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Original Novel TAKA Presents



AnotherStory05


「I will give you all my life ♪」






俺の名前は志野悟志。

「智会先輩。」
「悟志君にみのりちゃん。」
「おはようございますっ。」

私立皐武(こうぶ)大学四年生経済学部産っ・・・

わりぃ、舌噛んだ(汗)。



「みのり、座れ。」
「うん。」

俺の大学生活も何だかんだで
卒業寸前。
気楽な生活を実行中だ。

「?
 今日は妙に優しいじゃない。
 ミニマット持ってくるなんて。」

先輩はみのりの席に座布団を敷いたのが気にかかったらしい。
まあ確かに座席はプラスチック製なので冷たいのだが・・・

とりあえず4人して観客席に座る。



・・・

さて。
何を見にこんな寒い中
出かけたのかと言えば・・・

俺の幼馴染み、久保祥子。
ヤツのミスを拝見するためだ。
しかし神というのはここには降り立たなかった。

「15−30」
「祥子ちゃんすごーい♪」

・・・
祥子は持ち前のテニスを活かして
今、結構凄い大会に出てる。

最近の評価としては
「耐久戦になればなるほど潜在能力を発揮。
 「撃たれ強い」、長期戦型選手。」

「撃たれ強い」

・・・俺が・・・鍛えたことになるんだろうか?

とにかく祥子は今、いわゆる「逸材」である。



さて、祥子が次のラウンドに進んだ頃
時間が空いたので智会先輩が聞いてきた。
ちなみに智会先輩は今企業でOLとしてスマートにやってる。

智会先輩が言った。
「どう、卒業できそう?」
「ま、だいじょうぶッスよ。」

「それにしても良かった。」
「?」「?」

・・・
「「学生結婚」って事にならなくて。

 祥子が言ってたんだけど。
 私の考えすぎだったかもね。」
「大丈夫ッスよ、セーフセーフ。」
「そ、セーフ♪」
みのりも俺の調子に合わせる。
「やっぱり考えすぎかな、私・・・。」
先輩が口元に手をあてる。







そして先輩が気づいた。
「「セーフ」(汗)?」
「うんっ♪」
みのりが笑顔で答える。



みのりを単数扱いできなくなって
もうかれこれ1ヶ月ちょっとだ。





「I will give you all my life ♪」





祥子の惜しい決勝を見届けた後
アイツの自慢も聞きたくないので
会場を後にする。

・・・

さて、もう少し歩き続ければ
そろそろ橋にさしかかる。

川幅が結構広く
遠くまで見渡せる。
川に沿って小さな自然も観賞できるし

・・・何より今日は天気がいい。
・・・冷たい風と、白い雲。

いい雰囲気だ。




俺は右ポケに手を突っ込み
左手でみのりを呼ぶ。

「みのり、ちょい止まれ。」
「あっ・・・ごめんっ!!」

俺の意見を無視し
猛ダッシュでファーストフード店へ駆け込む。

俺もそれを追うと
みのりがトイレに駆け込むのが最後に映った。

・・・

「チーズバーガーセット、コーラで。
 あとてりやきバーガー。
 それと烏龍茶、Lサイズで。」
俺はポテトは苦手だ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

俺がてりやきを食べると
やっとこさみのりが戻ってきた。

「ごめん、悟志。」
「ほら、昼飯早かったからさ。食え。」
「あ、うんっ♪」

烏龍茶も飲み、口直し・・・。

そして
みのりは今チーズバーガーをほおばったところ。

口の中が満タンになった時は
喋れなくなるのを狙い

右ポケからブツを取り出しみのりの前に置く。



二つ。



さっきの橋の上用のセリフなら用意してあったが
さすがにマクドナルド用のセリフはない。

みのりは今チーズバーガーのせいで口が開けない。
口をもこもこさせてる。

お互い沈黙が。







「ほら、飲め。」
飲みかけの烏龍茶を勧める。
一も二もなく受け取るみのり。

・・・
そして、口の中が空っぽになったみのりは
一瞬泣きそうな雰囲気を見せたが

「う、ん。
 ありがと、悟志♪」
「おい(汗)・・・とりあえずだけど結婚指輪だぞ?
 安モンだけど。」
「も、物をもらったらありがとだよっ♪

 それよりいいの?
 ゲームたくさん買えたのに・・・
 今月おもしろいのたくさん出るよ?」
「バーカ、そんな心配かよ・・・



俺達に
どうやら「ドラマチック」はあわないらしい。

ちなみに
みのりが「涙流しながら普通に話し続けた」のは忘れないだろう。





その一段落した後、いつも通り
「ゲームセンターにおけるSTGの立場」について
論議し
「やはり地道に逸品を供給していく玄人好みの道を行くべきだ。」
に至ったところで店を出る。

