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Sister Princess



バレンタインデー


和レンタインデー

by 高津 沙穂




 ドイツでのヴァレンタインデーは、男性が女性に贈り物をする日なのです。
 しかし、ここ日本では、女性が、男性に想いを伝え、贈り物をする日になっています。

 ワタクシ、このことを聞いた時から、ヴァレンタインデーがすごくすごく待ち遠しくなってしまいました。
 この溢れんばかりの兄君さまへの想いを、形に変え、贈ることの出来る……
 あああっ なんて素敵な日なのでしょうっ

 そして、ヴァレンタインデー当日。
 兄君さまに出来立てを食べてもらいたくて、ワタクシは大急ぎで作ることにしました。

 普通、贈る物といえば、チョコレートと相場が決まっているようですが、ワタクシは他の方と差をつけるために、他の物を考えていました。
 それは、おまんじゅう、です。
 ワタクシは、和の物が大好きで、こうしておまんじゅうなども度々作って食べているのです。

 台所に入ったワタクシはまず、昨日買ってしまっておいた箱の中から、ヤマトイモを取りだし、すり鉢で丁寧にすっていきました。
 真っ白なヤマトイモが、どんどんと粘りけのある物に変わっていきます。
 その内、ふわふわとして参りますので、砂糖を少量ずつ加え、今度はすりこぎでなめらかになるようにすっていきます。
 それが滑らかになってきましたら、今度は上用粉を加えます。
 少しずつ加え、どんどん固くなってくれば、生地はひとまず、完成です。

 それを適度な大きさに切って、丸めます。
 平らにつぶしてから、餡をこの中にくるんでいくのです。

 餡は、昨日、小豆からちゃあんと作ったのですよ。兄君さま、市販の餡との違いを、はっきりと感じてくださいましね。

 くるんだものを、少し縦長に変形させ、蒸し器へと入れます。
 この変形が、ワタクシオリジナルのおまんじゅうの一番重要なところなのです。

 蒸し上げるのは十分です。
 きちんと蒸し上がったか確認した後、お皿に上に並べていきます。
 それから、食紅を使って、手前側に二カ所、塗りつぶした丸を描いていきます。
 それをすぐに終わらせた後、今度は熱した鉄串を使い、背中の方を、ちょん、ちょんちょん……

 あついですよね、申し訳ありません……でも、これで完成、ですっ

 ワタクシの目の前には、ウサギさんの姿をしたじょうよまんじゅうがたくさん並んでいます。
 ウフフフフフ……とても可愛いです……
 兄君さまも、見ていただいた際には、可愛いって言っていただけるでしょうか……ポッ

 出来立てのウサギさん達を、箱に詰めて、兄君さまの家へと向かいます。
 気分が浮いていたせいか、いつもより早く、家に着いた気がします。

 インターフォンを押すと、すぐに中から兄君さまが出てきました。
 ワタクシは挨拶をして、ウサギさん達の入った箱を差し出しました。

「これは……何?」

「ヴァレンタインのプレゼントです……暖かい内に食べてくださいね♪」

「うん、ありがとう、春歌」

 兄君さまは微笑み、ワタクシの頭をくしゃっとなでてくださいました。
 ウフフフフ……子供の頃に戻ってしまったような気がしますが、子供の頃に兄君さまのこうしてもらったことがないので、とても新鮮な気分です……ポッ

「では、兄君さま、ワタクシはこの辺で失礼いたしますわ」

「春歌、あがっていかないの?」

「うふふ……もう遅いですし、失礼いたします」

「そっか、じゃあ気をつけて帰れよ」

「はい、さようなら、兄君さま」

 ワタクシが、兄君さまのお誘いを断ったのには、訳があるのです。
 あのウサギさんの一匹に……ワタクシの想いを託したお文を、忍ばせておいたのです。
 とても、今思い返しても恥ずかしいことを書いていたので……目の前で見つかると……ワタクシ、どうにかなってしまいます。
 ですから、大変後ろ髪を引かれる想いをしましたが、帰ることにしました。

 兄君さまがワタクシのお文をみたら、どんな事を想って頂けるでしょうか。
 ワタクシがウサギさん達を作った時に注いでいた兄君さまへの愛を……感じてくれるでしょうか……
 ワタクシ、明日の兄君さまが楽しみで今日は……眠れそうにありませんっ……ポッ




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