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Sentimental Graffiti Short Story



永倉えみる ― 私のもとへ逢いに来て ―




by 健太郎



 七夕祭りで込み合う仙台駅、えみるはその舎内にいた。昨日選んだ浴衣も決まっている。
えみるは手に持っている巾着から時計を取り出し時間を確認する。
 「ふぅ〜、危なかったりゅん。もう少しできこくしそうだった〜。」
えみるがふとホームのほうを見ると、ちょうど新幹線が到着したところだった。
 「あっ、ちょうどきたみたいだね〜。え〜とぉダーリンはぁ〜。」
背が低いえみるは背伸びをして少年を探す。
 「あ〜っ!だーりんだぁ!」
えみるが少年を見つけて走り出す。が、着慣れない浴衣を着ているせいか、躓いて転んでしまった。
 
 ドシンッ!!バサッ、ミィ〜。
 「ふにゅぅ〜、ころんじゃったよぉ・・・・あれっ、ここは駅じゃないりゅん?」
パジャマ姿のえみるは、きょとんとして周りを見渡す。どこからどう見ても自分の部屋だ。
 「な〜んだ、夢だったのか〜。あ〜んでももう少しでダーリンと会えるところだったのにぃ〜、悔しいりゅん!!・・・あれ?そう言えば時間は?」
布団に埋もれた目覚し時計を見ると、8時50分をさしていた。
 「あー!!遅刻しちゃうりゅ〜ん!!」
えみるはガバッと立ち上がると、急いで洗面所に駆け込んだ。鏡を見ると寝癖が爆発していた。これはそう簡単に直りそうもない。仕方がないので朝シャンをして、寝癖を直し、歯を磨く。この間約40分。次にえみるは台所に駆け込む。台所ではえみるママが朝食の仕度をしていた。
 「あら、おはようえみるちゃん。朝ご飯は?」
 「たべてるひまないりゅん!」
そう言ってえみるは牛乳をコップ一杯飲み干すと自分の部屋に駆け込む。次は着替えだ。
浴衣を羽織って帯を締めようとするが、焦っているせいかなかなかうまくいかない。
 「あ〜んうまくできないよ〜。ママ、ママ〜帯結んで欲しいりゅん!」
 「あらあらえみるちゃん、帯も自分で結べないの?これくらいできないとだめよ。」
 「お説教はいいから早くしてよ〜。」
 「も〜せっかちね、えみるちゃんは。はい、できたわよ。」
 「ありがとうママ。時間は・・・9時5分か。まだ間に合うりゅん!」
えみるはいつも以上に勢い良く飛び出して行った。 
         ―続く―



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