・・・

さて
今日だけはみのりのわがままを聞いて手をつなぐ
帰り道
黄昏にくれる街で
みのりがすっとぼけたことを言った。

・・・
「悟志。」
・・・
「なんだ?」
・・・
「お婿に来てくれるんだねぇ〜・・・。」
・・・
「バカ。
 「嫁」はみのり。
 「婿」は俺だろ?」
しっかり指さし確認。
「うん。
 知ってるよ?」
何かきょとんとした様子。

「ほら、演歌で何かあったろ?
 「お嫁にもらって」どうのこうの、って。」
「えっ、じゃあ家だけ?
 悟志お婿に来てくれるんじゃないの(汗)?」
「・・・(汗)。

 多分お前の勘違いだろ・・・。
 この前砂糖と塩間違えたし・・・。」
「だってあれはぁ〜・・・
 やっぱり似てるよ〜・・・。」
「似てない似てない(笑)。」

・・・



ベッドで上を仰ぐ。

もちろん前述のみのりとの事は家族に伏せてある。
別に反対されることはないだろう。
みのりとウチの家族は非常に波長が合う。
多分結婚式「翌日」に話し出しても反論することはないだろう。



・・・さて。

問題は俺か♪

俺はこーゆーのを待っていた(ニヤリ)。
いわゆる「義父へ報告」と言うようなヤツを。

怒る義父っ!
慌てる義母っ!
飛び交う湯飲みっ!
縮こまるみのりっ!
そして吠える俺っ!

日本で徐々になくなりつつある光景だ。
日本人として生まれたのなら一回は経験したいものだ。

確か・・・
予定では再来週に行く予定だ。

・・・

日曜、あえて髪染めよーかな(爆)。
反感を買うように・・・・・・・・・緑だな。





・・・
結局俺は緑にも金にも染めるほどの度胸はなかった。
とりあえず好印象を与えられるように・・・

こざっぱりした服装、まず基本だ。
ベージュの上着にしっかり洗濯したジーンズ。
奇はてらわない。

髪も床屋でシャンプーだけしてもらった。
ついでに髪もちょっとそろえて、顔も剃ってもらった。

さっきから噛み続けていた口臭消しのガムも紙で包む。

・・・

俺はあまのじゃくだ。



さて。
そうこう思慮飛ばしてると電車は俺をみのりの居る町に届けた。

みのりは家で俺の訪問の準備をすることになってる。
今頃ドタドタ、居間の掃除でもして居るんだろうか。
無理して、体壊さないといいんだが・・・。



何故だろ。

今は・・・、恋人とは違う、そんな絆を感じる。
もっと、かたくて、しっかりとした



歩き続ける道が妙に美しく蒼で映える。

怖くも
嬉しくも
楽しくも
憂鬱でも




いろんな感情がごっちゃになって日本語に出来ない。
なのに

まざってるのに理性的。
こんな気分は知らなかった。




「ばーか。
 ここおまえん家の玄関じゃねーだろーが(笑)。」
みのりがわざわざ出迎えに来た。
「家にいると掃除が出来ないって、お母さんが。」
なるほど。
みのりのボケスキルが発動したわけか。

・・・
そうだ、事前調査。
「な、お前の親父ってどんなの?」
「・・・・・・・・・。

 あっ。」
何だ?
「釣りが苦手。」

そうか。
「そうか、よくわかった。」

特徴を聞くと短所を答えるか、お前は。



さて。
闊歩すること10分。
もう着く頃だが。

「みのり、どれだ?」
「あ、アレだよ。」

アレ。
アレですか、アレ。

うん、まあ普通に二階建て
瓦葺きで雨風に強そうだ。

ぃよっし、じゃ行くかっ!



ピンポーン。

「すいませーん。」
「は〜い。」
眠そうなOLが出てきた。

みのりは一人っ子だ。
姉という線はない。

俺は家を間違えた。



・・・
「みのり、ホントはどれだ?」
「あ、アレだよ。」

みのりが指を指し
ダッシュ。
そのまんま門のインターホンを押す。

ほう。
また。
あの。
その。
いわゆる。

荘厳なお佇まいで。
俺の近所界隈にこんな土地があったなんて。

みのりが門の前で話をしている。
いわゆるセコムだ。



俺は数々の名探偵ほど頭は無いが
今全ての線が点で繋がった。

みのりはボケキャラ。
みのりは兄弟姉妹がいない。
みのりは旅館にタダで行ける。

全ての線が微積、解の公式、判別式無しに
この一点で交わった。

みのり「お婿に来てくれるんだねぇ〜・・・。」



「みのり、お前の方が合ってるぞ。」「?」

門が音を立て、自動的に開く。




・・・
嘘だろ、おいっ!
庭の池に鯉って旧時代の遺産じゃねーのかよっ!?

