Back/Index/Next
Original Novel TAKA Presents



AnotherStory03


「I will give you all my love ♪」






俺の名前は志野悟志。



とすっ
「・・・・・・。」
「おー・・・。」
見事的に細長い棒が刺さる。



私立皐武(こうぶ)大学一年生経済学部産業経済学科学生・・・・・・なげぇ(汗)。
とりあえず大学生だ。

特技は中学からやってる弓道。
ちょっとした大型新人、ってヤツだ。

「おっ・・・いいねぇ・・・。」
先輩からの信頼も徐々に得つつある。

その中で俺はちょっと気にかかる先輩がいる。

「うん、いいんじゃない?
 でも慢心しちゃダメ。
 会(かい)がまだ甘いわよ。
 心がふらついてるんじゃないの(笑)?」

三年生の「久保智会(くぼ・ちえ)」さんだ。
「4歳の子供がいるんだけど旦那さんが事故死した未亡人。」
ってタイプの女性だ。

まあ詳しく形容すれば
ぼさっとした感じに下ろした髪。
薄化粧だが気品がある。
そんじょそこらのヤツじゃかなわねえ。

か、な、り。
グッと来るタイプだ。



・・・
みのりは同じ学校にいる。
学部は違うが、気軽に俺を訪ねてきてくれている・・・

ただ・・・
俺は3月か4月からか・・・
いや、正直言うと
みのりとキスしてしまってから
なるだけ顔を合わせないようにしている。

罪悪感か何って言うか・・・
語彙が貧困な俺だからだろうか?
何って言ったらいいかわからないが・・・



・・・今はみのりと会いたくない。





「I will give you all my love ♪」





「あっ、さとしぃ〜♪」
「・・・。」
電車の最前列からこの最後列にみのりがやってきた。

「・・・おう。」
随分遅れて俺も返事をする。
でもみのりはニブいから気づかない。

「ねぇねぇ。
 今週の終末、どっかいこぉ?」
「バカ、「週末」だっつの(汗)。

 で、どっか行くとこあんのか?」
視線を夕日に合わせる。
だけどどうしても視界の縁にみのりがチラッと見える。

髪を直すふりをしてみる。
右腕でみのりを見えなくする。
「えっと・・・。」
みのりが何かを取り出したようだ。
「映画館。
 「スペースアクシデンツ」とか
 「C.W.」とか。
 悟志見たいでしょ〜?」
「ばーか。
 俺の好み勝手に決めんなよ・・・。」
と、俺の頬あたりの筋肉がゆるむ。

が、俺の何かが制する。

途端に俺の表情は曇りだした。

何か・・・今さっき
みのりの恋人みたいな雰囲気になってたからだ・・・。

・・・
「ん、で、そっか。
 今週末・・・ん、空いてるな。」
「じゃいこーいこー♪」
みのりはいつも俺の行動に一喜一憂してくれる。
見ていて本当に嬉しくなる。

俺と全くの反比例だ。
「(なんだろな・・・オレ・・・?)」



週末の日曜日。
「・・・ん・・・。」
ぽんっ

俺の気怠い手が目覚ましを叩く。

「(そっか・・・今日はみのりとデート・・・か。)」
「(どうだろ、俺?)」
「(俺はその役割を果たせてるか?)」
「(百歩譲ってもそうじゃないだろ?)」
「(結局ツッコミ入れてるだけで・・・。)」
「(何にもプレゼントなんかしてねーし・・・。)」

「(もう一眠りして・・・考え直すか・・・。)」





フォンッ
11Fのランプが点滅する。
それと同時に人が走ってきた。
冷たいコンクリートの通路が
ゴム製の靴と擦れ合い、この場にちょっと似合わない音を立てる。

「・・・・・・。」
そして1107のドアを開ける。
彼の家では家族がズボラなため鍵はそう掛けない。

「お邪魔しまっすっ!」
どんどんどんどんっ!!

下の階にいる1007の住民のことなんか知ったこっちゃない。



ギッ、と戸を引き
バサッ!、と布団をはがす。

「オイコラボケェッ!!」
「・・・。」
そして一度に三つのドス言葉を突き刺す。



・・・・・・・・・・・・・・・
「祥子。」
見慣れた幼なじみが仁王立ちしていた。
「アンタ何寝ぼけてんのよっ!」
「起こすなよ・・・寝てんのに。」

祥子が分厚いカーテンを引くと
おかしな事に西向きの窓から太陽が閲覧できた。

「どー寝たら3時まで寝坊できんのっ!?」
「寝るくれー・・・いいだろーが。」
「アンタがよくてもこっちはいかないの!」
と、俺に祥子が最近買った買ったと自慢していた・・・

機種はわかんねーが携帯を渡された。



「さとしぃっ!?」
「・・・ぉぅ・・・みのり。
 どした。」
「よかったぁ、なんか家で誰か死んじゃったのかと思ったよっ!」
「ばーか・・・多機能兵器搭載戦車でも殺せねーのばっかしだよ。」
「あ、そうだよねっ♪」
「納得すんなよ。
 んじゃーな。」

