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Original Novel Pochikun Presents



Bye〜rain〜


4.杏と麗奈

by ポチくん





Jan 25 THU






ジジジジジジジジーーーーーーーー

ジジジジーーーー

ジジーー

聡人
 「ん?」

ね、眠い・・・

ジジジジーーーー

ついでに、朝の新聞でも・・・

ジジジジーーーー

聡人
 「っだ〜〜〜〜るせぇ〜〜〜〜!!!!」

ジジジジーーーー

・・・ぽちっ

・・・

聡人
 「ふっ、ひ弱な奴だ。もっと手応えがあると思ったんだがな」

そして決めのポーズ。

・・・

非常にくだらなかった。







朝の廊下は冷たい。氷の回廊は足を痛いくらい刺激してくる。

真由美
 「おはようございます。聡人さん」

テーブルには既に朝食の準備ができていた。

卵にご飯に味噌汁に漬物に回鍋肉・・・

やはり日本の朝食はこうでなくては。

・・・

聡人
 「なんで朝食にホイコーローがあるんですか?」

真由美
 「美味しいですよ」

いや、そういう問題じゃないと思うんだが・・・

聡人
 「新聞・・・取ってきます」

この空間にいるだけで胸焼けしそうだった。







ガチャッと玄関の戸を開けると冷たい風が流れ込んでくる。

聡人
 「う〜〜さびさび」

寒さのあまり目を閉じていると

キャチッ、キャチッ

キャチッ・・・

最後の音と同時に、ぱちぱちという音と、暖かい空気が流れてくる。

聡人
 「さび〜〜俺にも当たらせてくれ〜〜」


 「いいよ、一緒に暖まろっ!」

・・・

聡人
 「ってこれ、新聞紙じゃないか!」


 「ん?そうだお〜」

それがどうかしたの?といったふうな顔をしている。


 「暖まろうとしたら、丁度新聞があったからね〜」

あはは、らっき〜☆と言いながら、杏は火に手をかざしている。

聡人
 「昨日も杏がやったのか?」


 「何を?」

聡人
 「だから、これだ」

そう言うと、俺はアンニュイモードをいれて黒くなった物体を指差した。


 「あ、そうだお〜」


 「昨日ね、少し早くきすぎたから玄関が開いてなくて〜寒いーっ!て思ってたら丁度新聞屋さんが来たんだよ〜らっき〜☆」

ぶい

・・・

ごつん


 「う〜黙って殴らないでお〜」

聡人
 「当たり前だ」


 「かわいいお姉さんに何てことするの〜」

聡人
 「もう一回殴っていいか」

そう言って俺は手を振り上げた。

杏はビックリしたように両手を頭の上に挙げ、目を瞑ってしゃがんだ。

ガコン・・・

・・・

麗奈
 「あっ・・・」

麗奈
 「ぬ〜兄さん、お姉ちゃんに何てことするの!」

やばい

聡人
 「杏が新聞を燃やしちまったんだよ。当然俺だって怒る」


 「でもね、聡人ったらそのことでぶつんだお〜」

そりゃそーだろーが・・・

麗奈
 「聡人が悪い」

あっさり負けた。

麗奈
 「だいたい兄さんったら新聞っていっても、いつも番組と天気とスポーツしか見てないでしょ」

聡人
 「それはそうだが」


 「でしょ、でしょ!」

ごつん


 「あ〜ん、痛いお〜」

聡人
 「『痛いお〜』じゃ、ね〜だろ」

麗奈
 「ぬ〜お姉ちゃんを殴らないで」

よしよしと、麗奈は杏の頭を撫でている。

麗奈にはかなわないと、俺は悟った。


 「痛いお〜」

こいつは・・・








 「美味しいお〜このホイコーロー」

真由美
 「そう?よかったわ」

なんちゅー胃をしてるんだ?

聡人
 「杏、朝っぱらからよくホイコーローなんて食えるな」


 「ん?でも美味しいお〜」

真由美
 「明日も回鍋肉にする?」

真由美さんの嗜好は謎が多い。見ると真由美さんも回鍋肉を美味しそうに食べていた。


 「やった〜☆」

聡人
 「それだけはやめてください」

明日も回鍋肉が出るなんて考えるだけで恐ろしい。

麗奈
 「私も無理・・・」

麗奈は、それでも回鍋肉を食べている杏を見て感心の目で見ていた。

俺は回鍋肉から関心を避けるためテレビをつけた。

「ざー」



チャンネルを変える。

「ざー」

??

