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Sentimental Graffiti Short Story



永倉えみる ― 私のもとへ逢いに来て ―




by 健太郎



9時45分、えみるはようやく仙台駅に着いた。
「ふ〜う何とか遅刻しないですんだりゅん。せっかくダーリンが来てくれるのに遅刻したら悪いもんねぇ〜。」
今日の仙台駅は七夕祭りの初日言うこともあって、特別に混み合っていた。
「ふふ〜ん、早くダーリン来ないかなぁ〜。今日は久しぶりに会うんだから、たぁ〜くさん遊んでもらわなきゃね。」
えみるがソワソワしながら新幹線の改札口を見ていると、不意に声をかけられた。
「えみる!何してんの?」
「えっ?あ〜、留美ちゃん。どうしたりゅん?」
声の主はえみるの一番の仲良しの留美だった。
「こらっ、質問に質問で答えるな。」
「へへっ、ごめんね。えみりゅんねぇ、これからダ〜リンとデートなの。留美ちゃんは?」
「私はね、ただ遊びに来ただけ。いいねぇえみるは、彼氏がいて。」
「ダ〜リンは彼氏じゃなくて、運命の人だりゅん!」
「・・・・どっちも同じじゃないの?」
「ぶ〜ん、ぜんぜん違うよぉ。」
「はいはい、それで待ち合わせの時間はいつなの?」
「9時50分の新幹線で来るりゅん。」
「じゃもう時間じゃない、ほら来たよ。」
ホームを見ると、ちょうど東京からの新幹線が着いたところだった。案の定新幹線は込んでいたらしい。大勢の人が降りてくる。
「ねぇ、いた?」
「・・・留美ちゃん、えみりゅんが背低いの知ってるくせにぃ。」
「ごめんごめん、まぁ彼氏がいるえみるへのひがみって奴ね。で、いた?」
「ううん、見当たらないよ。」
「ま、今日は混んでるからね。その内会えるでしょ。」
「ねぇ、留美ちゃん。ずっとここにいるけど、どっか行くんじゃないの?」
「えっ?行かないよ。えみるの運命の人とやらを見てみたくてね。」
「むぅ〜、留美ちゃんダーリン取っちゃ駄目だからね!」
「はは、そんなことしないよ。」
「でもダーリンすごく優しいから、留美ちゃんの気が変わるってことも・・・」
「だ〜い丈夫だって。・・・それにしても遅いねぇ。時間間違えたんじゃないの?えみるはうっかり屋だから。」
気がつけば、次の新幹線が到着している。
「そ・そんなこと無いりゅん!予定張にもちゃんと書いてあるんだからぁ!」
「じゃあどうしたんだろう?まさか・・・」
「る・留美ちゃん、まさかって何?」
「言いにくいんだけど・・・」
「いいから言って!!」
「彼が忘れてるとか・・・彼は東京に住んでるんでしょ?そっちでもっと大切な用事があったとか。」
「大切な用事って?」
「か・彼女がいたりとかね。私も経験あるから。・・・あの時は辛かった。」
「ダ!ダーリンはそんな人じゃ無いりゅん!!子供の頃から、一度も約束破ったこと無いんだからね!!」
口ではそう言ったが、えみるは何となく不安になって、泣きそうになった。
「あああ!えみる泣かないで。電車が遅れてるってこともあるからさ。」
「でもそれだったら、アナウンスがあるでしょ。」
「それもそっか・・・・あれ、えみる誰か呼んでるよ。」
「えっ?・・・・ダ・ダーリンだ!!」
「へ〜あれが、噂のダーリンか。結構格好いいじゃない。」
「へへへ、そうでしょ?えみりゅんの自慢のダーリンだりゅん。」
「あらら、泣いた鴉がもう笑ってるよ。」
「じゃあ留美ちゃん、えみりゅんもう行くね。」
留美は少年のところへ行こうとするえみるの腕を掴んだ。
「ほらえみる、涙を拭いて。そんなんで行ったら、ダーリンに嫌われるよ。」
「ありがと留美ちゃん。それじゃバイバイりゅ〜ん!!」
走りながら遅れた分をいつも以上のハイテンションで取り戻そうと心に誓うえみるだった。
                   ―終わり―



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