ピッ。と通話終了。
ゴッ。と祥子の右ブローが俺の右頬をえぐった。



あまりの威力に・・・

そうだった。
俺いつも祥子殴ってたけど
祥子に殴られたのって幼稚園以来だな・・・。
あの頃から考えると
みんな大人になったよな・・・。

とにかく、久々に殴られたからか
俺は何も口から出なかった。
変に過去を振り返っただけだった。



「あんたねっ!
 1時から2時間、待ってるみのりにそんな言い種ないでしょっ!」

そうだ・・・1時から映画見るつもりだっけ。
ダメんなっちゃったな・・・それ。

祥子がなんだか親みたいなセリフはいて逃げていった。
「みのり優しすぎるよー・・・こんなグータラ・・・

 アンタ、明日みのりに土下座しないとラケットでぶっ殺すわよっ!!
 わかった!!
 帰るよっ!!」

・・・・・・
祥子に殴られた右頬だけが痛みを残していた。
また、さっきと同じ体勢で眠った。



「(みのり・・・オレと別れたいだろーな・・・。)」



翌日。
とりあえず大学には行ったが
それは単位のためで
別にみのりに土下座するわけでなく
別に祥子に殺されて新聞の二面に載るためでもなく・・・

何か・・・オレ・・・当たり前に最低だな。



「志野、君?」
「?」
とにかく早く大学を出ようとしたら誰かが呼んだ。
智会先輩だ。
車で学校に通ってるんだな・・・と、今、知った。

「どう、乗っていく?」
何も反論せず助手席のドアを開けた。



振動が少ない。
小回りもいい。
それでいて人に心地よい広さ。
俺もいつか車を買うならこういうのを買いたい。

「何か・・・オレに用事ッスか?」
「ちょっとしたところかな。
 多分20分くらいで。」

と、そのまま家に呼び入れられた。
なんだか妙に懐かしさを覚える。
なんだかずいぶん前から知ってる家に行くような。
まあきっと先輩の、そう感じさせる雰囲気だろう。



「へっ。」
俺が部屋に入った途端鍵が閉まった。
別に赤外線センサーに触れた、とか
ブービートラップが仕掛けてあった、とか
アーミーチックな理由ではなかった。

単に先輩が掛けただけだった。
ただその先輩の心の動きを考えると
非常に複雑な行動だ。



「最近ストーカー事件多いッスからねぇ。」
「単に入られると恥ずかしいだけよ。」
・・・・・・
「いったい何をたくらんでいらっしゃるので・・・(汗)?」
「男と女が個室でする事って言ったら・・・?」
・・・・・・
「さ、さそって・・・。」
「るんだけど、どうかしたの?」
・・・・・・
「いや?」
「いや、そんなっ」

先輩の吐息が。

先輩が俺を背後から抱きしめる。
そんな、大きな力ではないのに
俺は固まってしまった。

この場合どういう行動をとるべきか?
副隊長に指示を仰ぐか?
それともセーブしておくか?

いかんいかん・・・
昨日のゲームが頭から離れん・・・。

志野悟志、一世一代の危機(あるいは好機?)
この危機を打開すべく、必死で考えついたボケは・・・



「ピボットの監禁部屋ですか?」

あれだ。
今日のトークで一番ヘマしたヤツを
ピボットがダメだしするという、とあるコーナーだ。





「正解♪」
「へ?」

「バッカねぇ・・・アンタ・・・。」
開かないはずの鍵が開いた。
そして俺の情けない顔の写真を一枚。

なぜか鍵を開けて入ってきた幼なじみ久保祥子が・・・
なぜか俺の大学の先輩の久保智会さんの部屋に・・・

・・・

「うそぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!
 まじかよぉぉぉぉぉぉっ!!

 どーして同じ親からこんな違うんだよっ!!」



・・・・・・・・・・・・



「で、なんだよ。
 俺のボケ顔撮りに罠仕込んだのか?」
そう言えば久しぶりにコイツのブービートラップに引っかかってしまった。
現像した写真、ばらまいたりしないことを祈る・・・。



「いや、アンタに聞きたいこともあってさ。

 ・・・ね、気になってたんだけど。

 アンタみのり好きなの?」

「・・・そうじゃないかも知れない。」
「どして?
 たのしそーじゃん。」

やっぱり幼なじみだから話せるのかも知れない。
こんなバカが相手だから話せるのかも知れない。

「好きなのかも知れないしそうじゃないかも知れない。
 みのり見てて好きだな、って思う瞬間はあるけど

 俺のこと考えっと・・・なんかおかしくなんだ。
 このまま俺はみのりのことを好きになっていいのか?って。
 アイツ、ホントに素直だから
 横線入った俺みたいなのでつり合うのかって・・・

