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Original Novel Pochikun Presents



Bye〜rain〜


9.ふたり

by ポチくん





Jan 30 TUE




リリリリリリーーー

リリリリーー

リリー

ポチっ

俺は冷たい体をしぶしぶ起こしてリビングへと向かった。

真由美
 「あら、おはようございます」

聡人
 「おはようございます」

聡人
 「あれ?杏と麗奈はまだ寝てるんですか」

真由美
 「そうなんですよ。そろそろ起きないと時間なのに」

本当に困っているのか、どうなのか分からない表情で真由美さんはそう呟いた。

時計を見ると、7時にそろそろなろうかという時間になっていた。

聡人
 「俺、起こしてきます」

真由美
 「それじゃ、聡人さんはお姉ちゃんを起こしてきてください。わたしは麗奈を起こしますから」

俺はそのまま黙って階段を上っていった。その後に真由美さんもついてくる形となった。

・・・







こんこん

お姉ちゃんのお部屋と、ドアプレートに書かれている部屋をノックする。

こんこん

聡人
 「おい、起きているのか」

こんこん

俺がノックしているドアの向こうからは、生気が感じられなかった。

まるで、がらんどうを相手にしているようなそんな錯覚さえも覚える。

感覚がこの部屋の中に吸い込まれていく気がして、俺は焦燥感を駆り立てられた。

俺の鼓動が早まっていくのが分かる。

聡人
 「杏!」

無意識に俺はそう叫んでいた。

そして俺は杏のドアを勢いよく開いた。そしてそこにあったのは・・・


 「すーーー・・・すーーー・・・」

・・・

麗奈
 「どうかしたの?」

どうやら麗奈は起きてきたらしい。

聡人
 「いや、なんでもない」

麗奈
 「ぬ〜よくわかんないけど、おなかすいた〜」

聡人
 「ホントになんでもないから御飯食べてろ」

うんと言うと、麗奈は階段を下りていった。

聡人
 「コリャダメだな・・・」

・・・








 「え〜なんで起こしてくれなかかったの〜」

聡人
 「そんなこと言ってる暇はないぞ」


 「あれ?もう、学校行くの」

俺たちは、まだパジャマ姿の杏に呆れるしかなかった。


 「あわわわ!ちょっと待って〜」

麗奈
 「おねえちゃ〜ん、早くしてね〜」

・・・







聡人
 「遅いな」

麗奈
 「遅刻しちゃうよ〜」

時計を見ると、既に7:30を過ぎていた。

ピ〜ンポ〜ン・・・

聡人 麗奈
 「?」 「?」

ピ〜ンポ〜ン・・・

「はい・・・どなたさんでしょうか」

突然の来客に、奥で真由美さんが対応しているようだった。

「はい・・・あら椎名ちゃん?上がって」

そう言うとドアが開いた。

瑞穂
 「あ〜寒かったわ〜」

聡人
 「なんで瑞穂がこんな所にいるんだ?」

麗奈
 「おはようございます」

瑞穂
 「わたしの家、この奥だし、それに今日は少し早かったから一緒に行こうと思ってね」

そう言うと、瑞穂は麗奈に目でなんらかのサインをした。

麗奈
 「でも、お姉ちゃんまだ準備できてないんだって〜もうちょっとかかるかも」

瑞穂
 「あら、なおさらじゃない」

瑞穂が麗奈の言葉に呆れた声で言い返す。

なおさらって・・・

瑞穂
 「じゃ、麗奈ちゃんはわたしと一緒に先に行ってる?」

もう一度瑞穂はそう言い揶揄すると、麗奈に片目を瞑って合図をしているようだ。

麗奈
 「あ、うん、そうする!兄さんはお姉ちゃんを連れてきてね!」

瑞穂
 「それがいいわね!そうしましょ!」

そっか、と何かに気づいた素振りを見せる。

聡人
 「おいおい、それってどういう事だよ」

瑞穂
 「あはは〜なんでもないわよ〜」

麗奈
 「さっ!早く行こ〜」

そう言うと、麗奈は瑞穂の背中を押しながらドアを出て行った。

・・・なんだったんだ?







真由美
 「あら、麗奈先に行きました?」

聡人
 「ええ、なんだかよく分からないですけど、さっさと行っちゃいました」

真由美
 「あらあら、それでお姉ちゃんはまだ行ってないんですか」

聡人
 「まだです。全く杏のやつ遅いんだからな」

真由美さんは意味ありげな微笑を見せた。

真由美
 「お姉ちゃん、何しているのかしら」

そう言いながらも、真由美さんは何一つ考える素振りを見せなかった。

どういう事だ?

