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Original Novel Pochikun Presents



Bye〜rain〜


14.ともに

by ポチくん





Feb 4 SUN




聡人
 「ふぁ・・・おはようございま〜す」

日曜日の朝は、訳もなく睡魔に襲われる。

眠い目を擦りながらリビングにいた真由美さんに挨拶をする。


 「おっはよ〜♪」

聡人
 「のおわっ!」

聡人
 「何でお前がこんな早くにここにいるんだ?!」

今日は特別に早く起きたつもりだったのだが・・・

真由美
 「聡人さん、おはようございます」

真由美さんがワンテンポ遅れの挨拶をする。

真由美
「今日は日曜日なのに二人とも早いんですね」

真由美
「何かあるんですか?」

どうしてかしらという顔を俺たちに向ける。

聡人
 「いえ・・・なんでもありませんよ」

真由美
 「あら、そうかしら」

俺はまだパンを咥えている杏に顔を向けて、俺特製顔信号を送る。

『おい、真由美さんになんと言われても黙ってろよ』

『え、何?』

『だから、今日のことは真由美さんや麗奈に気付かれないようにしろ』

『ああ、そういうことね』

『おっけ〜だお〜』

『分かったら大丈夫だな・・・』

ふう・・・何とかなったか・・・


 「真由美さん!今日は聡人とデートしてくるのでお昼ごはんはいいですお〜」

ぶーーーーーーーーー!!!!!!!!

聡人
 「ちが〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜う!!!!!」


 「ほえ?」

真由美
 「あらあら、仲がいいのね」

真由美さんは「うふふ」と笑っている。

とても楽しそうだ。

聡人
 「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」

俺は真由美さんの思考にマッタをかけた。


 「あれ?今日デートじゃないの?」

聡人
 「っだ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」

真由美
 「二人ともお似合いよ」

聡人
 「ま、真由美さんも〜〜〜〜〜!!!!!」


 「うぅ〜〜〜今日デートじゃなかったのぉ〜〜」

真由美
 「お姉ちゃんを泣かせちゃだめよ」

聡人
 「おいおい、泣くなよ・・・」


 「だって、今日デートじゃなかったの?」

聡人
 「って言ったってなぁ・・・お前」


 「うう〜〜〜〜」

真由美
 「聡人さん」

聡人
 「あ〜〜〜〜分かった分かった・・・今日は杏とデートだ」


 「わ〜〜〜〜〜い!やった〜〜〜〜〜!」


 「今日は聡人とデート!」

真由美
 「聡人さんもお姉ちゃんも、良かったわね」


 「うん!」

えーい!もうどーにでもなれぃ!

でも・・・

聡人
 「麗奈には黙っておいてくださいよ」

真由美
 「あら、その必要はなくってよ」

???