「志野君だっけ?」
「あ、はい。」
一も十もなく正座して配置に付く。

10畳の和室に
長方形の机。
壁には足利義政の銀閣寺で勉強した「違い棚」。
俺は何にも注文してないのに理想通りだ。

「みのりが、世話になってるようで。」
「・・・っ、すいませんっ!!」
俺の罪悪感が膨張する。
「どうして?」
「っの、みのりにっ・・・子供っ。」
即座に土下座する。
このまま斬り殺されても仕方ないと思ってたのに。



「ああ知ってるよ。みのりから聞いている。」
「悟志焦りすぎだよ。」
お前なんつーことを(汗)。



「いや・・・みのりの言ったとおり、予想通りの人物だね。」
「そんなこと・・・無いです。」

「みのり、母さん。
 ちょっと外してくれないか。」
そして残された俺。



「みのりからよく聞いてるよ。」
「はあ。」
家を出るときの覇気は
なんだか今までのドタバタ劇ですっかり萎えてしまった。

「あの・・・どういう風に?」
「名は志野悟志
 身長は程々
 体重も程々
 頭も中の上。
 性格は古風で昭和を思わせる。
 ちょっと、頑固な面もあるがそこは愛嬌だ。

 特技は中学から続けている弓道
 賞も数々取っている。
 弱点は・・・
 普段はクールを装っているが
 ピンチになると極端に冷静さを無くすこと。
 今はどうだい?」
「ま・・・まだ大丈夫です(汗)。」
「その方が人間らしくていい(笑)。」

「(みのりどこまで言ったんだ?)
 あの、みのりは他には一体?」
「部屋の間取りまでは聞いてるよ。」
「(・・・・・・っ。)」



「非常に、理想的に近い。」「はぁ・・・。」
「上昇志向というのは背伸びで届くところを指すのだよ。

 雲を掴もうと思うと、足下からすくわれるのが常だ。

 正直言うと
 変な蠅が多いんだよ。」
「はぁ・・・。」
俺の口からはもう同じセリフしか出ない。
「何というか、政略結婚を狙っている物だとかなんだとか。

 それに家の娘のことだ。
 これを逃したらもうこんな機会はないかも知れない。

 好機の女神は足が速いという。
 今、チャンスを逃がしたくないわけだ。」



・・・「立て板に水」。
正確な意味は知っているが
そう言うしかないほど話を止めない。
一体いつこの話が終わるのか?

そう思った頃だった。



「・・・・・・・・・。」
途端に話が止まった。



そして、みのりの親父の眼から涙が。
本当は、そんな話をしたかったんじゃなかったんだ。



そして本音の話が始まった。

「・・・。

 中学の頃だ。

 みのりは「階段」を割ったんだよ。」
「はぁっ?」
階段を割ったってどーゆーことだ(汗)。

「階段を踏み外して、落ちてね・・・


 割れたんだ、階段の板が。」
「そんなっ!!」
「あるだろう?
 普通絶対壊れない物が何でもないところで
 あっさり壊れること。

 あの瞬間・・・

 私と妻はもうみのりは一生結婚できないと思った(涙)。」



そうか。
わかった。
わかったぞ。

「あの・・・
 失礼な質問ですけど・・・

 家族親戚、そういう人が多いですか?」
「そうだが・・・。」
やはり。
「俺もそうです。
 俺の親も、姉もそういう人ばっかりです。」
「・・・わかってくれるか・・・(滝涙)。」
「痛いほど、痛切に(滝涙)。」

