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Tactics ONE Short Side Story



日曜日


〜川名みさき〜

by T.横島



 蒼く透き通った空、空を舞う雲もまばら。休日にはもってこいの天気だった。昨日までの気象情報でも「今日は1日中晴れ」と断言してくれている。
 日曜日の学校の校門。部活で登校してくる生徒の声に耳を向けながら、川名みさきはそこにいた。今のみさきにできる唯一の待ち合わせ場所。
 「浩平君、遅いな〜」
 何度目かの吐息、そしてまっ黒に写る空を見上げる。顔に陽の光が当たる感じがした。
 「こんないいお天気だから、また寝坊してるのかな・・・」
 手持ちぶたさに校門の壁に寄りかかり、揺りかごのように身体を前後に揺らす。少し経ってから待ちわびていた声が聞こえた。そして近づいてくる足音。
 「はぁ、はぁ、はぁ・・・。お待たせ、みさき先輩」
 「お・そ・い〜〜」
 わざとふっくれ面を見せる。
 「いや、目覚ましセットしたはずなんだけど、朝起きたら時計が廊下のほうに転がってて音が聞こえなかったみたいなんだ。どうやらみさき先輩との待ち合わせにねたみを持った目覚まし時計が、それを阻止しようと勝手に歩いていったらしい」
 息を整えながら弁解する浩平の声。そしてそれを黙って聞いているみさき。そして静かに口を開く。
 「浩平君、時間に遅れて来て最初に言うことは弁解じゃなくて謝ることだよ。それから訳を話す。そうすれば待っている人もそれをわかってあげられる」
 「・・・ごめん、みさき先輩」
 深々と頭を下げる浩平。その様子にみさきは笑った。
 「じゃ、それの代償で今日は1日浩平君のおごりね」
 「わかった。それでみさき先輩が許してくれるならカレーの10杯でもうどんの20杯でも、好きなだけ食べさせてあげよう」
 「うん。浩平君が困るくらいに、ね」
 屈託のない笑顔がみさきに広がる。
 「じゃ、行こうか」
 浩平の合図で歩き出す。その時、みさきの手に何かが触れた。
 「・・・わぁ!」
 「ど、どうした?」
 あわてて飛び退き、浩平から2,3歩離れて自分の手を見つめるみさき。
 「今、何かが私の手、さわった・・・」
 「・・・いや、みさき先輩が離れないよう、手を繋ごうとしたんだけど」
 「え・・・、そうだったの」
 その言葉に驚いて再び自分の手を見つめて考える。それから笑みを浮かべて浩平にそっと手を差し出した。その手を浩平が握り、その反動でみさきがそばに寄った。
 「それで、今日はどこに連れていってくれるの」
 「う〜ん、そうだな・・・」
 穏やかな日曜日。行くあての定まらぬまま、2人は繋いだ手を一度大きく振り上げて歩いていった。


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