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Original Novel Yuki Presents



歴史の果てに


第1章

歴史の異変



「ねえねえ、ジュースとってよ〜。」
「うわ、また俺の負けじゃねえか!」
「ねえねえ、このしおりの日付間違ってない?」
「ほんとだ、今日11月15日だよな。」

…なにが楽しいんだか
今日は高校の修学旅行
定番のスキー、らしい
俺にはどうでもいいことだが
「ねえ、梓零(しれい)くんは?食べる?」
「…いや、いらない。」
…俺にかまうなって…
「あ、いいのよ。梓零くんって、つきあい悪いから。」
「なーんか、ノリ悪いよね〜。」
「あ、あいつほっときゃいいんだよ。ちょっと運動できるからって、図に乗ってるんだよ。」
「ちょっとつき合いづらいよな〜。」
…聞こえてるって…
「はーい、みなさん。そろそろ消灯しますよ〜。」
付き添いの先生が歩いて回る
まだ、11時だぞ
寝れね−って
「はーい。」
みんな各々に寝る準備にはいる
俺はどこでも寝れるからな…このままでいい…
動くのがめんどくさい
はあ、あと10時間もバスで寝るのか…
かったるいな…
「バスで寝るのって初めてだよな〜。」
「修学旅行楽しみだよね。」
「私、雪初めて見るよ〜。楽しみー。」
「それじゃ、運転手さん、お願いしますね。」
「はい、明日目が覚めるときにはついてると思いますよ。」(島にね…。)
「!?」
…なんだ、今の声…空耳か…?
まあいい…寝よう…


………
…なんか騒がしいな…
「おい!どうなってるんだよ!」
「しらねえよ!ここどこなんだよ!」
「うっく、うっく、ねえ、私達、どうなっちゃうの…?」
…うるせえな…
もう、朝なのか…?
「どうしたんだよ…。」
見てみると三人でなにやら言い合っている
「緋禮(ひらい)…起きたのか…。」
「ああ、どうしたんだ…って。」
どこだここ。バスじゃないのか?…森
「森!?」
なんで、森に…おまけに夜ときた…
「俺たちも目がさめたらさ…こんな状況でよ…。」
なるほど、そりゃパニックにもなるな
…つーか、起こせよ…
「他のやつらは…?」
辺りを見まわすが、日野、斉藤、青葉、俺の四人だけしかいない
加えて、夜の闇が不安を誘う
思うように視界が効かない
やばいな…
そう、直感的に感じた
「分かんないよお…。」
「とりあえず、他のやつを探そう…。」
その時
ズキューーーン!!
「!?」
「なんだ!?」
銃声…?
おいおい、ここは日本じゃないのか?
「行ってみよう!」
「ああ!」
そう言って日野と斉藤が走り出す!
「おい!不用意に動くなって!」
…って、いっちまった…
狙われたら、最後だぞ…
「しゃあない、俺たちも追うぞ。…立てるか?」
「う、うん…。」

「どうした?」
「あ、あの…ええと…。」
腰が抜けちゃったって…言えないよ…
「立てないのか?ほれ。」
そう言って、手を差し出してくれた…
「あ、…ありがとう。」
そして俺達は歩き出した
がさっがさっがさっ…
しばらく歩いたものの、誰一人として見つけることはできない
あいつらどこまで行ったんだ…?
ガサッ!
「!?」
その時突然横の茂みからなにかが飛びだしてきた!
「きゃっ…!!」
それは、血まみれの人間だった…!
「おい!どうした!?」
「痛いよ…助けてよ…」フラッ
倒れこむすんでのところで受け止める
「っと…。」
誰だ…?暗くてよく見えない…
「あ!新谷さん!?新谷さんなの!?」
「知りあいか!?」
「クラスメイトの、新谷さんだよ。おまけに…すごい出血…。」
おいおい、こんなに暗いのに、なんでそんなことわかるんだよ…
「ねえ、新谷さん!大丈夫!?」
「青葉、これ以上しゃべらすな。傷にさわる…。」
「あ、ごめんなさい…。」
「とりあえず、どこかに運ぼう。…1人で歩けるな?」
「あ、うん。大丈夫…。」