 ほら、みのりペースでここまで来ただろ?
 実際俺が振り回されて・・・
 結局俺の気持ちが固まってない・・らしい。



 何か全部曖昧なんだ。
 みのりが・・・友達として好きなのか

 それとも本気で好きなのか。」



「はい。」

祥子が何かを俺の右手に握らせて言った。
「みのりに会ったらその場でこれを使いなさい。
 それまで中身見たらダメだかんね。
 
 ちなみに・・・
 みのりは今大学にいるわ。
 って言うか私が命令した。」
「何でそんなことすんだよ(汗)。」
「選択にリスクは付き物よ。」
「何ロックシンガー取ってんだよ(汗)。」
「とにかく、こっから走っていくこと!
 答えは・・・自分で見つけるもんよ。」
「だから何ヒロイン気取って・・・

 わかったよ、行くよ。」

正直、ツッコミを入れたかったが
何か急がないといけないような気がしたので
そのまま家を出ようとした。
ら。



「ったく・・・
 情けない男のおもりは疲れるっ。

 幼なじみ同士は結ばれるって、誰が言ったんだか・・・。
 二人から想われてるなんて、幸せな男ねぇ。」
「祥子・・・お前。」
俺の胸が一瞬止まりかける。



「ん?

 言ってみたかっただけ(笑)。」
智会さんには悪いが、祥子の胸を止めてから俺は大学へ向かった。



・・・

大学について、みのりの居場所はすぐ見つかった。
中庭でベンチに座ってボケーッと俺を待っていた。
「みのりっ!」

「・・・?
 あ、さとしっ♪」
「待て、立つなっ!」

俺は、自分の思いを制するのを、やめようと思った。
俺はみのりが好きになったんだ、それでいいじゃないか。

「多分、一生で一回の大声で喋る。
 だから立つな。
 そばに来て
 「大きすぎて聞こえなかった。」なんての無しだからな。」
「う・・・うん。」



すぅっ
「みのりぃぃぃっ!!!!!!!!!!!!」「!!」

みのりがビクッと体がふるえる。

「みのり!
 俺はお前のことがすきだっ!!
 お前のことが好きになったんだっ!!!!」
学校中に確実に響く位の大声で叫んだ。
持ちうる最大の力で。

みのりは魂だけ一瞬飛んでしまった。



次はちゃんと近寄って話すことにした。
「みのり・・・ごめんな。
 お前だけ、何か空回りさせて・・・。

 俺、お前に好きだって言われてから
 ずっとお前を勝手に友達にしてた。

 その方が楽だったし、お前の気持ちはぐらかそーとしてた。

 でも、今日からちゃんとやるっ!
 ちゃんと、どっか一緒に出かけようっ!
 ちゃんと、どっかでキスもしようっ!
 俺
 ちゃんとお前のこと好きだって言えるようにするっ!



 俺、今日からお前のこと考える。
 お前が・・・苦労させた分、幸せにするために。」

正直言うとこっぱずかしくて仕方がない。
でも言ったことに後悔はしてない。

「な。」
「さとしぃ。
 私そんなに苦労してないよぉ〜・・・。」
「ばーか。
 俺はお礼は255倍にして返す主義だっつの。」

みのりと出逢ってからの5ヶ月×255=106年と3ヶ月
という式に至るのに気づいたのはもうちょっと後だったが(汗)。

まあとりあえず。

みのりを抱きしめ、その何百分の一の一つを、した。

「っ・・・。」
「どうだ、初めてはレモン味とかって言うけど。」
「セカンドキスだねぇ・・・。」

そうだ。
初めてはみのりが爆睡中に俺がしてしまったんだっけ。
って?

「おい、知ってたのかっ!?」
「普通起きるよぉ〜。
 嬉しかったよ、あの時♪」



と、に、か、く。
俺は、これから・・・こいつのことを幸せにしてやりたいと思う。
そう思ってる。











そうだ。
祥子から渡された物使わねーと・・・。
「みのり、ちょっと離れてくれ。
 祥子から物もらったんだ。」

俺がちょっと汗の吹き出た右手をパーにすると・・・。

恐らく高校2年の2学期。
多分10月くらいの学校の保健の授業で
「感染症とエイズ」だとか
「結婚と家族生活」だとかで
習った物体が一つあった。

祥子のセリフを思い出す。
祥子「みのりに会ったらその場でこれを使いなさい。」



俺はちょっと汗の吹き出た右手をグーにして・・・。

「みのり、祥子ん家今から行くぞ。」
「うん。」



そのまま握りしめた拳で祥子の左頬をえぐった。
あたかも落雷を落とすかのように(爆)。











おまけNG「コンプレックス」

「ちなみに・・・
 みのりは今大学にいるわ。
 って言うか私が命令した。」
「何でそんなことすんだよ(汗)。」
「じゃ、めんどくさいんだったら矢文でも飛ばしたら(笑)?」

・・・突然口が利けなくなる俺。
「・・・・・・

 和弓(弓道用)は・・・
 洋弓(アーチェリー用)より圧倒的に射程距離が短いんだよ(涙)。」
「アンタ・・・そうだったの。」

Back/Top/Next