聡人
 「つかない」

麗奈
 「そんなわけないよ」

麗奈が俺からリモコンを取り上げる。

ぴっ、ぴっ

「ざー」「ざー」

麗奈
 「ぬ〜つかない」

麗奈も「?」マークを浮かべながら残念がっていた。

聡人
 「雪でアンテナが曲がったんじゃないか?」

全員が一斉に外を振り向いた。

気がついたら、外では雪が降り始めていた。

次の瞬間、俺は見てはいけないものを見てしまった。

聡人
 「8時だ・・・」

杏  麗奈 真由美
 「あ」 「あ」 「あ」

三人で同時に口をあけた。

聡人
 「やっぱりテレビが映らないと不便だな」

真由美
 「電気屋さんに頼んでおきますよ」

麗奈
 「もう始業に間に合わないね」

このような時は、諦めが肝心だ。

俺たちは急ぐことなく準備をはじめた。

・・・








 「雪、晴れてよかったね」

麗奈
 「あ、ほんとだ」

気付いてみるとさっき降っていた雪はもうすっかりやんでいた。

聡人
 「言われてみないと気付かないもんだな」


「うん、そうだね〜」

総人
「じゃ、少し急ぐか」

杏   麗奈
「うん」「うん」







キーン・・・コーン・・・カーン・・・コーン・・・

聡人
 「なんだ間に合ったじゃないか」


 「ほんとにそう思う?」

ニコニコしながら俺に問う。


 「だったら時計を見てみたら?」

俺は寒いながらも左手を捲り上げ、腕時計を覗き込んだ。

9:50

1時間目終了。

・・・







キーン・・・コーン・・・カーン・・コーン・・・

関口
 「御住ー飯食おうぜー」

どうやら昼休みになったらしい。

聡人
 「仕方ないな。野郎と食うのは趣味じゃないんだがな」

俺は弁当をザックの中から取り出せなかった。

???

ガサガサ・・・

???

ゴソゴソ・・・

???

聡人
 「弁当がない」

まずいな・・・

こういったとき、学食が無い我が校は不利である。

かといって購買は既に売り切れか・・・

パンは昼休みが始まってすぐに行かないと買えない。まさに戦場なのだ。

聡人
 「仕方ない。こうなったら断食だ」

関口
 「お前、度胸あるな」

聡人
 「いや・・・そういう訳じゃないけどな」

・・・腹減った

そう感じたとき、教室の入り口で聞き慣れた声がしてきた。

???

瑞穂が気付いたようにその対応に走っている。


 「ここ、総人のクラスですか〜?」

瑞穂
 「あ、ええそうですよ。ちょっと待ってくださいね」

クラス中がその突然やってきた来客者のほうを振り向く。

その来客者は黄色い校章をつけているにも関わらず、堂々と俺たちのクラスに入ってきた。

クラスの全員がその来客を取り囲む。


 「あの・・・聡人は〜?」

この声は・・・

???

何で杏がここにいるんだ?