真由美
 「あら、来たわね」


 「おまたせっ!」

・・・

聡人
 「何だ?その髪は」


 「ちょっとイメチェン!」

真由美
 「あら、かわいいわよ」


 「そうですか?真由美さんに言われると嬉しいです!」

聡人
 「しかし、そんなことしている暇はないぞ」

杏は左腕を捲り上げると


 「わ!もうこんな時間!行ってきま〜す!」

聡人
 「行ってきます」

真由美
 「いってらっしゃい」

・・・








 「それで、麗奈ちゃんはどうしたの」

聡人
 「お前が遅いから先に行ったぞ」


 「そう・・・残念」

なにやら含み笑いを見せる杏。

どうやら俺の知らない何かが動いていることは間違いないようだ。


 「どお?この髪型」

杏は少し首を傾げた。

聡人
 「どおって言ったって・・・」


 「ん〜、も〜かわいいか、かわいくないか、って聞いてるのお〜」

聡人
 「まあ、似合ってるな」


 「前の髪型とどっちがいい?」

聡人
 「どっこいどっこい」

杏は、そんな〜といった表情で俺を見上げる。

杏と俺との身長差がかなりあるが、今日の杏は更に小さく感じた。


 「そっか〜わたし、麗奈ちゃんの髪型、似合うかな〜」

聡人
 「やめておけ」


 「そお?でも、麗奈ちゃんの髪形かわいいお〜」

聡人
 「人にはな、似合うものと似合わんものがあるんだ」


 「じゃ、今の髪形、似合ってる?」

聡人
 「ああ、似合ってるからもうこれ以上髪型を変えないでくれ」


 「やった♪」

何が、やった♪なんだ?

・・・







教師
 「今日は最初に休み明けテストを返す」

いっせいにクラス中がざわめき立つ。

教師
 「あー騒ぐなーちなみに結果は最悪だ」

・・・

教師
 「出席番号の初めから取りにくるように。まずは安部・・・」

教師
 「つぎ!井川!」

・・・

教師
 「御住!御住!取りにこい!」

おいおい、凄みのある剣幕で俺を呼ぶな。

聡人
 「・・・はい?」

教師
 「はい?じゃないぞ。この点数でなにを勉強してきたのか?」

聡人
 「してません」

教師
 「自慢げに言うな!」

聡人
 「テストというのは、そのときの実力を測るものなんです.だからその場しのぎの勉強はしない主義なんです」

教師
 「だったらお前は入試の直前でも勉強しないのか?」

ざわざわ・・・くすくす・・・

おい、ギャラリー騒ぐな!

・・・







瑞穂
 「それでどうだったのよ」

ちらりと、点数の部分だけを折り曲げて見せてやる。

瑞穂
 「・・・シャレになんないわね」

聡人
 「・・・シャレになんねー」

教師
 「ちなみに今回は全校の平均点が想像以上に悪かった」

はっはっは!俺がそれに貢献したからな。

教師
 「後で改めて連絡があると思うが、再テストを行なう」

・・・へ?

おいおい、こっちを睨むな!

あちこちで俺の名前を連呼するな!

教師
 「あー騒ぐなー」

教師
 「御住のせいでテストをやるんじゃないぞ!御住のせいじゃないぞ!」

・・・俺のところを繰り返すんじゃない!

フォローしたんじゃないのか!

教師
 「テストはあさってに行うからな。しっかり勉強しておくように」

いつまでもこっちを見つめるな。

恥ずかしいだろ・・・

・・・







聡人
 「よう杏、釣れているか」

あのちっこい姿で釣りをしているのは、杏しかいない。

振り向いた杏は不機嫌そうな顔をしていた。


 「まださっぱりだお〜」

おれは近くに置いていた魚篭を覗き込んだが、やはり一匹も入っていなかった。

聡人
 「どうだ、今日は釣れそうか」


 「う〜ん、釣れる気はしないな〜」

聡人
 「普通そんな時は場所を変えるとか何とかするもんなんじゃないか」


 「ん〜そうかも」

聡人
 「なら場所を変えた方がいいんじゃないか?あそこの方が釣れそうだぞ」


 「でもね、ここで絶対釣れるはずなんだよ。ここで釣れないんなら、ほかにいってもダメだよ」

そう言った杏の確信めいた一言に、おれは折れるしかなかった。

聡人
 「杏、そうだな・・・」


 「なに?」

そう言って首を傾げた。

聡人
 「もう一本釣竿あるか」


 「え、なんで?!」

聡人
 「何もビックリする必要はないだろ」

そう言うと、橋の下をビッと指し


 「あそこにもう一本あるよ!」

そう言いながら、杏は走りながら自分で取りに行った。

聡人
 「お〜い!走ると転ぶ・・・」

ばふっ!

