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Ryo Original Story





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「人間には喜怒哀楽の感情が必要不可欠だ。
感情の起伏は、時に人を不幸にするが、その感情から得られる幸福も数知れない。天秤にかけて比べてみても、間違いなく幸福に傾くだろう。
人間は、時には泣き、時には怒り、なるべく笑って、なるべく喜んで、みんなが満足できて、みんなが幸せで、まるでエデンの様な世界が理想的だと思う。
そのためには、喜怒哀楽の感情は必要不可欠。
だから、人は悲しみを感じぬもの、喜びを与えぬもの、怒りを覚えぬものを、畏怖の対象としてきた。
嫌悪し嫌汚し、迫害し迫外し、破解し破壊してきた。あくまで自然に、それでいて必然に、あくまで客観的に、それでいて主体的に、世間は異物を、人は汚物を、人間は人間を殺してきた。
時には魔女狩り、時には人種差別。今の時代に魔女狩りは存在しないが、それでも代替は存在する。
世界のシステムに変化はない。時代は進み、文明は進み、科学は進歩し、人は退化する。
飢餓でなく、本能でなく、意思を以って、感情を持って、欲望を持って同族を殺すことの出来る種族。
それが、人類だ。
自らの喜びのため、自らの楽しみのために、多種族を壊すことが出来る種族。
それが、人類だ。
世界の王者であると自称し、地球の覇者であると自称し、絶対的な高みから、自らをも滅ぼしてしまう高みから、他者を見下ろし、他者を見下し、時には希望を、時には絶望を与える種族。
それが、人類さ。
絶対的な王権制度。一部の政治家による、国家の掌握。自己主張の果ての内乱や戦争。すべては、自分が自分であるために。すべては、自分が他者より上であるために。すべては、自己の意思の赴くままに。
みんな、そうやって生きている。自分の意思に忠実に、自分の感情に忠実に。感情の欠落している人もそうだ。みんな、忠実に生きている。だったら、感情の一部が欠落している方がいいんじゃないか?
それが、喜びや楽しみだったり、怒りや悲しみだったりと違うけれど、彼らの行為に悪意はない。自分自身で理解できないだけさ。悪意はないんだ。
欲望を覚えることはあるだろう。人を殺したいと思うかもしれない。悲しみを知らないから、他者を悲しませてしまうかもしれない。怒りを覚えぬから、他者を怒らせてしまうかもしれない。
でも、そこに悪意はない。悲しみを知って、怒りを知って、他者の苦しみを知って、悪意を持って人を傷つけるより数段マシなはずだ。
だから、感情が欠落しているほうがいい。僕も含めて、欠落している人間をもっと尊重するべきなんだ」
「それで、君は、何が欠落しているんだい?」
「僕には、罪悪感という概念と、それに対する行動の認識が欠落しているんだ。僕が一番たちが悪いのかもしれないね。
だけど、それは仕方のないことなんだ。そこに悪意はなく、僕個人ではどうしようもない。まぁ、わからないけどね」
「なるほど、君は悪意を感じることが出来ないと。なら、仕方ないね……とでも言うと思ったのかい? まぁ、君の話が本当なら僕の手にはおえないから、警察に電話するよ。いいね、万引き犯さん」
「嘘です……ごめんなさい」

                              終




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