「長官。」
「どうしたのかね?」
「UD−01とAS−03が接触しました。」
「ふむ…。ということは、やはり惹かれ合うのか…?」
「それでは監視を続けます。」


それからしばらく歩くと
「あっ、あそこに家があるよ。」
「ああ、とりあえずあそこに運ぶか…。」
相変わらず、この闇夜でも目が効くのか
俺は1メートル先も不安だってのに…
どうにかその廃屋にたどり着くと明かりの確認をする
外に光が漏れると危険だが…この際仕方がない
新谷の手当てもしなければならないし…
俺は手探りで電灯のスイッチを探す
カチッ
ジーー…チカチカチカ、パチッ
電灯は問題なく点灯した
「ふう、電気が通ってるのか…。意外だな。」
何年もほったらかしにされてる…ように見えるが…
それよりも新谷の傷の手当てが先だ
「さてと…。」
「あ、手当てなら私がするよ。」
「ああ、頼む。俺は薬とか探してくる。」
確かに女の子だしな。俺がやるよりも青葉に任せよう
俺は薬になりそうなものを探した
しかし、廃屋の中を見れば見るほど全てが不自然に見えてくる
電気は通ってるし、水も出る
おまけにほこりを被ってはいるものの家具などはほとんど新品に近い
風化しているものが一つとしてない
「誰かが最近建てて、古く見せてるってことか…。」
…いったい誰が?なぜこんなことを?
考えても答えが出るわけではない…
とりあえず、薬になりそうなものと、包帯は見つけたし、いったん戻るか…
「あ、緋禮くん。」
「一応、これだけみつけたぞ。」
「あ、ありがとう。」
「で、新谷のほうは…どうだ?」
「うん…右足が折れてるみたい…。それに、肩に…傷があって、血が止まらないよ…。」
「見せてみ。」
どれどれ…
右足…確かに折れている…それに、これは銃弾の跡…?
肩の傷も…銃弾を受けた跡だな…
「とりあえず、添え木をして、固定しよう。棒探してくる。」
「うん。…えと、止血しないと…。」
ええと、止血剤…あった
「棒、これでいいか?」
「あ、うん、ありがとう。」
新谷さん…大丈夫かな…
「…あれ?」
「どうした?」
…血が止まってる…?
「あ、ううん、なんでもないよ。」
…おかしいなあ。さっきまですごい一杯出てたのに…


「A−5地区の家屋から0.008apと微弱ですが、反応が見られました。」
「この反応は…アスラシャム、AS−03だな。」
「はい、…この元素反応はヒーリングですね。」
「ふむ、時間もないことだ…黒崎を向わせろ。」
「え!?し、しかし…もし殺してしまっては、元も子も…」
「かまわん、どうせUD−01は今回が初実験だ。それに、なにか起こる前に始末せねばならん…。」


