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Original Novel Pochikun Presents



Bye〜rain〜


18.曖昧と混沌

by ポチくん





Feb 8 THU




聡人       麗奈
 「いってきまーす」「いってきます」

真由美
 「いってらっしゃい」

・・・







麗奈
 「そうそう、今週の土曜日はお祭りがあるっていうの、兄さん分かってる?」

聡人
 「いくら俺でもそれは知ってるぞ」

今年の雪の量は例年よりも多く、雪祭りをするにはベストコンディションといえるだろう。

麗奈
 「兄さんは行かないの?雪祭り?」

聡人
 「ん、俺か?俺は・・・」

その時、俺の中で何かが揺れた。

何だったかは知らない。

ただ、それが今の俺にとって望んでいないもの、でも、俺にとって大切なもの・・・

何よりも、何よりも大切な、曖昧で混沌とした記憶だった。

聡人
 「俺は、多分行くと思う・・・」

麗奈
 「多分って?」

聡人
 「よく分からない・・・」

学校に着くまで、麗奈は終始首を傾げていた。

・・・







瑞穂
 「ねえ聡人くん、聡人くんは土曜日にお祭りにいくの?」

関口
 「どうだ?今年もみんなで行くことになってるんだよ」

関口
 「そういえば、聡人は俺たちと一緒に行ったときなかったな」

聡人
 「今朝も同じ事言われたよ」

関口
 「そうなのか?で、行くのか?」

聡人
 「ああ、多分な・・・」

瑞穂
 「なら決定ね」

聡人
 「い、いや・・・そういう訳じゃないんだ」

瑞穂
 「どういう事?」

わからない・・・でも、多分・・・多分なんだ・・・

聡人
 「先着があるんだ。多分な」

瑞穂
 「何か言ってる事が矛盾しているような・・・」

聡人
 「そう・・・だな」

俺も何を言っているのか分からないんだ。

誰かを、俺は待っている?

その真相が俺はつかめなかった。

でも、何かが俺の中で揺れ始めているのは確かだった。

・・・







真由美
 「聡人さん、体調悪いんですか?」

聡人
 「え?」

家に戻った俺は、真由美さんにそう指摘された。

そういえば、体がだるい気がする。

聡人
 「そんなに分かりますか?」

真由美
 「ええ・・・蒲団敷いておきましょうか?」

聡人
 「いえ、いいです。このくらいなら」

真由美
 「ダメですよ。こじらせると大変ですから」

聡人
 「真由美さんがそう言うならそうさせて貰いますけど」

聡人
 「すいません」

真由美
 「いえ、いいんですよ。ひどくなったら、悲しむのは麗奈や私だけじゃないんですから」

聡人
 「そうですね。ではそれに甘えさせてもらいます」

真由美さんは、ただにこっと笑って俺の部屋に敷きに行った。

って言ったって、万年床だけど・・・

・・・







夜には麗奈がおかゆを持ってきてくれた。

改めてこうされると、いよいよ病人という気がしてくる。

麗奈
 「んもぅ〜兄さんったら・・・この間も風邪引いたでしょ、直ったからって油断しているからこうなるのよ」

聡人
 「そうだな・・・笑い種だな、こりゃ」

麗奈
 「ホントにそうだよ」

聡人
 「ああ、ホントにそうだ」

麗奈が乗せたタオル。

真冬の水は凍りそうに冷たい。

額の上に乗せられたタオルは、始め冷たさを保っているが、だんだん俺の体温でその冷たさを失っていく。

そういえば、この間も俺は風邪を引いたんだな・・・

どうしてもそのときに看病してくれた人は誰かが思い出せない。

麗奈でもない。真由美さんでもない。

誰だったんだ・・・

俺の傍にずっといてくれた・・・

そして俺の話を聞いていた・・・

あの人は一体、誰だったんだろう・・・

その名前が、なぜか思い出せない・・・

・・・



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