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Original Novel TAKA Presents




・・・その日は

カンカンカンカンカンカン・・・・・・

・・・そうだ、雷だ。

ダッタッタッタッ・・・・・・

・・・雷の如く

ガチャンッ!!

・・・依頼者がやってきた。

「すいませんっ!
 ここって、探偵事務所ですかっ!?」




Mr.Joeにお任せを。


『二件目:家宅捜査』






社長が飛び込んできた客を見るなり立ち上がり
「っ?
 どうしましたっ!?」

「あのっ、あのっ・・・ここって、ここって??」
客はちょっと軽いパニック状態。
私が肩を揺すって落ち着かせよう。

「アンタ、もうちょっと落ち着いて話しなさいよっ。
 落ち着いて・・・落ち着いて・・・。」
ゆっさゆっさ。
「あのっ、あのっ、あのぉぉぉっ!!」



そして不意を突いて
ビンタを一発。

パシンッ

依頼者の左頬がちょっと赤色を帯びる。

「落ち着いた?」
依頼者は怒りと焦りを通り越して完全に冷静を取り戻した。
「あ、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい。」

「CLAIRE・・・・・・結果論で行けばまあいいんですが・・・
 行程が・・・ちょっと・・・。」
まあいいジャン、社長。
そんな苦い顔しないしない♪

・・・

「お嬢さん、一体何がそんなに?」

相当まいってるようだ。
目の下にbear・・・じゃなくて隈が。
ストレスを抱えた・・・OL・・・か。

きっとセクハラ問題に悩んでんのかなぁ・・・。
迫る上司、相談できない友人、触られつづける自分・・・。

「あの・・・誰にも話したりしませんよね?」
「ええ、機密性は重視しますよ。」

「・・・部屋に・・・盗聴器仕掛けられてるみたいなんです。
 電話をしても何しても・・・

 手紙が・・・・手紙に全部書いてあるんですよっ!!」

チッ
違ったか。

・・・って不謹慎だな、自分(笑)。

「それは・・・・・・・・・
 いわゆるストーカー・・・ですか・・・。」
「警察に話すのも恥ずかしいし・・・
 ここなら大丈夫だ、って聞いて・・・。」

社長が膝にとんっ、と両手をついて・・・
「なるほどっ。
 そこまで言われたならば事は焦燥。
 早速、行きましょうか。
 CLAIRE、用具室から盗聴器用の箱を。」
立ち上がり、お出かけだ。
「了解!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



依頼者の家はマンションの10階。
金属製のドアに「1007」とプレートが張ってある。

カチャン・・・

切り込み隊長こと私がノブをひねる。
って、あ、そうだ。
その前に日本人としての礼儀を。
「あっ、あがってもいい・・・?」
「はい、お願いします!」
「じゃ、お邪魔しマース。」

キィッ・・・



まず、玄関を見て思った。
玄関がキレイだ。
靴も派手でなく質素、それでいて華がある。
さすが女の子の家だ、と思わせる。

さて、私の感想はおいといて。
そのまま部屋の方へと向かおうと思ったら・・・

「・・・れ、社長?」



カンカンッ。
社長が玄関のドアを叩く音。
何か調べているらしい。

「お嬢さん、CLAIRE。
 ちょっと待ってて下さい・・・。」

ドアの郵便受けの裏っ側からMade in Japanの精密機器が一つ。



「一つ目です。」「(汗)。」「(汗)。」

おいおい。





青天白日。

盗聴器を外すに絶好の日だ。
この事務所でバイトしていて初めて得をした気がする。
まさか人生のウチにこんな機会に巡り会えるとは。



・・・またテーブルの上に機械が一個、転がる。
「・・・、6つ目、ですか・・・。」
「っていうかぁ・・・・・・うぅぅぅぅぅぅん・・・。」
「ほら、次行きますよ。
 呆れるのも解らないではないですけど
 この部屋には見積もりあと4つはあるみたいですから。」

脚立に乗った社長が・・・どーやら次は天井らしい。
私もそれにならって天を仰ぐ。

「疲れてるんじゃないですよ。
 何でこんなに・・・?」
「解りませんよ。
 んー・・・ただ。
 心ない輩が忍び込んで仕掛けたんでしょう。
 とりあえず今はそれで納得して下さい。」
「あーい・・・・・・。」