真由美
 「もういいわよ」

そう言うと、麗奈は台所から微笑みながら出てきた。

麗奈
 「あははは〜〜〜」

・・・ふぅ

聡人
 「全部計算づくだったんですね・・・」

真由美
 「あら、聡人さん、気付きませんでした?」

全く、真由美さんには頭が上がらないなぁ・・・

麗奈
 「おみやげ、お願いね♪」

聡人
 「おみやげって・・・」


 「楽しみだなぁ〜」

ふぅ・・・

・・・







聡人
 「・・・ってこれの何が面白いんだ?」


 「え?すっごく面白いお〜」

聡人
 「でもなぁ・・・これはないだろ・・・」

ゲーセン

の釣りゲーム・・・

聡人
 「いっつもやってるだろ・・・」

竿をぎゅっと握り、コインを投入口へ入れる。

セレクト画面が現れ、杏はもちろんというように上級モードを選ぶ。


 「いよ〜っし!」

杏は気合を入れるように腕まくりをしてから、竿を握り返した。

・・・







ふぅ・・・

気がつけば、俺もこのゲームにはまっていたらしく杏と対戦するまでに至っていた。


 「あ〜面白かった〜」


 「つぎつぎ〜♪」

杏は既に次のアトラクションに走っていた。


 「ねぇ、聡人っ!これやろ〜これっ!」

聡人
 「なになに?わ、に、わ、に、ぱにっく?まだこんなのがあったのか〜?」


 「うん、懐かしいね〜」

本日の最高記録に0ポイントと書かれているのが哀しい。

聡人
 「っていうか、動くのか?これ」


 「動くみたいだお〜」

聡人
 「じゃ、一回やってみるか?」


 「うん!」


 「聡人はこっちからこっちの方を叩いてね♪」

わにが顔を出す穴のうちで、半分のところを手で切って俺に合図を送る。

要するに俺がこっちを叩いて、杏があっちを叩くということらしい。

聡人
 「お前・・・これ、ずるくないか?」


 「でも、聡人もやったときあるでしょ〜おあいこだよ」

聡人
 「まぁ、しょうがないか」

どこがおあいこなのかさっぱり分からないが、とにかく俺は無理矢理納得しておく。


 「ほらっ!出てきたよっ!」

そう言うと、わには穴からひょこっと顔を出してくる。


 「えいっ!それっ!」

わには叩かれるたびに「ふぎゃっ!」とか「うぐっ!」と声を発する。

俺はそれを見て、わにが不憫に思えてきた。


 「はいっ!ていっ!」

わにはそれにもめげずに出てくる。

・・・







「もうこうさんだ〜〜〜」


 「え〜もう終わっちゃったの〜」

聡人
 「いつまでもやってるわけにはいかないだろ」


 「それはそうだけど〜」

杏はまだ物足りないのか、首が引っ込んでいるわにの穴に手を突っ込んで頭を叩いている。


 「あ!次あれやろっ!あれ!」

感心がころころ変わる杏を見て、俺は子供をあやしているようにも思える。

杏が指差したのはUFOキャッチャーだった。


 「これが欲しいな〜」

聡人
 「どれどれ・・・」

杏が指差したのは、青い長い髪と青い大きな目をしたメイド服を着た女の子の人形だった。

聡人
 「杏はこれに興味があるのか?」


 「だって、かわいいお〜」

聡人
 「まぁ・・・な」


 「ねぇ〜取って〜」

聡人
 「仕方ないな〜」

俺はUFOキャッチャーのコイン口に100円を投げ入れる。

まずは縦ボタン・・・

ぐいーんとアームが移動する。

そしてこのボタン・・・

だんだん目的の人形へと近づいていく。

よしっ!ここだな・・・

Aと書かれたボタンから手を離すと、アームが下に降りていく。

そして人形に触って・・・

ひっぱって・・・

・・・っ!

・・・ぅ

聡人
 「だーーーーーーーーー!!!!!!」


 「残念・・・」

聡人
 「もう一回チャレンジだ!」


 「がんばれ〜〜〜」

聡人
 「おうよ!」

・・・







聡人
 「もう一回!」

・・・

聡人
 「最後!」

・・・


 「もういいお〜あきらめよぅよ〜」

聡人
 「あと1回だけ!」

俺にもプライドというものがある。こんな機械に馬鹿にされている気がして意地になっているだけなのかもしれない。

・・・

そして・・・

聡人
 「ほら!取れただろ!」


 「うわ〜ありがと〜大切にするお〜」

聡人
 「そうしてもらわないと困るけどな・・・」


 「うん!」


 「じゃ、こんどはあれやろっ!」

今度杏が興味を示したのは「プリント倶楽部」通称「プリクラ」と呼ばれるものだ。

俺は写真を取るのはあまり好きじゃないんだが・・・


 「ね〜はやくぅ〜」

杏が俺の腕を引っ張る。

聡人
 「はいはい、これですね」

俺はそののれんをくぐると、テレビ画面と対峙した。

「お金を入れてね!」

・・・かわいい声で金をせびるんじゃない!

「きぼうする枠を選んでね!」


 「あ!これがいいなぁ〜」

聡人
 「おい、押すなよ!狭いんだから」


 「じゃ、押すよ〜」

聡人
 「分かった分かった」


 「じゃぁ、ぴっと」

ぴっと自分で口に出している仕草が可愛い。

「じゃ、写真をとるね」


 「は〜い♪」

杏は出てきたシールを取り出すと背負っていたザックに中にしまいこむ。

聡人
 「お前・・・それどうするんだ?」


 「あ!そっか〜聡人にも分けなくちゃね」

聡人
 「いや・・・そういうことじゃなくて・・・」

てへっ!っと笑うと、杏ははさみでシールを半分に切り分ける。


 「はいっ!聡人っ!」

聡人
 「え?ああ・・・貰っておく・・・」

仕方なく俺もシールをポケットにしまいこむ。

聡人
 「で、次はどこに行くんだ?」


 「え?そっか〜」

聡人
 「ゲーセンもそろそろ飽きたろう?」


 「そうだね〜」


 「ん〜とね〜」

・・・








 「あのと〜り〜はまだ〜う〜まくとべない〜け〜ど〜♪
いつ〜かはかぜをき〜ってし〜る〜♭
とどか〜な〜いばしょがまだ〜とお〜くに〜あ〜る〜#
ねが〜いだけひめ〜て〜みつ〜め〜て〜る〜☆」

やっぱりカラオケだよな・・・

そういえば最近カラオケなんて来てなかったな。

杏は振り付けをしながらマイクを握って歌っている。


 「き〜えるひこうきぐも〜おいかけておい〜かけて〜♭
このおかを〜こえた〜あのひからかわらず〜いつ〜ま〜で〜も〜☆
ま〜っすぐに〜ぼくたちはある〜ように〜♪
わ〜たつみの〜ような〜つよさをまもれ〜るよ〜き〜っと〜#」

