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Tactics ONE Short Side Story



水曜日


〜七瀬留美〜

by T.横島



 HRが終わり、放課後になった。クラスの中では友人たちで集まり、これからの予定を話している声があちこちでしている。
 机の中の勉強道具を鞄につめてから七瀬留美は席を立った。少し急ぎ足で教室を出て、一直線に昇降口へと向かう。理由はひとつ。しかし留美の願いは届かなかった。
 「待て〜、な〜な〜せ〜ーー」
 後ろから聞こえる調子外れな声。誰かは解っていた。そのまま止まらずに行ってしまえばよかったかもしれない。しかし留美の足は階段にたどり着く前に自然と止まっていた。
 息を切らせた人物が留美の側までたどり着く。「ふぅ〜」と息を吐いて顔を上げる。折原浩平、留美がこの学校の生徒で一番最初に知り合った少年。だがその出逢いは最悪だった。
 「なによ」
 少し語尾を上げて問う。いかにも迷惑を含めた意味で。
 「もう帰りだろ。商店街でもよっていかないか?」
 ナンパ的なセリフだった。それを断る理由はなかったが遠回しに尋ねてみる。
 「瑞佳は?今日は一緒じゃないの?」
 「あいつは今日、部活だって。大会かなんかが近くてぬけられないんだとさ」
 そう言って今走ってきた方向を見る。瑞佳がオーケストラ部に入っているというのは聞いたことがあった。実際にどれほどの腕かまでは解らないが。
 「ふ〜ん。・・・で、その穴埋め役があたしってわけね」
 浩平の顔が一瞬どきりとした。そして次にあわてて手を振る。
 「いや、そんなことはないぞ。商店街でも行こうかな〜、とつぶやいていたら長森が無理だといい、たまたま教室をとぼとぼ歩いていた七瀬が目に入って寂しそうな表情をしていたようだから、ここはひとつ日頃のお礼でも込めてどこかへ連れていってやろうとしただけだ。決して2番煎じなんかじゃないぞ」
 「・・・あたし、とぼとぼ歩いたり、寂しそうな表情もしてなかったけど」
 「いや、自分ではそんなことはしてないと言っても、周りから見るとそんな風に見えてしまうんだ。おまけに今日の七瀬は授業中もずっと何か考え事をして・・・」
 このまま放っておくと、あることないこと次々に飛んできそうだった。呆れたも含めて留美は大きく溜息をつく。そしてそれを了解と見たのか、浩平は声をかけた。
 「それじゃ、行くか。まずは少し腹を満たすために適当な店へと行こう。それから・・・」
 浩平は歩き出していた。すでに行動プランはおおかた決まっているらしい。
 再び溜息。そして留美の前方を意気揚々と歩いていく浩平の背中を見つめた。その背中が振り返り留美に呼びかける。
 「何しているんだ、七瀬?おいてくぞ〜」
 人の迷惑も知らずに浩平が叫んでいる。留美は鞄を右手に持ち替えて少し胸を張った。
 「・・・たまには・・・、いいか」
 自分に言い聞かせるような言葉。次の瞬間には浩平のもとへと走り出していた


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