とにかく、この部屋からはかなりの数が上がった。
どうなってるんだか。
依頼者は鍵はコピーしてないって言うし。
社長曰く、相手はかなりの凄腕らしい、と。

「まったく・・・
 どこのどいつがこんな事やらかすんだか・・・。」
思わず漏らしてしまう。





PM12:37

ズズズズズズズズズッ。
「あ゛〜・・・。」
今日のお昼は牛丼屋で一杯だ。
並を食べきり・・・もちろん米粒一つ残さないのが主義だ。
そして口を熱い味噌汁で整える。

この一瞬で、午前の疲労がぶっ飛ぶわけだ。
何かニッポンのオヤジっぽいなぁー、私。

「CLAIRE。
 あと2部屋、ありますよ。」
「あ゛ぁ〜・・・どっこいしょ、っと。」

まだ二部屋あるのを忘れてはならない。

ちなみに、午前だけで11個見つかった。
この調子で行くと後10個はありそうだ。



・・・



そして夕日が射す頃。
予想を少し下回り
今テーブルの上に20個の精密機器が並んでいる。
「CLAIRE、問題です。
 この盗聴器はいつ頃からあったでしょうか?」
「・・・・・・半年?」
「まあ近いでしょう。」
機械の上を指でなぞる。
灰色をしたホコリが手にこびりつく。
「輩は、この部屋にかなり前から忍び込んでいた模様です。

 お嬢さん、ちょっと突拍子もないお話ですが
 御引っ越しを考えてみることが先決でしょう。」



・・・帰り道。
「社長、捕まえましょ。」
「?」
豆鉄砲は撃っていない。
「あの盗聴器仕掛けたヤツですよ。」
「CLAIRE、犯人を捜し出すと言っても
 そんな容易いことではありませんよ。
 状況証拠も少なければ」
「じゃ、「紳士」は「淑女を困らせてるヤツはほっとく」んですか?」

社長が一瞬固まった。

「あ、まずいな。」と思った。
さっきのセリフ、冗談で言ったから。

「CLAIRE、明日は空いてますか?」
「えぁっ、そんな、冗談だって、しゃちょぉ〜♪」

そこまで本気で言ってなかったのに。
って言うか、捕まえるなんて言ってみたかっただけなのにぃ〜・・・。

「そうですね・・・
 輩の奸佞にいつまでも踊らされるべきではないですね。」
「社長、・・・・・・。」
言葉が続けられなかった。

目が、イッてたから・・・
・・・・・・・・・・・どーしよー・・・。





「神沢紅亜コントライブショー・・・。
 「ピボット」

 先日ぅ〜ウチのWifeがこう言ったんだ。」
「CLAIRE、人が入りましたよ。」
「あ゛っす・・・・・・。」

作戦はこうだ。
ドアノブに盗聴器を仕掛け
犯人が部屋に入り込んだ瞬間を叩く・・・。
「目には目を、歯には歯を。」
と、いうことだ。

ちなみに社長は隣のアパートから
双眼鏡でこっちを見ている。



決して、私のコントのモノマネ大会ではない・・・。

ちなみに「ピボット」を説明しておこう。
私が最近注目している2人組の芸人だ。
友達の碧(みどり)とライブに行ってからのファンだ。
特に「エセアメリカンジョーク」のネタが好き。
時にブラック、時にシュール、時にウケない。
そこがいい。

私の爺ちゃんがアメリカにいるので
本場のジョークを少しは聞いたことがあるが・・・
本場でもあんなジョークをかますヤツはいない。

まあそれはおいといて・・・



「・・・・・・・・・。
 あい、今のは違いまーす・・・。」
「・・・、いや、もう一人来ましたよ。」
「ん!」
あいにくここからはもう一人を確認できない。
盗聴器から漏れる音が全て。

「・・・・・・カン、カン・・・。」
靴の音だろーか・・・。
「・・・・・・カン、カン、カン・・・・・・。」
どうやら靴の音だ。
さっきから音が遠くなったり近くなっている。



「カン。」
止まったぞ。

「カチャ・・・。」
鍵が、ささった。
社長の予想通り。
ヤツは鍵を盗んでコピーしてたんだ。
そーいや、一瞬で鍵の型を取るのをTVでやってたっけ。



ヤツが扉を開けるとすぐに盗聴器に気がついた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・盗聴器っ!?」
「ハァーハッハッハッハハッ!!
 引っかかったなぁーーーーーー武蔵ぃっ!!」
私が思いっきり部屋の向こうから現れると
犯人のヤツは思いっきり驚きやがった。
思わず私も笑いながら追いかける。
あと何故「武蔵」と口走ったかは謎だ。

「ハァ、ハァッハハハハッ(笑)!!」
「・・・っ、な、なんだこの女!」
笑いっぱなしで追いかける。
今考えれば何で笑いっぱなしだったんだろう・・・?



