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Tactics ONE short story



輝きを求めて


第1話

by 佐倉 砂緒



いつもの林の中、地面をたたく雨の音で目を覚ました。
今日もまた、雨が降り続いている。
「今日で、何日目なんだろう?」
ふと、そんな事が頭をよぎった。
冷えきったはずの自分の身体。しかし、「冷たい」という感覚は無い。
それは、既に自分という存在が、希薄になっているということの証明でもあるのだろう。
「今日、自分の存在は消える」
根拠など無いが、確信をもって言える。
今日で、自分という存在は、この世界から消えてしまう。
ただ一人、たった一人の人間の心の中を除いて…。
「……茜……」
何気なく、その人の名をつぶやいてみる。
ただ一人、本当に愛した人の名を。ただ一人、本当に俺を愛してくれた人の名を。
雨の降り続く空を見上げながら…。

「どうして、こんな事になってしまったのだろう?」
重い身体を引きずって立ち上がりながら、そんな事を考えた。
あの日、雨の空き地で茜から聞いた告白。
過去に、俺と同じように消えていった幼なじみのこと…。
そして今、その時と同じ、いや、それ以上の悲しみを、茜に背負わせようとしている、
それが、ほかならぬ自分であると言う事実に、俺はやるせない様な、茜に対して申し訳ない様な思いを抱いていた。
俺が望んだ『えいえん』と、俺が愛し、俺を愛してくれた『茜』という存在。
今となっては、自分の本当の心はどちらを望んでいたのか、自分でさえも分からなくなってしまった……。

…やがて、俺はゆっくりと歩き出した。自分の最後の場所を求めて。最後に、もう一度逢いたくて。
見えない「ちから」に引き寄せられる様にして。
そして、俺は「あの場所」へと辿り着いた……。



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