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Sister Princess



クリスマス


サンタさんの贈り物

by 高津 沙穂




 クリスマス・イブ。この日は、誰にとっても、大切な日。
 妹達と兄君さまとで、クリスマスパーティを行い、ワタクシは、とても幸せな気分に浸っておりました。
 しかも、パーティをするだけではなく、亞里亞さんの家で、十三人全員がお泊まりをするのです。
 普段、近くには居ない兄君さまが、部屋をいくつか隔てたところにいると思うと、そわそわした気持ちを抑えきれなくなってしまいます。

 ですからワタクシは、そのそわそわした気持ちを抑えようと、ワタクシはお風呂へと向かい、入浴することにしました。
 お風呂にじっくりつかっていると、何とかそわそわした気持ちを抑えることが出来たのです。

 兄君さまとお話ししたり、他の妹の皆さんと遊んだり、いろいろとやりたいことはあったのですが、お風呂から上がり、 洗面所で髪を乾かして、ワタクシに与えられた部屋に戻ってきたときには、もうクリスマスに日付が変わっていました。
 冬休みに入ってはいるのですが、お稽古事で、休む暇など無いのですから、今日も早く寝なければなりません。
 ワタクシは、頭の中に思い描いていたやりたいことを一つずつ消すと、 日記を手に取り、今日一日起こったことを書き留め、電気を消し、布団の中へと潜り込みました。

 はぁぁ……楽しい時間というのは、どうしてこう、早くすぎてしまうのでしょうか。
 兄君さまと、もう少しお話が出来ると思っていましたのに、ワタクシの願いは叶わずに、こうして悲しみを生み出すばかり。
 お稽古事をしなければ、もう少し兄君さまのそばにいられるのに……

 ううん、いけませんわっ。
 ワタクシは、頭の中に浮かんできた邪念を、必死に振り払いました。

 ワタクシは、兄君さまを退屈させることがないように、いざというときに、兄君さまをお守り通すことが出来るように。
 そんな想いで、いろいろなお稽古事をしているのですもの。
 それを捨てるということは、即ち兄君さまを裏切るということ。
 そんなことは、絶対、何があっても、してはいけないのですっ。

 そう考えていると、少しずつ、眠気がワタクシを包み込んできました。
 ワタクシは、それに身を任せながら、明日の起床時間と、兄君さまのことを強く想いました。
 自分でもわからないうちに、それがぷつりと途切れ、ワタクシは夢の世界へと旅立ったのです。

 ワタクシの夢の中には、いつも兄君さまが出てきます。
 兄君さまとお話をしたり、兄君さまとお茶をしたり、兄君さまと遊んだり。
 現実では果たせない事を、夢の中で果たしているのです。
 だからワタクシは、夢の中に入ることが、とても大好きなのです。

 その夜、ワタクシは不意に目が覚め、なかなか再び眠れずに、中庭へとお散歩に行きました。
 ワタクシは、少しの間、夜空に浮かぶ月を眺めていました。寒さは感じず、ただ、月の光がワタクシに降り注いでいました。
 その内、眠気が襲ってきて、ワタクシは自分の部屋へと歩いていったのです。
 月明かりの中、ワタクシはベッドにたどり着き、滑り込ませるように体をベッドへと預けました。

 その時に感じた違和感に、ワタクシはすぐに気が付きました。
 同じベッドの中に、誰かが横たわっているのです。
 普段なら、そんなことになれば飛び起き、長刀で斬りかかってしまったかもしれません。
 ですが、ワタクシは、その隣にいた人物が誰であるか、その背中を見ただけで、わかってしまったのです。

「兄君……さま……?」

 眠気でぼーっとした頭の中で、なぜここに、兄君さまが居るのか考えました。
 そして、一つの答えにたどり着いたのです。
 今日は、クリスマスイブ。サンタさんが、全世界のいい子のために、プレゼントをして回る日。
 ワタクシの所にも、サンタさんが来て、プレゼントを与えてくれたのでしょう。
 兄君さまと、一緒のお布団で寝られるというプレゼントを。

 鼻で息を吸うと、兄君さまの香りがワタクシの脳を甘く刺激し、伸ばした足には、兄君さまの長い足が当たります。
 すっとのばしたワタクシの腕は、兄君さまの引き締まった背中に触れ、かすかに伝わる兄君さまの鼓動を、感じています。
 ワタクシは、なんて幸せなのでしょう。
 いつも、望んではいても、決して叶うことの無かった夢。
 それが今現実として、ここにあるのですから。

 ワタクシは、しばらく兄君さまを感じた後、夢の世界へと落ちていきました。

「うわぁっ 春歌! なんでこんな所に居るんだ!」

 ワタクシは、そんな兄君さまの声で目を覚ましました。
 ぼーっとした頭で、ベッドの脇でワタクシの体を揺り動かしている兄君さまを見つめました。
 ああ、なんて格好いい兄君さま……

「春歌……いい加減、起きてくれよ!」

 再び発せられた兄君さまの大きな声。
 ワタクシはそれによって、一気に目が覚めたのです。
 周りを見回すと、そこは、ワタクシに与えられた部屋ではありませんでした。
 ここに兄君さまが寝間着姿でいらっしゃるということは……つまり……

「申し訳ありません、兄君さまっ
 ワタクシ、そんな、寝ぼけて……こんな事をっ……なんとお詫び申し上げていいか……」

 ワタクシの目から、涙があふれ出してきました。
 もう、ワタクシの馬鹿……こんな失態を見せてしまったら、いくらお優しい兄君さまでも、ワタクシをお許しにはならないですわよね……
 でも、兄君さまは、そんなワタクシの頭に手をぽんっと置いて、ワタクシに目線を合わせて、優しくこう仰ってくれたのです。

「ごめんよ、春歌。突然のことで、ボクも驚いちゃって。
 寝ぼけてたんなら、仕方ないよな。でも、次からはちゃんと気をつけてくれよ」

 兄君さま……
 ワタクシがあんな事をしてしまったのに、それを許していただけるなんて、なんてお優しい……
 ワタクシの目からは、先ほどの涙とは違う、感激の涙があふれ出しました。

「兄君さま、ありがとうございますっ ワタクシ、感激ですわっ」




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