「これで大丈夫だよ。」
「そうか。」
…手当ても終わったことだ。そろそろこの現状を把握しておかないと…
「なあ、青葉。」
「なあに…?」
「おまえらが起きたとき、どういう状況だったんだ…?」
「ええと…、緋禮くんと一緒だと思うよ…。」
…起きたら森の中、ってわけか…
「そうか、分かった。」
「役に立てなくてごめんね…。」
「別に、誤ることじゃない。」
青葉はなにも悪くないんだから
って、なにを考えているんだか…
「…。」
「…。」
「私ね、今まで誤解してたよ…。」
「?」
誤解?なにを言ってるんだ?
「私…緋禮くんって、怖い人かと思ってた…。」
「別にいいさ。」
…人との関わりなんていらない。俺は一般人とは違う…
「ねえ、梓零くん、って呼んでいいかな…。」
「ああ、かまわない…。」
人との関わり…そう、俺が持ってはいけないもの…
…なぜだ?なぜそうまでかたくなに否定する?
「って、なにを考えてるんだ、俺は…。」
「どうしたの?」
「いや、なんでもない。」
…こんな状況に置かれてるんだ。おかしくもなるさ…
そう自分に言い聞かせた
まだこの森の中に突然投げ出されてからほんの数時間しかたってないはずなのに…
なにかがおかしい気がする
体の調子が…よくない
まあ当然と言えば当然だろうけど
バンバンバンバン!!!
「!?」
その時、激しく扉を叩く音がした
「きゃっ!!」
「おい!誰かいるのか!」
「誰だ!!」
「俺だ!坂牧だよ!吉田もいる!」
坂牧、吉田…同じクラスのやつか…
「坂牧くんに吉田くん…。よかった、無事だったんだ。」
「ちょっとまってろよ!今空ける。」
…アケルナ!…
「!?」
また…空耳か…
ガチャ
「…ふー、助かったぜ〜。」
「ほんとだぜ。目が覚めたらいきなり森の中だからな〜。びっくりしたぜ。」
こいつらも、ここに運ばれてたのか
たぶん、クラス全員ここにいるんだろうけどな…
「ここはどこだか分かるか?」
「いや、しらねえよ。無我夢中で走ってきたら、家が見えたからさ。」
「そうか…。」
まあみんなこんな状況だろう…
仕方がない、今日はここで泊まりか…
「とりあえず、朝になってから誰かいないか探してみよう。」
そう言って青葉のほうにふり返ったとき
「あっ!!」
!!!
その瞬間、後頭部に激しい痛みを受けた
「っつ…!」ドサッ
…こいつら…なにを…?
「おい!なにか縛るものないか!?」
「ほらよ、吉田。」
「とりあえず、しばっときゃ間違いないからな。」
吉田がロープで俺の手を縛る
「おまえら…なにを…」
「なにって決まってるだろ。こんな場所じゃあ、なにが起こっても事故だからな!」
「こんなチャンス滅多にねえし。」
なにがチャンスだ…!
「気づかなかったのか?俺達なあ、お前のこときらいなんだよ。」
「そうそう、さすがに殺すのは勘弁してやるけどさ。」
…こいつら、今の状況わかってんのか!?
「あのなあ…俺が気に食わないのは結構だが、時と場所、選ぼうぜ…!」
んなこと考えれたら、こんなことしないよな…
「おいおい、そんな格好で、説教するのか!?ざけんなよ!」
ドスッ!ドスッ!
「ぐっ!」
「梓零くん!」
…くそ…両手が自由なら…
「なあ、もうやめようぜ。」
「ああ!?なに言ってんだよ、吉田!」
「俺達には、もっとやることあるだろう…?」
そう言うと吉田が青葉のほうを見る
「…そうだな。」
吉田と坂牧が青葉につかみかかった!
「きゃあ!!」
「おいおい、暴れるんじゃねえよ!」
こいつら…!
「梓零くん!助けて!」
「あいつなら、起きれねえよ!」
「そうそう、、それより楽しもうぜ!」
力で奪うことが、そんなに楽しいか…!
…ニンゲントハ、ショセンコンナモノナノダ…
力で従えさせて、楽しいか…?
…アノトキモ、ソウダ…
なにも知らずにただ、従うだけがいいのか…!
…オロカナ、ジンルイヨ…
…コンドコソ、ヒトリデアルイテミセテクレ…!
「おい…!」
力が、溢れてくる
こんな縄ぐらい…なんでもない!
ブチッ!
「あんだ!動けないんだから、じっとして…」
「お、おい…今、ロープ引きちぎった…?」
ふん、こんなもので俺を止めようなんてな
「し、梓零くん…?」
「なあ、坂牧、吉田。力で制することがそんなに楽しいか…?」
「おい!坂牧!ちゃんとしばったのかよ!?」
「あんだけしばったんだ!抜けれるわけねえだろ!」
「それに、あんな太いロープ…引きちぎるなんて、無理だぜ!?」
吉田と坂牧が信じられないといった顔で俺を見ている
「…楽しいか?」
だったら、望みどおりにしてやろう
「お、おい!?緋禮!?」
俺の姿が一瞬で消えた
次の瞬間、吉田の体をとらえる
「な、なんだ!?」
ザシュッ!!
「ひいい!吉田!!」
赤く濡れた右手を坂牧に向ける
「…力とは、むなしいものだな…。」
「頼む!助けてくれ!!」
「梓零くん!どうしちゃったの!?」
梓零くんは…こんなことする人じゃないよ…
「青葉?なに言ってるんだ…俺は、前からこうだぜ…。」
「違う!本当の梓零くんは…!」
…私、なに言ってるんだろう…
梓零くんのことなんて、全然知らないのに…
「…おい、坂牧。」
「は、はい!!」
「…行け。」
そう言うと、坂牧は家から飛びだした
「…大丈夫か。」
「私は大丈夫…。でも、梓零くん…。」
ぜったい、おかしいよ…
「でも…。」
「なんだ?」
「坂牧くんに、なにもしなかったね。」
「勘違いするなよ…。」
あんなやつは殺すに値しない、ただそれだけだ
「でも、口調が…こわいよ…。」
「そうか…?」
昔から、こんな感じだったようなきがする
そう、ずっと昔から…
「俺は…さっきからなにを考えている…?」
「どうしたの?梓零くん。」
「いや、なんでもない。」
気のせいか…


「…長官!!」
男が監視モニタを見て叫んだ
「どうした。そうぞうしい。」
「それが、UD−01の反応なんですが…。」
「ほう、黒崎がなにかしたのか。」
「いえ、それが…突然反応が出まして…。これがデータです。」
「…30apだと…!?」
「はい、驚くことに、覚醒しておりません…。」
「ばかな!!」
覚醒前にこの数値だと…
「AS−03は放っておけ。UD−01の覚醒に全力をあげろと黒崎に伝えろ。」
「はっ!!」

