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Sentimental Graffiti Short Story



沢渡ほのか ― Long Distance Call ―




by 健太郎



 「じゃあほのか、これ貸してあげるから、がんばってね。」
 沙希は電話ボックスを開けると、ほのかを押し込み、一度も使っていないテレフォンカードを渡した。
 ほのかはテレフォンカードを受け取ると、受話器を取り番号を押す。
何度目かのコールの後、機械的な留守電メッセージが流れてくる。
予想していたことなので、ほのかはそれほどがっかりはしなかったが、やはりとっさに何を言っていいか分からず沙希を振りかえる。
沙希はほのかの肩をしっかりと掴み、「頑張って」と励ます。ほのかはその声に後押しされるようにゆっくりと留守電へのメッセージを話し始めた。
 
「あの・・・沢渡ほのかです。最近会ってないけど、元気?やっぱり北海道は遠いのかな・・・・・
 だってあんまり会いに来てくれないんだもん・・・・・
 たまにでいいから、声だけでも聞かせてね・・・・・・それじゃ、バイバイ・・・・・・」
 
 電話ボックスから出てきたほのかは、いくらか晴れやかになっていた。
「どう?ちゃんと言った?」
 ほのかはうれしそうに頷く。
「よしっ、じゃあ約束どうり次はパセオに付き合ってもらいますか。」
「あ〜沙希〜、待ってぇ〜」
 軽快に走っていく沙希を追って、ほのかもパセオに向かって走っていった。
 
 3日後、ほのかはまた少し塞ぎ込んでいた。原因は留守電をいれたのに、少年が連絡をくれないからだ。
 (ほんとに何やってるんだろう。早く声を聞きたいのに・・・・)
そんなことを思いつつも、ほのかは学校から帰ると電話番をする。これは3日前からの日課だ。
しかし3日間でかかってきた電話は、父親の仕事関係の電話が5回、それきりだ。
 帰宅直後からずっと番をしていたが、11時をまわったので今日は諦めてシャワーでも浴びようとほのかは部屋を出た。
・・・・・・・・・・直後、突然電話が鳴った。
 慌ててほのかは電話の前に立つ。少し息が乱れていたので深呼吸してから受話器を取った。
 「・・はい、沢渡です・・・・・あ・あなたは・・・・・」
 
 ほのかは嬉しさのあまり、自室に駆け込みベットに飛び込んだ。
(うふふっ、あの人がやっと電話をしてくれた!!これも沙希のおかげだ、何かお礼しなくちゃ。)
ほのかは起き上がると今度は鞄から手帳を取り出した。中は予定帳だ。
(来週の日曜は・・・・うふふっ、楽しみだなぁ)
 予定帳の次の日曜日の欄には、赤ペンで「12時大通り」と書きこまれる。
ほのかはその赤字を指でなぞると、うれしそうに微笑んだ。
                    ―終わり―



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