 「聡人〜どこ〜?」

杏が声をあげるたびにクラス中がどっとざわめき立つ。

予想以上のアイドルぶりだった。

男子生徒
 「御住・・・貴様、杏さんに手をつけるとは不届千万!」

杏のやつ・・・

俺は強引に杏の腕を取ると教室の外に出た。

聡人
 「ところでなんだ?」

そう俺が言うと杏はザックの中から布に包まれた箱を取り出した。


 「聡人、弁当忘れたでしょ。持ってきたんだ〜」

そう言うと、ハイ☆と手渡す。

聡人
 「そういうのは学校に突く前に渡してくれないか?今ので思いっきり勘違いされたぞ」


 「だって、渡すの忘れちゃったんだもん」

まったく、体裁ってのを考えて欲しいものだ・・・


「どうかしたの?」

聡人
 「いや、なんでもない」

聡人
 「センキューな」

俺はそう言うと教室へと戻っていった。

教室へと戻ると俺の弁当を見て発狂する者、失神する者、自殺を試みようとする者までも出現している。

中には既にこの弁当を懸けてオークションを開いている強者までいる。

俺は気にせずに関口の席へと戻った。

弁当を開いたとき、辺りからは歓喜と溜息が聞こえる。

聡人
 「なんだ。普通の弁当じゃないか」

当たり前だ。中身は真由美さんが作ったんだから・・・しかし

生徒一同
 「ぬわあぁにぃ〜〜〜〜!!!!杏さんが作った弁当を!!!!許せん!!!!」

そう教室中から聞こえると俺は恐怖に苛まれた。

瑞穂
 「諦めなさい」

聡人
 「そうだな」

俺はあっさり断念した。

どうせ5時間目は古典の授業だ。その時間にでも食べればいい。

キーン・・・コーン・・・カーン・・・コーン・・・







飯を食い終わってみれば、古典の授業ほど暇な授業は無い。

さて、暇つぶしでもするか。

そう思いつくと俺の行動は早い。

聡人
 「おい、瑞穂・・・」

瑞穂
 「なに?授業中から・・・」

俺は机のなかを漁り、手にしたものを取り出した。

聡人
 「麻雀だ」

瑞穂
 「麻雀?負けたほうは何か罰ゲームかなんかあるんでしょうね」

聡人
 「そうだな・・・」

瑞穂
 「負けた方は勝った方のいうことをなんでも一つだけ叶えなければならない」

聡人
 「望むところだ」

瑞穂はこのようなところで融通が利く。

いつもこんなこと(古典の授業のみ)をしているにも関わらず、一度も見つかっていないというところが不思議である。

だが、瑞穂も麻雀の腕が立つ。

何しろいつも俺の家に来ては俺と、瑞穂と、麗奈と、関口で麻雀卓を囲んでいるからだ。

しかし、そんな中でも一番強いのが麗奈だ。

次が瑞穂だった。俺と関口はいつも叩きのめされるのであった。

・・・







瑞穂
 「ロン・・・!」

げ・・・

瑞穂
 「リーチ、一発、ピンフ、ドラ2・・・あれ?裏ドラも乗ってプラスドラ2!」

聡人
 「負けました」

ここまで来ると、既に日を見るよりも明らかだった。

瑞穂
 「今度は麗奈ちゃんを飛ばして見せる!」

そう言うと瑞穂は小さくガッツポーズをしてみせた。

無理だろうな・・・

瑞穂
 「そうそう、罰ゲームがあったわね」

聡人
 「仕方ない。何でもいってくれ」

俺は麻雀牌を机に仕舞いながら言う。もう覚悟はできていた。

瑞穂
 「そうね・・・」

少し考える仕草をして

瑞穂
 「まだ思いつかないから、明日まで考えとくわ」

聡人
 「分かった」

・・・ふぅ







キーン・・・コーン・・・カーン・・・コーン・・・

さて帰るか。

廊下で、俺はあまり見かけない人物を見かけた。

聡人
 「麗奈!」

そう言うと、その人物はふと振り向いた。

麗奈
 「あ、兄さん」

1年の教室は一番上の4階で、しかも身体上教室からあまり出ないので、麗奈とは学校内で会うことがあまりなかった。

麗奈
 「あ、こんなところで会うなんて珍しいね」

聡人
 「ん、まあな」

こう改めて校内で会うと、麗奈が他人になったような不思議な錯覚に陥る。

聡人
 「お前、これから帰りか」

麗奈
 「そうだけど、みっちーと商店街に寄ってから帰るの」

他愛の無い世間話をするにも、何かと気を使ってしょうがない。

麗奈もそう思っているのだろうか.いつもと違って周りに気を使って話し方がぎこちない。

麗奈
 「そうそう、今日私たちのクラスにお姉ちゃんが来たんだよ」

聡人
 「なに?お前も弁当忘れたのか」

麗奈
 「そうなの。それでね、お姉ちゃんが持ってきてくれたの」

杏のことを「お姉ちゃん」と気軽に呼んでいることに俺は微笑ましかった。

麗奈
 「それでね、お姉ちゃんったら、私たちのクラスで大人気だったよ」

聡人
 「麗奈のクラスでもか」

麗奈
「うん、そうだったよ」

麗奈とこうして、ここで話をするのも何か新鮮さを感じた。

聡人
 「大丈夫か?階段」

麗奈は階段の上に立つと手すりに必死にしがみついた。

麗奈
 「ちょっと大丈夫じゃないけど・・・がんばるよ」

普通の道を通るのでさえも危なっかしいのに、階段なんて更に危なっかしい。

しかし、麗奈が片手片足を失ってから3年半が過ぎようとしている。

俺も症状については病院や真由美さんからは聞いていた。

通常ならばもうかなり慣れてきているはず、ということだった。

しかし、麗奈が慣れる傾向は一向に見られなかった。

「麗奈さんの症状は肉体的なものだけではありません。肉体的なものより、むしろ精神的なもののほうが強いでしょう」

医者はそう言っていた。

麗奈にしろ、杏にしろ、俺と同じように心に傷を背負った者達だから・・・

麗奈
 「あ、兄さん、私こっちだから」

聡人
 「ああ、それじゃまたな」

そう言うと麗奈は街の方へと歩いていった。

その後ろ姿が痛々しかった。







丁度はしに差し掛かった頃、俺は橋の下に釣竿を見つけた。

おや、ご主人様はいないのか?