「いてーよ!助けてくれーー!!」
吉田が暴れる
「おい、もうちょっと静かにしろ!手当てができない!」
まあ俺の責任だから、仕方がないと言えばそれまでだが
信じられないのは、青葉だ
突然襲われたにもかかわらず普段と変わらない態度いで吉田と接している
俺には理解できない…
幸い吉田の腕に問題は無かった
深く切れただけで血はたくさんでているが
ダダダダダダダ!!!!
「きゃあ!」
「なんだ!?」
銃声!?一体、誰が…?
俺は慌てて電気を消す
音の方向からすると…南のほうからか?
「し、梓零くん…。」
消え入りそうな声で青葉が俺を確認する
…震えてる…、怖いのか?
「大丈夫だ。俺がついてる。」
「う、うん…。」
「よし、じゃあ、とりあえず、ここから出よう。」
「おい、俺もつれてってくれよ!」
「…自分で何とかしろ。」
自分に都合の悪い時は"助けてくれ"?
ふざけるなよ
勝手に自分で生き延びてくれ
俺は…青葉を無事に助けてやらないといけないからな
「?」
なんで、こんなことを考えるんだろう?
自分が助かればいいんじゃないか?
結果的に青葉も一緒に助けようとしている、ただそれだけだから
そう、それだけなんだ
そしてその廃屋から、外に出る
とりあえず、回りにけ気配はない…
「よし、行くぞ。」
慎重に家から離れると、二人で走り出す
タッタッタッタッタ…
あれからどのくらい走ったろうか
この森…どこまで続くんだ…?
「はあ、はあ、はあ…。」
「大丈夫か、青葉?」
俺も…もう限界に近い
「ちょっと休むか…?」
青葉に尋ねる
そろそろ疲れただろうし…
「ううん、…大丈夫だよ。」
梓零くん、気をつかってくれてるのかな…
だったら、あんまり心配させないようにしないと…
「ほんとに大丈夫か?」
「うん!平気だよ、ほら、この通り。」
その場で跳ねてみせる青葉
が、
「きゃっ!」
足を滑らしたらしく、転びそうになる
いわんこっちゃない!
「おいおい!大丈夫かよ!」
とっさに支えようとする
ガシッ!
「あ、ごめんなさい!」
ふう、なんとか間に合った…?
ぐらっ
「げ!?」
なんか、踏んだ…?
「うわ!」「きゃあ!」
そのまま青葉と一緒に倒れこんだ
「いててて…。大丈夫か、青葉…?」
「う、うん・・・大丈夫だよ…。」
梓零くんがかばっててくれたから…あ!
目の前に、梓零くんの顔
やっぱり、かっこいいよね…
私…やっぱり…
「あ、あの。梓零くん…。」
ずっと…前から
「なんだ?どっか痛いか?」
あなたのこと…
「私、あなたのことが…好きです…。」
い、言っちゃったよ…!
「…え?」
おいおい、なに言ってんだ…
俺は…人とは関わらないって決めたんだ…
なぜ…そう決めたんだ…?
俺だって…お前のこと、好きなのに…
…コノカナシイキモチハナンダ?…
「…あの、迷惑…だったかな…。」
「いや、そんなことはないぞ!」
な、なに大声になってるんだ!?
「俺も…青葉のこと、好き…だと思う。」
…ズット、ムカシカラ、オマエオコトガ…
「う、うれしいよ…。」
こんな状況だけど、いいよね…
「えへへ…。」
「おい、なんで泣くんだよ。」
「えっとね、うれし涙、だよ…。」
好きな人となら私は、どうなっても…
例え、ここから抜け出せなくても…ね
「じゃあ、俺も泣いたほうがいいのか…?」
「泣くのは、女の子の役目だよ。」
「そうか…?」
うん、でも、梓零くんも、泣いてる気がするよ…
パチパチパチ…
「!?」
拍手!?
「いいシーンみせてもらったよ…こいつはお礼だ!」
…ニゲロ!…
「青葉!逃げるぞ!」
ここにいては危険だ!
なぜだかわからないが、そんな気がする!
「う、うん!」
とっさに身を起こして走り出す
その直後、俺達がいた場所に爆風がまきおこった
「きゃあ!」
「ふせろ、青葉!」
青葉をかばってその場に倒れこんだ
「おい!誰だ!」
くそ…ぜんぜん気配がしない…
「よ、お二人さん。」
そう思った瞬間に、俺の頭にはなにかがつきつけられていた
「とりあえず、立ってもらおうか。下手な真似すると、頭が吹き飛ぶぜ。」
言われた通りに立ちあがると、青葉とそいつの目があう
「え!?う、運転手…さん!?」