・・・結構うまいじゃないか。

俺は純粋に杏に拍手をする。

ぱちぱちぱち


 「はいっ!つぎ聡人ねっ!」

杏は持っていたマイクを俺に差し出す。

聡人
 「仕方ないなぁ〜」

・・・イントロが流れ出す・・・

聡人
 「白く〜途切れた〜夢の〜切れ端をつかまえて〜少年は走る〜
手を離したら〜どこま〜でも遠く風の音に〜消えてゆく〜」

聡人
 「朝〜には〜消〜えた〜あの歌声を〜いつまで〜も〜聞いて〜た〜
僕〜らが〜残した〜あの足跡を〜いつまで〜も〜追って〜た〜
そう〜終わりは〜別れと〜あるもの〜だから〜すべて置いていく〜
朝〜には〜日差しの〜中新しい〜歌口〜ずさんでる〜」

ちゃららら、ちゃららら・・・

・・・沈黙。


 「うわっ・・・聡人、歌うまい・・・」

聡人
 「下手なんて今まで言ってないぞ」


 「のど自慢で本日のグランプリ取れるよ」

聡人
 「いや・・・欲しくはないけど・・・」

杏は目を丸くして口を半開きにしている。

うまいと言われてちょっと嫌ではないな・・・


 「わたし・・・聡人の後に歌いづらい・・・」

聡人
 「なんでだ?」


 「わたし・・・ヘタクソだから・・・」

杏はそう言うと俯いてしまった。

聡人
 「そんな事ないぞ!うまかったじゃないか、さっきの歌」


 「そう?上手だった?」

聡人
 「ああ、それにここにいるのは俺たちだけだ。恥ずかしがることなんてないぞ」


 「あ〜それって誉めてるの〜?」

聡人
 「誉めてるんだよ。気にするな。ほらほら、お前の番始まるぞ」


 「あ!はいはいはいっ!」

また音楽が流れ始める。

杏がまた振り付けをして歌っている。

・・・そっか、ここにいるのは俺と杏だけだったんだな・・・

・・・








 「今日は楽しかったね」

聡人
 「ああ、楽しかったよ」


 「またデートしようね」

聡人
 「あ、ああ・・・」


 「聡人、わたしのこと・・・好き?」

聡人
 「ああ・・・」


 「聡人〜」

聡人
 「なんだ?」


 「さっきから『ああ』しか言ってないお〜」

聡人
 「そうだったか?」


 「うん・・・」


 「聡人・・・何考えてたの?ぼーっとしちゃって〜」

聡人
 「何も考えてないよ・・・ただぼーっとしていただけさ」


 「そう?じゃ、早く家に帰ろっ!」

聡人
 「そうだな・・・帰るか」

杏は・・・俺にとってなんなんだ・・・

俺たちが出会ったのはほんの数日前だった。

だが、俺たちはこんなにも短い時間に惹かれあった。

この脆弱な心を埋めるように・・・

この半人前の幸せを共有するかのように・・・

俺は、何故こんなにも不安なんだろう。

俺は、何に怯えているんだろう・・・







俺たちが家に帰る頃にはいつものように日は傾いていた。

そしていつもの橋の上に辿りついた。


 「・・・そういえば、聡人とこうして夕方橋の上に二人でいるのって、あの日以来だね」

聡人「ああ、そういえばそうだな・・・」

釣りをして家に帰るときは橋の上を通らないし、ましてや杏と一緒に学校から帰るときなんて無い。

西日は俺たちの行く先から容赦なく照らしてくるが、それがもの寂しく、そして哀しいまでに綺麗だ。

聡人
 「そういえばさ、杏の進学先ってどこなんだ?」


 「ん?わたし、進学なんてしないよ」

聡人
 「え?」

意外な一言だった。

うちの学校でも稀に見るほどの秀才が進学しないと聞くと、それはまた滑稽に聞こえた。

聡人
 「進学しない・・・となると、就職か?」


 「うん。就職・・・」


 「学校の先生とかからもね、進学したら?って言われるけど・・・」


 「でもわたし・・・進学して、それで本当に自分のやりたいことが見つかるのかって言われても、たぶん見つからない・・・」


 「だからわたしは就職して働くの」

聡人
 「そっか・・・それも杏なりの答えなんだな」


 「そう思いたいよ・・・」

聡人
 「でも大丈夫さ。杏が就職しても俺はいつか迎えに行ってやるよ」


 「うん・・・ありがとう」

この夕日がまた昇る頃、また俺たちの新しい日が始まることを信じて・・・



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