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御國冴綺 Original Novel



眼鏡


by 御國冴綺




抜けるような青空の朝
少し早めに学校に着く
机の上に鞄を置いて ふっとホワイトボードの方を見る

そこにいたのは神奈君
去年から同じクラスの男の子で
私の大好きな人

いつも一緒にいる人たちと話している
時折見せるとびっきりの笑顔
その笑顔に吸い込まれそうになる

その時 神無君が私に気づいた

「よぉ、早いじゃねぇか」

「あ、おはよう」

「おはよう、香澄」

ガララララ……

 話を続けようとしたら 前のドアから誰かが入ってくる
 それは クラスの中でもあんまり目立たないって言ったら失礼だけど
 特徴って言われたら 眼鏡って答えてしまうほどの女の子だった
 私も……他の人から見れば 特徴は眼鏡だけかもしれないけど

「おはよう」

「あれ? ……お前、矢崎?」

「うん、そうだよぉ? って、ひどいよぉ、わからないなんて」

 神無君のその声は 明らかにおかしかった
 私も矢崎さんの顔を見てびっくりする
 矢崎さんから 眼鏡が消えてたから

「あはは、ごめんごめん。いつもの眼鏡がさ、無かったもんだから」

「ああ、眼鏡? うん、昨日ね。ずっとコンタクトに変えるの勧められてたし、いっかなって」

「ふぅん、俺もイイと思うぜ」

 神無君は、矢崎さんを見つめたまま どんどん近づいていく

 そして……

 キスしちゃいそうなぐらい 顔を近づけて……

 ダメッ……
 私なんか まだそんな近くで顔を見られたことなんて無いのに……

「へー 矢崎って、すっげぇ目が綺麗だったんだな」

「そう? ありがとぉ」

 お願い……
 二人とも離れて……
 こんなの見ちゃったら 胸がつぶれそう……

 その願いが叶ったのか 神無君は矢崎さんから離れて
 頭の後ろで腕を組んで 私へと近づいてくる

「お前もさ、眼鏡やめて、コンタクトにしたら、少しは可愛くなるんじゃねぇ?」

「なっ なによっ じゃあ今は可愛くないってこと?」

「いや、そういう訳じゃねぇんだけどさ……」

「ふんだ。神無君も眼鏡やめたら、少しは格好良くなるかもね」

「ちぇ、せっかく勧めてやったのによぅ」

 ごめんなさい……
 私ね どうしてもこの眼鏡を外したくないの

 だって この眼鏡は……
 神無君とおそろいの眼鏡だから……

 神無君のことを好きになってから
 ママに無理にお願いして買って貰ったの

 こんなこと 神無君には絶対に言えないけどね

「ほら、香澄だって綺麗じゃねぇか、目」

「っっっっっ!!!!」

 私の眼鏡を人差し指で 下にずらして
 まつげが触れるような位置に 神無君の瞳
 心臓が飛び出そうなぐらい早く動いて
 頭の隅では このまま一気に 唇同士をふれあわせたいと思って……

「あははは びっくりしてやがんの」

「っっっもぉっ 神無!」

「あははははっ」

 少しも動揺していない神無君を
 真っ赤になってしまった私が追いかける

 なんだか 悔しいな
 少しも どきどきを感じてくれなかったことが

「神無、覚悟っ」

 こんなことを言ってるけど
 私は一つだけ 心に誓った

 神無君と同じもので
 神無君が触れてくれたこの眼鏡
 一生 大切にしようって……





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