ。」
 突然後ろから声がした。私の一番の親友の声だ。
 「何があったか聞いても、まったく要領を得ないし、その上
 そんなに、いつも泣いていたんじゃ眼が腐ってしまうわよっ。」
 「・・・・もともと、役に立っていないから、いいよ。」
 思わず口にしてしまった。こんな事を。
 私の心はどんどん崩れていくようだ。
 大好きな親友が息をのむのがはっきりとわかる。気配で。
 私は話をそらそうと思った。
 「今日の夕焼けはきれい?ゆきちゃん?」
 「・・・・まあまあね。70点て所かしら?」
 ふいに、涙があふれてくる。
 あの人との思い出が、頭の中を駆けめぐっていく。

                                《つづく》


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