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Ryo Original Story



流れ星


by




 宇宙から飛来する一筋の光。
 人々の思いを胸に、その存在をまっとうしていく。
 愛を、夢を、希望を乗せて、美しく華麗に降り注ぐ星屑の雨。
 人々の心に根付き、その輝き、神秘性、儚さをもって、世界を魅了してやまない。
 その存在を知らしめることなく、それでいて強い印象を残す存在。
 僕は、そんな人間になりたかった。幼心に、まるで『ヒーロー』のようだなんて思っていた。
 些細な幸せを守れる、自分の周囲の人間を幸せに出来る、そんな偶像を持っていたんだ。
 特撮のヒーローのようなたいそうなモノじゃない。世界の平和を守るなんて、そんな大それたことは決して思わない。
 大事なのは、人々の憧れになることじゃない。人々の、救いになることでもない。
 僕という一人の人間を、ただ必要としてもらえる。大きな目的のためでなく、お互いが生きている上での支えにしてもらえるような、そんな人間になりたかった。
 そんなことを初めて思ったのは、小学校の頃。
 降り注ぐ流星群を、その時期にしては珍しいくらいの真夜中まで起きていて、ただ真摯に空を見上げて見つめていたあの日。
 その時、僕は自分の考える『ヒーロー』になりたいと願ったんだ。
 それまで、流れ星なんて存在を知らなかった僕だけど、テレビでは毎日のように何十年に一度の珍しいものだと放送していた。
 そして、それを聞いていた人々も、その話をする人々も、家族も友人も、みんなとても楽しそうな無邪気な表情を浮かべていたのが、とても印象深かった。
 それを見て、僕は憧れた。そんな、人々を幸せに出来る存在に。
 大きな力を持つわけではない。一つ一つはとても微弱なモノなのに、幸せを、喜びを与えられる存在に。
 その頃は幼くて、具体的にどうなろうとか思ったわけじゃないけれど、ただ漠然と自分の将来を決意したのは、間違いなくその時だった。
 ただ、そこにあるだけで、人に喜びを与えられる存在。
 些細な願いをかなえられる存在。
 自分の手の届く範囲で、人を幸せに出来る存在。
 世界のことなんて考えられないけど、自分の周りのことは、出来る限り守ることの出来る人間に。
 小さいようで、大きな夢。
 小学校の卒業論文で書いて馬鹿にされて以来、あまり人には話していないけど、自分の中でその目標が揺らぐことはなかった。

 そして、僕は今この場に立っている。
 自分の生きてきた人生の一つのピリオドとして、この場に立っている。
 今まで、自分の夢を果たせてきたのか分からない。
 嫌なこともあったし、悲しいことも沢山あった。
 救えるはずの人を救えなかったり、逆に人を傷つけたりもした。
 それでも、僕は自分の信念に従って生きてきた。
 そして、僕は今この場に立っている。
 人生の転機を迎える、この場に立っている。
 この選択は間違っているとは思わない。
 周囲を幸せに出来るかわからないし、また誰かを傷つけてしまうかもしれない。
 でも、この選択が間違っているとは決して思わない。
 僕は自信を持って、この場に立っている。
 流れ星に願うような大きな夢が叶うわけではないけれど、僕は今とても幸せだから。
 まるで、流れ星のように、僕のもとに降ってきた幸せ。
 愛を、夢を、希望を乗せて、その輝き、神秘性、儚さをもって、僕の世界を魅了する存在を――――。
「――――を妻とし、生涯愛することを誓いますか?」
 僕は、自信を持ってこの場に立って、目の前の彼女を見つめ、はっきりと答える。
 この幸せを、愛を、夢を、希望を乗せて、その輝き、神秘性、儚さをもって、君の世界を魅了し、そして守っていくことを――――。
「誓います」




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