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Original Novel Pochikun Presents



Bye〜snow〜


9.幸せという名の一番星

by ポチくん





花火がなっている。
今日は…雪祭りの日だっけ…

二年間…私は二人きりでこの夏祭りの花火を見ていた。
お母さんと…私。
ずっとずっと…楽しみにしてたっけな…
だって…今年は二人きりじゃないもん。

はじめて友達になった、柚ちゃんや、椎名さん。
それに…兄さんと、お姉ちゃん…
私…私…
ずっと楽しみにしてた…なのに…
約束を破ったのは…私。
だから…私もそのつぐないをしなければならない…

(瑠璃ちゃんだってそう思うでしょう?)

花火が、また上がった。
それは決して派手なものではないし、雪に音がかき消されて、凄いものではないけど…
でも、とても綺麗だった。

私は…もう迷わない。
私は…もう悩まない。
私は…もう苦しまない。

私は、私の夢をつかむ。
今までよりもずっと大変だけど…でも、私はそう決めたから…
私は、みんなよりもずっと目立たなくて…みんなよりもずっと頭の悪い子だけど…
でも、夢をつかもうとするこの気持ちは、誰にも負けない。

だから、私は…

一際大きな花火が上がった。
不思議と、手足は私の一部のように自然に動いていた。
あの日と同じように…
私は、走った。
あの人のいるところ…幸せの待つ場所へ…





「古館真由美さんは、特別な血液型で、RH−という、非常に珍しい血液型なのです」

「すみませんが、うちの病院にはそのサンプルがありません。もし、ご家族の方がいらっしゃれば、あるいはの話ですが…」

私たちに、そう告げる医者。
私に、宣告したあの医者だった。

私は…もう失いたくはない…
だれも…なにがあっても…
特におかあさんには…
私は…お母さんの子なんだから…

お母さんは、私を生んでくれた。
お母さんは、私にこうして命ということを教えてくれた。
私は、お母さんから、たくさんの…本当にたくさんのことを教わった。

だから、今度は私がお母さんを助ける番。
お母さんは、私にしか助けられないから。
たった一人の…私の肉親は、お母さんだけになっちゃったから…
だから…私は、お母さんを助ける…ううん、助けたいの…





麗奈
「その人は…私のお母さんですから…」

麗奈
「お母さんは…私が助けます」

私は、そう決めたから。

総人
「真由美さん…絶対に生きてくださいよ…そうしないと、麗奈が可哀想過ぎますからね」


「そうだお〜…真由美さんは麗奈ちゃんのおかあさんなんだからね…たった一人の…大好きなお母さんなんだからね…もう、麗奈ちゃんに、こんな苦しみは味あわせたくないんだから…」


「だから…生きて」

麗奈
「兄さん、お姉ちゃん…大丈夫だよ…お母さんは、私が絶対に助けるからね…」

兄さんとお姉ちゃんは、私の手を握ると、ぎゅっと強く締めた。
それは痛いくらいだったけれど…でも、私は嬉しかった。
私は、お母さんと一緒に並んだ。
これからは、お母さんの中に私が生きるんだね…

命という名の絆。
私とお母さんだけの時間が、これから流れ始めようとしていた。

おかあさんが私に犯した罪…
それは、生きて…私を幸せにすることこそが一番のつぐないなんだって…
死んで逃げるということは、一番良くないことなんだって…





だって…私はお母さんが好きだから…





あたたかい光に包まれていた。
空が明るかった。
今までのような、紫色の空じゃない。
青くて…一面が透き通っていて…
優しくて…清々しくて…
手を伸ばしてみた。
ふわっと、柔らかい空気が腕を包んでいた。

気持ちいい…
これが…
おかあさん
もうどこにも行かないよね
私ね…おかあさんが好き
私が、大人になって…誰かと結婚しても…
それでも、私はおかあさんが好きだよ…

だからね…
だから…
今度は私が…
あしたも…あさっても…
来年も…ずっとずっと…
痛くないから…もう痛くなんてないから…



「おかあさん」

「どうしたの?麗奈」

私を包んでいた中から、私を呼ぶ声がする…
私だけが、こんなに幸せになっていいの?
兄さんも…お姉ちゃんも…ずっとずっと…
でも、兄さんとお姉ちゃんにもこの幸せを分けてやる…
ううん、一緒に幸せになっていくのが、これからの私の役目だから…
だからね…

おかあさん
今度は私をおいて行っちゃダメだよ…

「分かったわよ…麗奈」

私はね…おかあさんを恨むことが生きがいだったんだよ
でもね、おかあさんがいなくなったら恨むこともできなくなっちゃうでしょ
生きて…生きてつぐなって…
今度またいなくなったら…
私…本当にお母さんのこと嫌いになっちゃうからね

「麗奈…もう、私の子達を置いて行ったりしないから…」

「これは絶対だから…」

「麗奈が見つけた一番星…お願いしたその気持ちは、ずっと…ずっと…」

あったかい…おかあさん

「うふふっ…もう春なんですから」

「ほら…」

あっ…風が暖かい…
雪解けの水の音…
ざわめく木々の声…
踊る小鳥達…





“麗奈おねえちゃん…私もずっと麗奈お姉ちゃんと一緒だよ”
“またいつか…もし、出会うことがあったら…”
“またお姉ちゃんって、呼んでいいかなぁ?”





もちろんだよ
みんなで一緒に…また…
空に光る一番星…
私は、また同じお願いをする。
あの日と同じお願いを。
今日もまた…一番星を探そう。

幸せという名の一番星



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