う、運転手さん…無事だったんだ…
「そうだ、あのバスの運転手さんですよ〜。」
そいつがおどけて言う
運転手が、俺達に何する気だ…?
「ほ、他のみんなは!?」
運転手さんなら、なにか知ってるかもしれない
みんな、無事だといいけど…
「他のやつらは全員死んだぜ。悪く思うなよ。」
え…?
「まー、大量殺人だけは、したくなかったんだけどな。任務なんで、許してくれよ。」
任務って…それって、運転手さんが、なにかしたってこと…?
な、なんで運転手さんが…?
「そ、そんな簡単に人を殺すなんて、できないよ!嘘でしょ…!ねえ!」
「お、落ち着け、青葉…。」
「そんな!落ち着いてなんて、いられないよ!?」
おまえの気持ちは、よくわかる…
だけど俺は、お前まで失いたくないんだ…!
「頼むから、落ち着いてくれ…!」
「でも…!」
「おい、本部。こちら黒崎、どうぞ。」
"こちら、本部。どうぞ"
言いあっていると、そいつが無線らしきもので話しをはじめた
「どうする?1人でいいのか?どうぞ。」
"UD−01の覚醒を最優先だ。AS−03は始末しろ"
「了解。」
かすかに聞き取れた単語"UD−01、AS−03"
なにかの暗号か?
「ん?なんか、わかってない顔してるな。」
「当然だ!だいたい、俺達がこんなところにいること自体、わかんねーよ!」
「大丈夫、覚醒したら教えてやるさ。」
分けのわからないことを…
だが、そいつは手に持っていたものを捨て、突然後ろに振り向く
チャンス!!
俺はそいつに飛びかかろうと走り出す、が
「…!!」
そこで息を飲んだ
そいつの背中に、一対の翼が、月光に光っていた
一種異様な光景に、ただ魅入っていた
この世のものとは思えないほどの、美しさ
きらきらと輝くそれは、かすかに揺らめいて…
「どうだ!?少しは感じるんじゃないのか?」
青葉は俺にしがみついたまま声も出そうとはしない
俺も、指一つ動かすことができない
だけど、この気持ちの高ぶりはなんだ…
オレにも、昔…こんなモノが…あった…のか?
いや、なにを考えてる?
俺は人間だ、翼など、持ってはいない
俺じゃない記憶を…持ちだすな!
「少し…反応が出てるが…どうするかな。」
俺は、人間だ!
でも、オレは…?
オレは…誰だ!?
「とりあえず、ASは始末しておくか。反応で覚醒するかもしれないしな…。」
シュッ・・・
やつが消えた
考え込んでいたため、反応が一瞬遅れる!
「どこ見てるんだ!?」
「あうっ…!」
青葉が声をあげる
ばかな!あの一瞬で…後ろに!?
ふり返ったその視線の先には
「青葉!?」
やつの手が、青葉の体を貫通している
淡い月光を受けて、きらきらと光る青葉の体…
「血を見て、どうだ?なにか感じるだろう?」
「かはっ…」
私…どうなったの…?
運転手さん…私に、何を、したの…?
胸元を見ると、手が出ている
血も、どくどくと流れてる…
でも、痛く…ないよ…
なんで、かな…
私、死んじゃうんだろうね、きっと…
「どうだ?反応を見せてみろ!」
「あ、青葉!」
梓零くんの声が…聞こえるね
…あなただけでも…逃げて…
ガシッ
「ば、ばかな!あんたまだ動けるのか!?」
青葉が運転手さんの腕を掴む
「梓零くん…逃げて…。」
「ばかなこと言うな!見捨てて逃げれるわけ…」
ううん、いいの、私は、どうなってもいいの
また、会えるといいね
にこっ
「!!」
なぜ、そんな状況で…笑えるんだ…
「ふん、うるさい女だな。これ以上邪魔すんじゃね−よ。」
そうい言い放つとやつは、片手を水平に薙いだ
「実験体のくせに完成体に逆らうんじゃねえよ…。」
私の記憶は…ここで終わりだね…
さようなら、梓零くん…
「きさま…!!」
最後に笑って見せた青葉
その笑顔を、もう見ることはできない
…そんなこと、俺は認めない!!
怒り?悲しみ?そんな言葉でかたずけるのか!?
…ワレト、ヒトツニナレ…
一つになれば、力をくれるのか!?
…ソノグライナラ、オオメニミヨウ…
なにかが俺の中から膨らんでくる…
俺の中の、なにかが
「うおおおおおお!!!!」
…コノホシヲ、スクウタメニ…
…スベテヲ、ヤリナオスタメニ…