釣竿は、川の側でひっそりと佇んでいた。

辺りを探してみると、どうやら堀江商店でコーヒーを買っているようだ。

俺の姿に気がつくと、杏はいつものように走って俺に飛びついてきた。

聡人
 「おいおい、何本コーヒー買ってきたんだ?」

見ると、杏の手にある袋にはコーヒーがいっぱいに詰まっていた。


 「ん?15本だお〜」

聡人
 「買いすぎだぞ」


 「だって、コーヒーおいしいもん」


 「聡人も飲む?」

聡人
 「まぁ今、寒かったしな・・・丁度いいから、貰おう」

とはいっても、大量にあるコーヒーのどれを飲んでいいのやら。

俺は普段缶コーヒーは飲まないから、どれがうまくて、どれがまずいのかも分からない。


 「聡人はどういうコーヒーが好き?」

総人
「ま、無難にコロンビアでいいよ」


「コロンビアね・・・はいっ☆」

そう言って、俺にコーヒーを手渡す。

熱いくらいのコーヒー缶を、俺は掌でころがす。

ギ・・・ギギギギ〜〜〜

ギ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

すっ、と竿のほうに目を遣ると、竿が撓って悲鳴をあげていた。

聡人
 「おい、引いてるぞ!」


 「あ、わ!」

杏は慌てて竿を引いた。

最初にピッと先端を持ち上げ、魚の口に針を差し込むと魚の動きに合わせて竿を動かしていった。


 「うぬぬ・・・敵は強豪だぞ〜」

竿が折れそうなほど撓っている。

杏は一度魚に力を任せてはピッと素早く引くという作業を繰り返していた。

・・・







聡人
 「まだ釣れないのか?」

既に格闘してからかなりの時間が過ぎようとしていた。

どうやら思った以上の大物らしい。

杏はどうやら疲れが見えるらしいが、魚の方もだんだんと弱ってきたのが分かる。


 「もう少しだよ、もう少し・・・」

かなり引きが強いのだろうか。かなり苦しそうだ。

そして少し経ったとき、川底からなにやら光るものが頭を覗かせた。


 「聡人っ!ぼーっとしてないで早く魚篭持ってきて!」

聡人
 「あ、分かった分かった」

俺は慌てて魚篭を前に突き出した。

釣りなんて、もともとしたときが無かった俺は、どうすればいいのかただ言われるままに動くしかなかった。

杏によって魚が岸まで寄せられてくる。

そして魚篭を差し出し、それに魚の頭ごと突っ込んだ。


 「うわ〜おっきい鮠だよ〜」

そう言うと杏は目を輝かせていた。

実際魚篭にも収まりきれず、尻尾の方がはみ出してしまっているのだ。

聡人
 「よかったな。杏」

まだ興奮覚めやらぬのか、杏はその魚と対峙して陶酔しきっている。


 「☆♪☆♪☆♪☆♪」

聡人
 「今日はもう遅いから帰るぞ」

気が付いたときにはもう辺りは闇に包まれていた。

聡人
 「ほら、行くぞ」


 「☆♪☆♪☆♪☆♪」

杏はどう引っ叩いても反応がなかった。

俺は仕方なく、強引に手を引いていくしかなかった。







聡人
 「ただいまー」

そう言うと奥からパタン、カクン、パタン、カクンという、リズミカルな音が聞こえてくる。

麗奈
 「ぬ〜なんで今日もこんなに遅いの〜」

そういいながら玄関に麗奈が現れた。


 「☆♪☆♪☆♪☆♪」

麗奈
 「わ、お姉ちゃん・・・」

俺に手を引かれて杏はまだ玄関にぼーっと立ち尽くしていた。

明らかにまだ陶酔しきって自我を失っている。

その片手にはさっきの魚がしっかりと握られていた。

聡人
 「パスだ。俺には手が負えなかった」

そう言うと、俺は麗奈と交代した。

俺はそのまま部屋へ戻って着替えをした。

そのときに、玄関のほうから「ここどこ〜」とか「あ、わたしの魚が〜」とか聞こえてきたが、とりあえず無視する。

俺はそのままリビングへと向かった。







真由美
 「今日は予定より一品多いからみんなたくさん食べてね」

テーブルを見るとさっきの魚が見るも無残な姿になっていた。

杏は、椅子に座ると下を向いたままだった。

聡人
 「どうした?」