この後、俺は熱い握手を交わした。
同じ苦労をしてきた人生だからだ。



その後
普段の苦労を肴にお茶を酌み交わし
そして
最後に今後のことについて話し合う。

「ところで、就職とかは決まってるのかな?」
「あ、なんとか、ギリギリで。」

「じゃあ、最後にみのりとのことなんだが。

 一つだけ。
 家に住んで欲しい。」
つまり。
「俺が・・・婿養子に・・・と、いうわけですか?」



今更ながらに確認する。
このまま行くと、俺は「真風(旧姓:志野) 悟志」になるのか。

「悟志、イヤ?」
帰りの道中でみのりが聞いてきた。

正直言うと婿養子という立場が・・・喉に引っかかる。
「ちょっと、時間欲しいな。」
「・・・・・・

 そう・・・。」
「そんな心配すんなよ。
 すぐに答え出すさ。」

・・・

「な。」
「何?」
「就職先にはどーやって説明する?
 「真風」って。」
「えっ♪」
「高校の頃、漢文の授業であったろ?
 「小事のために大事を犠牲にするな。」って。

 お前の一生、丸々面倒見てやっからよ。」
自信だけはあるつもりだぞ。











おまけ「A GIRL」



俺の名前は真風悟志。
・・・何かしっくりこないな(笑)。



と、いうわけでかれこれ一年。

「と、いうわけで」で説明するのは簡単だが
いろんなイベント盛り沢山で
これ以上濃い一年はないと思う。



とりあえず、大方のことは片づいて
みのりと

息子の・・・「叢侍(そうじ)」と
3人で寝てる。



俺はまだ寝てない。
疲れすぎたのか
それとも怖いのか。

怖いのかも知れない。

全部が全部急激にぐるぐる回って。

いや、それなら・・・
別にそれでへこたれるような自分でもないし。



そうか。
やっぱり怖いのかも。

俺の人生・・・。
高校の頃は、なんか・・・たかが知れてて
50まで適当に生きるんだろうな、って思ってたら

突然、コイツが目の前にしゃしゃり出て
見通し良好の人生に濃霧警報が鳴り響いて



怖くて楽しくて人生は良好だ。
明日のことすら予想もできないぞ。


俺頑張っから。
いつまでもボケ飛ばしてくれ。
いつまでも俺を楽しませてくれ。
俺も、いろいろ面白いツッコミ考えて、笑わかせっからさ。





楽しい人生を

一緒に送ろう。

















・・・ゆっさゆっさ・・・
「・・・ん・・・。」
「みのり、みのり。」
「・・・ん・・・・・・なぁに?」
「ちょっと、叢侍が。」
泣いて泣いて仕方がない。
くそー・・・これが俗に言う「夜泣き」ってヤツか?

・・・
「あーんっ、泣かないでよ〜。」
みのりが頑張ってるが
どうも泣きやまない。
そのうちみのりも泣くかも知れない。
「みのり、母さん呼んでくっか?」
「う〜ん・・・。」

ぴんぽーんっ、ぴんぽーんっ!

くそっ、誰だ、こんな真夜中にっ!

「悟志、今こっち見てるから玄関行ってきて。」
「あ。
 わかった。」



ぴんぽーんっ、ぴんぽーんっ!

俺はモニターを見て玄関に飛び出す。



「ヤッホォォォォォォォォォォォォッ♪
 元気してる、この「真風」くんっ!」
「っ・・・てめぇー・・・。」
「いやぁ〜、いいおうちに住んでて(爆)。
 肩身が狭い婿養子さんってとこですか♪」

うっ・・・酒臭ぇ・・・。
完全に酔ってるな・・・

「あっ、お邪魔だったかしら〜?
 ア・タ・シ♪

 あ〜・・・
 今、ハッスル中だったりしてっ♪
 もー二人目?なんて言っちゃったりして!
 ホォッホッホッホッホッ!!」
「おい、俺の顔がしっかと見えるか(汗)。」

なわけないか・・・
目も充血して、泥酔い状態に陥ってる・・・。

「そー、土産とかいろいろ有るんだけど。
 ハムとか、ワインとか。
 あ、そうそう!
 前言ってたメダ」

「うるさいから近所の皆さんのため、死んでくれ。」

ずんっ

久しぶりに、祥子の鳩尾に渾身の一発を叩き込む。
夜の闇に、静かに重い音が沈む・・・
ここで派手に超必殺技を決めてやってもよかったが
ますます近所迷惑になるので止めた。

俺も大人になった、って事だ。



・・・
さて。
電信柱の影に遺体(?)を始末する。
まあ誰か見つけて電話するだろう・・・。
久保祥子だし。



ちゃっかり、土産袋を持って家に入ると・・・

「あ、悟志。」
叢侍が泣きやんで、すーすー寝てた。
「みのり、スゲエな。」
改めて「母」の偉大さを知る。

「そうじゃないよ。

 さっき、急に泣きやんで・・・。」



さすが・・・
俺の血を引いてるだけあってか
邪悪な人間(=祥子)を感知する力があるのか・・・



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