言ってる間から転んでいた。


 「てへ!しっぱ〜い!」

聡人
 「お前、そんなに張り切るな」


 「だって〜聡人、初めて一緒に釣りやってくれるんだもん!」

聡人
 「といっても、今日一日だけだぞ」


 「でも嬉しいよ!」

聡人
 「悪いけど、今日は俺が先に釣ってやるぞ!ビギナーズラッキーだ!」


 「ビギナーズラッキーってそう簡単にはいかないよ!」


 「あ、そうだ!わたしがコーチしてあげる!」

聡人
 「お前が?ロクに釣ってるところを見たときないぞ」


 「それはそのときだけだお〜」


 「普段は釣ってるもん!」

聡人
 「マジか」


 「マジだお〜」

聡人
 「う〜〜〜ん・・・」


 「まだ疑ってるのぉ?」

聡人
 「じゃ、杏先生に頼もうか」


 「わたしについてくればバッチリだよ!」

聡人
 「マジか」


 「マジだお〜」

・・・







聡人
 「・・・釣れないものだな」


 「そうだね」

魚篭を覗いても、魚は一匹も入っていなかった。

聡人
 「仕方ない。今日は帰るか」


 「そうだね、麗奈ちゃんや、真由美さんが待ってるからね」

この時期の日は短く、深く蒼い空が、また長い夜の訪れを示していた。

俺達はいつものように橋の下に竿を置いて家路を急いだ。

今日も、この蒼い空には月が出ていない。

・・・







聡人
 「あれ?麗奈はどうしたんですか」

夕食のテーブルの上には、麗奈の茶碗が用意されていなかった。

階段を下りてきた杏がキッチンを覗き込んだ。


 「真由美さん、麗奈ちゃんどこに行ったんですか」

真由美さんは、最後の料理を作り終えたらしく、リビングに出るところだった。

真由美
 「麗奈なら、椎名ちゃんの家にいってますよ」

聡人
 「瑞穂の家に?」

真由美
 「何でも、明後日にテストがあるらしいんで勉強を習いに行ってますよ」

聡人
 「テスト・・・ですか?あれってまた全校でやるのか」


 「わたしたちの学年はもうないけど」

真由美
 「聡人さんは大丈夫なんですか?テスト」

聡人
 「いえ、全然大丈夫じゃないですよ」

真由美
 「なら、聡人さんも勉強しないといけないでしょ」

聡人
 「覚悟はできています」

真由美
 「なら、お姉ちゃんに教えてもらったら?」

そう言うと、真由美さんは杏に視線を振った。


 「聡人は、わたしに任せてくださいっ!」

真由美
 「あら、おねえちゃんがいて心強いわね。聡人さん」

真由美さんが頬に手を当ててそう言った。

やはりな・・・

聡人
 「仕方ないな」


 「なによ〜このお姉さまが直々に教えてあげようってのに〜」

聡人
 「足手まといにはなるなよ」


 「それはないでしょ〜大丈夫だお〜」

真由美
 「なら、頑張ってね。聡人さん」

真由美
 「お姉ちゃん、聡人さんのこと頼みましたよ」


 「は〜い!わっかりました〜♪」

真由美さん・・・本気で杏を信用しているんですか?

その表情を見る限りでは・・・なんなんだろうか?

さっきから、頬に手を当てて、にっこり笑うだけですけど。

不安になっているのは俺だけか・・・

・・・








 「前のテストでは何が一番悪かったの?」

聡人
 「数学・・・だったかな」


 「かなって、覚えてないの?」

聡人
 「俺は過去を振り返らないことにしているんだ」


 「訳がわかんないお〜」


 「で、数学でいいの?」

聡人
 「ああ、まずは数学だな」

俺は、鞄から数学と大学ノートを取り出した。

・・・ところでなんでこれを大学ノートって言うんだ?

まあいい。

聡人
 「悪いが、途中で眠くなるかもしれないからな」

四角いテーブルに、杏と向かい合うようにして座る。


 「そのときは、起こしてあげるから安心してっ!」

聡人
 「それなら安心だな」


 「まっかしてよっ!」

そう言うと、杏はケースから眼鏡を取り出し、もみあげを片手で掻き上げて眼鏡をつけた。

何故かその姿を見るのが躊躇われた。

・・・








 「ほら、ここ計算間違ってる!」

聡人
 「・・・」

聡人
 「・・・」

そうと
 「・・・」

そうと
 「・・・zzz」


 「こらっ!寝るなっ!」

ぽかっ!

聡人
 「なむいぞ・・・」


 「なむいって?」

聡人
 「・・・zzz」

ぽかっ!

聡人
 「いたい」


 「まだ終わってないよっ!」

・・・








 「今日のところは、この辺にしておく?」

聡人
 「ああ、そうだな・・・」

気がついたら、数学のほとんどの範囲が終わるほどになっていた。


 「どお?今日のところは大丈夫?」

聡人
 「ああ、大丈夫だ」

聡人
 「ありがとうな」

俺の視線に対し、杏は故意に俺から視線をそらしたようだった。


 「あ、うん!これくらいなら、いつでもやってあげるよっ!」


 「そうだ!明日も勉強頑張ろうっ!」

聡人
 「ああ、頼むよ」


 「じゃ、おやすみ!」

聡人
 「ん、ああ、おやすみな」

そう言うと、杏は足早に俺の部屋を去っていった。

なんだあいつは?

時計を見ると、既に2時を回っていた。


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