…ふむ、黒崎からの連絡が途絶えてから、30分か…
「あとどれくらいかね?」
「は!もうじき島に到着します。」
「うむ。で、"器"はもうできているのか?」
「はい、先ほど完成したと、博士から連絡が。」
「今のところ、150apまで上昇しているが…。」
「一応、理論上は500apまで収めることができるそうです。」
「そうか…。報告ご苦労。一刻も早く島に頼むぞ。」
「は!」
…長い道のりだったが、ここまできたか…
まっていろ…ディベリウス…


…俺は…気を失っていたのか…?
しかもいつのまにか日が昇ってるよ…
…マダ、イシキガアルノカ?…
「誰だ!」
…オレハ、オマエダ…
「なに…!?」
…モウジキ、コノカラダハオレノモノニナル…
「!?」
…レイヲイウゾ、ショウネン…
…コノセカイヲ、ショウキョ、スル…
「まて!まだ話は終わっていない!」
…サラバダ、ショウネン…
!!!
……………………


「長官!」
軍服姿の男が慌てて走ってくる
「見つかったか?」
「はい!やつは、すでに覚醒している模様です!」
「反応を見れば分かる。で、場所は?」
「今こちらに誘導しています。」
…すべてが順調、というわけか
こうもうまく運ぶとは、思わなかったぞ…!
「で、黒崎は?」
「それが、さきほど死体を発見しました。」
やはり力の差が大きかったか
おかげでUD−01は覚醒した…礼を言うぞ、黒崎よ…
「では失礼いたします!」
「うむ、ご苦労。」
あとは、器の到着をまつか
それにしても、刻露をどうするか、だな
…成功の暁には、鉛玉でもプレゼントしてやるか
支配者は、二人もいらぬだろう…?
そのとき一台のヘリが到着する
「長官!器が届きました!」
「よし、持って来い。」
ヘリから降りてきた男が、丸いガラス玉のようなものを持ってくる
「ふむ、これが魂の器、か…。」
美しい…確かに、吸い込まれそうだな
…む?刻露がいないようだが…?
「博士はどうした?」
「それが、研究が残っているらしく、後から来るそうです。」
あいつめ…逃げようと言うのか?
「いいか、すぐに連れて来い。」
「は!?し、しかし…。」
「命令が聞けないというのか!」
「りょ、了解しました!」
ヘリがものすごい勢いで宙に浮かび、消えていった
「ふん、あいつめ…変なところで鋭いからな。」
さて、準備は整った
あとは、UD−01を待つだけだ
さあ来い!我が人形よ!その力を…私に見せてくれ…!
その時、突然森のほうが騒ぎだした
「来たのか!?」
ええい!報告がこないではないか!
「監視班!?どうした!報告はまだか!!」


「ニンゲン…リセットスル…」
…やめろ…
「マダソンザイシテイルノカ、ショウネン」
…そう簡単に、くたばってたまるかよ…
「キミニハ、ワルイコトヲシタトオモッテイル」
…別に、そんなことを恨んじゃいない…
…だが!あんたがしようとしてることは間違ってる!…
「ナニモシラナイクセニ、ズイブントイウモノダナ…」
…あんたになにがあったのかは、俺にはわからない…
…でも、破壊は何も生まない!あんただって、わかってるはずだ!…
「ウルサイ!ダマレ!…オマエニナニガワカル!」
…あんたが作りたかった世界って、こんなもんなのか!?…
…アスラシャムを殺してまで、作りたいものってのはこんなものなのか!!…
アスラシャム?何を言ってるんだ…?
「オマエ…アスラシャムヲ…シッテイルノカ…?」
…わかんねー、自分でもなに言ってるのか…さっぱりだ…
…でも、青葉のためにも、こんなことはしたくないんだ!…
「オマエハ、コノセカイヲドウオモオウ?」
…は?どうって…いいことねーと思うぜ…
「ソウダロウ?タダ、イイナリノママニ、アユムダケノセカイ…」
…でもな、俺は、この…今の世界が好きだ…
「ナニ…?」
青葉とも知りあえたし…
「…ソウカ、オマエハ…」
もっとも青葉は…もう、いないけど
…だから、さ。俺は、この世界を…きらいにはなりたくないんだ…
「…オレガ、オマエニテンセイシタノハ、グウゼンデハナイノカ…」
一つの体に存在している俺とオレ
二つの心が、互いに主張しあう
でも、心のどこかで、安らぎを感じている
オレタチハ…
一つに戻るべきなのか…
「こっちです!長官!!」
突然の声に我に帰る
誰だ?こいつら?
「コイツラ…ドコカデ?」
「おお!…見つけたぞ!アストラディウスよ…!」
背中にはばたく六枚の翼
漆黒の髪に、吸い込まれるような三つの碧眼
これだ、私が何十億年も求めつづけたもの…!
「オマエタチ、アノトキノ…?」
…おい、危ない!…
とっさに男はガラス玉みたいなものを投げつけた!
「ナニ!?」
シュパーーーーーーー!!!
…なんだ、なんだ、なんだ!?…
「…マサカ、コンナモノヲ…!」
オレが動揺してるのがわかる
…俺、死ぬのか?…
「アンシンシロ、オマエハ、タスケテヤル…」
どういうことだ?
俺だけ、助ける…?
俺を消そうとしていたくせに?
それに、ものすごい光が俺をつつんでいる
まぶしいとか、感覚がないぐらい
どうやって…?
「オマエナラ、タクスコトガデキルカモシレナイ」
託す…何を…?
「コノセカイノ、スベテノウンメイヲ…」
…待て待て!何を言ってるんだ!俺に、なにができる!?…
俺なんて、ただの高校生だし、そんな、世界だなんて…
「オマエガ、ウラヤマシイナ…」
…え?
「うらやましい、って…?」
…ヒトヲシンジルコトガデキル、ヒサシクワスレテイタ…
…コレデ、ナニヲスクウトイウノカ…
…オカシイモノダナ…
あんた…寂しかった…のか?
何十もの転生の繰り返し…
そんなことを、延々と…1人で…
…サイゴニ、ヒトノココロヲ、トリモドセタキガスル…
「待ってくれ!まだ、まだ行くな!!」
知りたいことが、山ほどあるんだ!!
俺を1人にしないでくれ!
…大丈夫。お前が思いだそうとしてくれれば、いつかまた、会えるさ…
…お前なら、破壊以外にこの星の未来を築けると、信じているよ…
「!?」
それが、俺が聞いたオレの最後の言葉だった
「あんたが残してくれた命…無駄にはしたくねーんだが…。」
この光…いつまで続く?
俺も…限界だ…