「ここは、通しませんよ。」
「っ、くそっ、ジジイがっ!」
アパートの出口には社長が待ち受けていた。



キュッ

相手の右腕と襟元をグッ、と掴み

ザッッッ

左足で足下を一気にすくう。

ブォッッッ!!

全身のバネを総動員させて投げると
ヤツの体は空中で一回転し
背中から地面にぶつかる・・・はずだった。



逃がさないためにも手は右手と襟元を掴んだまま。
だからダメージをあまり与えられない。



一言で言うと
社長がヤツの体をいとも簡単に投げ飛ばした。
「スッゲー。」
思わず安直な感想を漏らす。
息一つ切らしていない社長だった。



「・・・・・・。」
犯人は捕まってしまった。
「しゃちょ、ボコってみる?」
「・・・・・・・・・。」
ノーコメント。

ま、さすがにそれは忍びないか。



「CLAIRE。
 「ボコる」って(汗)?」「(汗)。」
知らなかっただけだ。



さておき。
「さて・・・
 どうしてこのようなことを?
 恐らくあの部屋に盗聴器を仕掛けたのは貴方でしょう?」
「・・・・・・。」
「言いなさいよぉー。うりうりぃ〜。」
グーでヤツのほほをぐりぐりする。
が、そんな私のからかいにも何一つ表情を変えない。

犯人は無視を決め込んだ。
何処か遠くに視線を合わせている。

「うーん・・・どうか言ってはくれませんかね?」
社長も困った顔。
「・・・。」
「社長、やっぱ一発なぐ」
「CLAIRE、殴ればいいと言うモノでもありません。」
「じゃ警察に連れてこーよ。
 あんだけ証拠あったら。」
「まあまあ。
 話したくないのなら、いいでしょう。

 一つだけ約束してくれるだけでいいです。

 二度と、女性を苦しませるような振る舞いはやめること。
 それさえ守ってくれればよろしいでしょう。」
「社〜長〜。甘いよ〜。」「CLAIRE。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「約束は・・・してくれませんか?」
「・・・。」

ヤツのあごが下に少し動いた。

「そうですか、ありがとう。」
「しゃ・・・んもー・・・。」

社長がヤツの体を起こす。
「あ、怪我はないですか。
 服もそれほど汚れてはいませんね。」
「・・・・・・・・・。」



私の中で何かがプチッといった。

「アンタ、いい加減にしなさいよっ!!」
「。」「。」
二人とも私の怒号にビビってしまった。

そしてヤツの胸ぐらを掴むような勢いで。
「アンタねぇー。
 最初から腹立ってんのよ。

 好きな女いるんならどーどーと話しなさいよ!
 それが何?
 盗聴器とっかけて
 毎晩毎晩そんなねちっこい生活やってんの?

 日本男児が聞いて呆れるわ!
 「正々堂々」って日本語知ってる?
 ハーフのアタシでも知ってるわよっ!

 それを社長が大目に大目に見てねぇ・・・・・・
 っ・・・・・・アンタねぇぇぇ・・・。」
「CLAIRE、・・・。」
社長が制止しようとしたが・・・



社長も言いたいことがあったのだ。

「CLAIREの言ってることは確かです。
 貴方の態度は・・・非常に紳士的ではない。

 確かに、私がそう言えたほどの人間であるわけでもありませんが



 確かに残念ながらこの世の中
 「人に好まれる性格」の方が非常に都合がよいです。
 本当の自分を押し殺して毎日を過ごす人々も少なくはありません。
 貴方の行為は非常に真実の貴方に忠実だった。

 しかし・・・残念ながらそのような態度で
 お嬢さんがたと仲良くなろうとしても
 何も生まれはしないでしょう。

 ここは、多少折れましょう。
 その方が・・・恐らく貴方の人生においてきっとプラスになる。

 もっと、音楽を聴きましょう。」



・・・・・・・・・・・・・・・



長い沈黙があってようやく出たヤツの言葉は
「わかった。」



それだけ漏らして帰っていった。

「かー、何っ、あの態度ぉっ!?」
「まあまあ。
 一度接触できただけでも無駄ではないですよ。」



これは、もう少し後の話になるが
電車の中でアイツを見かけた。
アイツは社長の言うとおり
ヘッドホンで何か曲を聴いていた。





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