 「魚拓が・・・」

聡人
 「さて、いただきます」

みんなは早速、魚拓になりかけた魚をつまむ。


 「おいし〜☆」

既に、魚拓計画の悔しさは微塵もなかった。







俺は食後、することも無かったので部屋で寛ぐことにした。

ベッドに寝転がり、いつものように漫画を読み漁る。

しかしこの漫画何回見たんだ?

読めば読むほど、だんだん虚しさばかりが俺の心を苛んできた。

そうだな・・・杏の部屋にでも邪魔するか。

こんこん・・・

俺は杏の部屋の戸を叩いてみた。


 「誰?」

聡人
 「俺だよ俺」


 「あ、聡人?入っていいよ」

ドアのノブを引くと、かちっ、という乾いた音とともに扉が開く。

中は、まだ二日目とは思えないほど物があった。

本棚には教科書、参考書、マンガ、つり全書・・・

そして壁には釣り道具一式が飾られていた。

杏は眼鏡をつけながら、何か悶々と作業をしている。


 「何か用?」

聡人
 「いや、別に用があったわけじゃないんだがな。ただ暇だっただけだ」

そういえば杏が眼鏡をつけているところなんてはじめて見る。

聡人
 「眼鏡、似合ってるじゃないか」


 「そう?ありがと〜」

作業をしている手先をじっと見ながら、振り向きもしないでそう言った。


 「でもね、授業中とかもつけてるんだよ.わたし目が悪いから」

聡人
 「そうなのか?」

う〜ん。勉強ができる奴は目が悪いと言うのは定説だが。

そういえば瑞穂も眼鏡をかけている。

聡人
 「ところで何してるんだ?」

見ると、テーブルの上にあったのはカエルの人形、釣針、赤い布。


 「何してるように見える?」

なんだろう・・・

どう考えても、この三種の神器は不一致すぎる。

まてよ?

カエルが釣針に・・・そして赤い布は、何かのたとえ?

そうか!

聡人
 「カエルが釣針に引っかかって血を流してイタイイタイしているところのモデルか?」


 「そんなわけないでしょ〜」

いや、どう見てもそうにしか見えないのだが。


 「これはね、ルアーだよ」

聡人
 「ルアー?これが?」


 「そう、ルアー」


 「このカエルの、ここん所にこういうふうに針を取り付けるんだお〜」

カエルに釣針を押し当て、つけたように見せる。

聡人
 「しかしこのカエル、ふさふさだぞ」


 「いいの!杏オリジナルルアーだから」

いったいどういう理屈なんだろうか。あまり触れないでおく。

聡人
 「それじゃ、この布は何に使うんだ」

俺は赤い布を手にした。

何かの生地だろうか。手触りも悪くなく、安物ではないようだ。


 「これはね、こういうふうにカエルに着せるの」

・・・

マジか?

聡人
 「何の意味があるんだ」


 「ないよ」

即答だった。無意味なツッコミはやめておこう。

仕方なく、とりあえず本棚でも漁っておく。

どうも少女マンガしか見当たらない。その中にこの本棚には場違いな本を見つける。

『麻雀で強くなる本』

聡人
 「なんでこれを杏がもっているんだ?」

そう言うと、この本を杏の目の前に突き出した。


 「ん?これはね、なんか麗奈ちゃんがわたしの宿題だからやっておくようにって言ってたから、借りといたの」

聡人
 「これ、借りていいか」

さっきは随分と酷いことを思ったが、結局借りることにする。


 「いいよ、もう全部理解したから」


 「麗奈ちゃんが、これはわたしの秘密の本だから、絶対強くなれるよ!って言ってたお〜」

キラーン!

聡人
 「マジか」

杏「麗奈ちゃんには内緒だお〜」

俺はそれを聞くと、さっさと杏の部屋から退散した。

・・・







適当にページを捲ってみる。

意味わかんねー

マジでこれを理解しているのだとすれば麗奈は確かに強いはずである。

まてよ、さっき確か杏が・・・

「いいよ、もう全部理解したから」

深く考えないようにしておこう。


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