…ついに、死んだか?
というわけでもなく、俺は生きていた
徐々に五感が戻ってくる
まだ体を動かすことはできないが、俺は…生きている
「ふふふ…ついにやったぞ…!」
目の前でさっきの男が笑っている…
「長官!対分子結界の展開が完了しました!」
「うむ、ご苦労。」
長官と呼ばれた男が、俺のほうをまじまじと見ている
「ふふふ、これで、世界は私のものだ…。」
「…なあ、あんた、なに言ってるんだ…?」
それより、今の状況が知りたいんだが…
なんとか生きてるところまではわかったけども
「なに!?」
なぜ、意識があるのだ!?
男が動揺の色を見せる
「ばかな、封心作業は終わってるはず…。」
だんだん感覚が戻ってきた
動けないのは…縛られているからだ
「なあ、俺なんで縛られてるんだ?」
「人間のほうの意思が完全に死んでいないのか…?」
やっぱり、殺す気だったんだな
「くそ…失敗か!?」
「椎田(しいだ)長官。これは失敗ではありませんよ。」
その時、到着したヘリから1人の男が近づいてきた
白衣を身にまとった男
…学者か、医者、ってところか?
「UD−01の封心作業は終わってますよ。」
そう、UDの、封心はね…
椎田長官、あなたは、まだ私の歴史に移行していることに気づかないみたいですね
…好都合ですよ。こいつの意識が死んでないのもね…ククク
「つまり、人間の心を持った天使の出来上がり…と言ったところでしょうか。」
「これはこれは刻露(こくろ)博士。なぜそう言える?」
「こいつは中途半端に体に残っているだけですよ…。」
「それで、どうすれば?」
「つまり、殺してしまえば意思も消えますよ。」
なに!?まてまて!どういう理論だ!
「それでは、肉体も、力もなくなってしまうのではないのか!?」
ここまできて、失敗なのか…?
いや、刻露の計算かもしれん…
「こいつの肉体はすでに天使そのものです。別に、刺したからってどうってことないですよ。」
ここは、刻露の言う事を聞いておこうか…
「おい!冗談じゃねえぞ!!」
刺すって、んなことしたら死ぬだろうが!
それに天使って、なんだよ!ファンタジーか?
「夢か?これって。」
そう思おうとした時
ドスッ!
「うわああ!!」
刻露博士と呼ばれた男が突然ナイフを俺につきたてた!
「ほっときゃ死ぬでしょう、ではまだ実験があるので…。」
そう言うと刻露はきびすを返し、ヘリに乗り込んだ
くそ…いてえ…!
「おい、撤収するぞ。その辺の死体をかたづけておきたまえ。」
「は!了解しました。」
さて、刻露のやつ…どうしてくれようか
UDも手に入ったことだし、もう用済みかな…?
「長官、報告です。」
「うむ、聞かせろ。」
「このクラス全員の死亡が確認されました。」
「なんだって!」
痛いのも忘れて俺は体を動かそうとする
…そんな、ばかな…
全員、死んだだって…?
「別にかまわん。すでに5回目だからな。」
まあ、ここに来るまでに、相当な時間を費やしたからな
一体目で成功するとは…様子見の歴史であったのだが…
こういう歴史もまた、存在すると言うことか
待っていろよ、ディベリウス…
「AS−03はどうします?」
「細胞片だけ集めておけ。次の実験に使う。」
髪の毛一本でもあれば、また再生できる
五大天使全ては無理だが、二体もいれば、十分だ
「は!了解しました!」
その兵士が向こうに走り去ると、俺と椎田長官と呼ばれた男と二人になった
でも、だめだ、意識が…
青葉…俺も、後を追いそうだ…
折角、あいつが助けてくれたのにな…
期待に沿えなくて、すまないな…
「しかし、かわいそうなものだな、なにも知らずに死んでいくとは…。」
椎田長官が俺に向って言う
「そりゃ、いきなりこんなところに連れてこられたら、なにも知らずに死ねるって…。」
「ほう、すばらしい生命力だね…。」
まだ生きているとは…驚きだな
「ならば、教えてやろう。」
君の役目というものを…
「君は、これから世界を、神を滅ぼすのだよ。」
「!?」
「その力は、まさに天からの贈り物…。」
ふふふ、ディベリウスも、さぞかし悔しがっていることだろう!
「もっと嬉しそうにしたらどうだ?世界の支配者が、目の前にいるのだぞ…!」
高らかに笑う椎田
こいつ、狂ってやがる…!
俺に、そんな力があると思うのか?
仮にあったとしても、そんなことに手を貸すとでも?
「そうそう、もう一つ聞いたよ。」
弱点、とでも言うべきかな?
「君は、私に従っていれば、あの女と会うことができるのだぞ?」
なんだと!?
「どういうことだ!…青葉は、もう、死んで…」
「確かにこの時空にはもう存在してはいないだろう…。」
「だったら、どうやって!」
もう、あの笑顔に会うことはできない…
「我々は、時空を超えて生きているのでね。これから先、どこかで会えるかもしれんぞ?」
時空を…超える?
そんなことが可能なのか?
「実際、我々は、この瞬間に立ちあうまでに、20回ほど歴史を飛び越えてきたのだよ。」
そんな話し、信じられると思うのか?
「証拠は!?見せてみろ!」
「すぐにでも、会える。実際見てもらったほうが早いと思うのでな。」
しかし、こう付け加える
「ただ、会うたびに、君が殺すことになるがねぇ…。」
な…!
なんだと…!?俺が、青葉を…殺すだと!?
「永久に愛するものに殺される、という苦痛を味あわせてやるんだな。」
ばかげてる…。そんなこと、するもんか…
「することになるとも!君らは私のシナリオどおりの歴史を繰り返し続けるのだから!」
なにが、シナリオだ!ふざけるなよ…!
「そう、やつの言葉どおり、魂の鎖、というのがふさわしいかな?」
なにが、魂の鎖だ…
青葉を、失うなんて事、俺は絶対に許さない!
「君達は、永遠に私のおもちゃなのだよ!」
魂の鎖…そんなもの、俺が断ち切ってやる!!
「うおおおおおお!!!」
背中が熱い
なにかを、感じる
そう、力だ
「ちい!?暴走か!!」
まずい、こんなところで暴走などされたら…!
「おい!警護班!UD−01が暴走した!止めろ!!」
力が、形を持って、体から飛び出していく
それは、六つの影をはばたかせた
「おまえの言う魂の鎖…断ち切ってやるよ!」
バキバキバキ…!
俺を捕らえていた拘束具が引きちぎれる
このままこいつを殺してもいい
だが、それではなんの解決にもならないだろう
それに、オレに言った言葉が、無駄になっちまう…
"破壊は、何も生みださない!"
「警護班!!こっちだ!なにやってる!!」
椎田が慌てて逃げようとする
「安心しろ…お前は殺さない…。」
こいつの言う歴史
そこには、俺が中心にいる
ならば、するべきことはただ一つ
「…なにをする気だ…?」
椎田がこちらにふり返る
「お前の歴史、ここで終わらせる…!」
不思議と怖くはなかった
昔…聞いたあの声を思い出す…
"ねえ、アスト…私達って、ここにいてはいけないのかな…?"
そうかもしれないな、アスラシャム…
俺達は、いないほうが、よかったのかもな
そうすれば、もっと幸せに歩めたかもな
こんなことは、繰り返してはいけない…!
俺は両手をかざし、光を集める
その光は鋭さをまし、形を変えていく
そして
「やめろおおおお!!!!!」
ドシュウ!!!
俺は自分の胸を貫いた
「私の、人形が…。」
な、なんと言うことだ…
こんな歴史、私は用意していないぞ?
なぜだ?…プライドの高い天使が、自決するとは…!
「ざん、ねん…だったな。」
たぶん、死ぬんだろうな…
こんな悲しい思い出は…捨ててしまおう
ここで終わりだ
俺が死んで…新しい歴史が動くはず
…スベテヲコワシ、フタタビサイセイスル…
…これが、オレの使命なのダカラ…



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