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Original Novel Yuki Presents



歴史の果てに


第2章

鼓動



「なあ、緋禮!新聞見たぜ!!」
「朝からなんだよ〜。俺は眠いんだ…。」
「すごいよ、だってSランクだよ!?」
今日は寝てすごそうと思ったのに、人だかりが…
まあ、Sランク受かったんだ、俺だって正直うれしかったしな
実はこの春休みを利用して、Sランクの進級試験を受けた
なんでも、B+ランクからの3ランクアップは世界で初めてらしく、取材も受けた
…なんか、自慢話みたいだからやめよう
「いや、続けてほしいな、緋禮。」
「…心の会話を読まないでくれ、田中。」
「でもさ、なんでランクなんてつけるようになったんだろうな?」
「いまさら、何を…。」
今時の小学生でも知ってるぞ…
「ぜひ、解説してほしいなあ…。」
田中が期待に満ちた目で俺を見る
おいおい…しょうがないなあ…
近年、モンスターが強くなってきている
これに対応するべく作られたのが、ランク制度だ
まあ、戦士としての、強さの目安みたいなもんだ
「わかったか、田中。」
「ああ、よくわかった…と思うぞ。」
説明ばっかりだな…たぶん、読みにくい上に伝わってないだろうけど
「でもさ、C、B、B+、A、A+、Apro、Sだから、三段飛ばしか。すごいな。」
ちなみに高校2年ならBランクが標準だ
「頑張ればとれるって。」
キーンコーンカーンコーン
「おっと、授業だ。」
「次は…歴史の熊田か!?やべえ!」
歴史の熊田。このクラスの担任にして、けむくじゃら
名前どおりに、熊と呼ばれている
ぴったりすぎて笑えてくるぐらいだ
「やば!あとでまた話し聞かせてくれよな、緋禮!」
「ああ。」
かくして授業が始まった
うーむ、始業の日に授業をする…謎の学校だな
ま、寝てればいいか
今日の日付は…四月九日、よし、俺の出席番号とはほど遠いな
さあて、おやすみ…
「よし、河合、次のところ呼んでくれ。」
「はい。」
ガタッ
「二千年前、人類は「天界」と「冥界」の存在を発見した。」

…それは、人類に天界の叡智を学ばせ、急速に発展させることになった
それと同時に冥界に棲む魔物が地上に現れるようになり、急速に数を減らす結果となった
次元の違う世界で生まれた魔物には、一切の銃火器による攻撃は通用しなかった
そこで銃の変わりに「魔法」と言う強力な武器を手にした…

「皮肉なことに、こういう歴史にでくわすとはな…。」
少々ずれた、という点は否めんな…
それに、天界と冥界を発見した、というのが気に食わん
今までの歴史で、我々しか見つけられなかったものを…
それだけ、天界の秩序も乱れている、ということか
結界の存在を保つこともできないとはな
落ちたものだな、ディベリウスよ
「長官、そろそろ会議の時間です。」
「ああ、すぐに行く。」
…今度こそ、あの人形は私のものだ…
今度こそは狂わせはせんぞ…


「それじゃ、今日の授業はこれでおしまいだ。」
一瞬でクラスにざわめきが起こる
ふわぁ…っと、授業も終わったようだし、起きるかな…
「ええと、みんなに連絡事項がある。」
「先生ー、また草むしりじゃないですよねー?」
わははは…っ
クラス中に笑いがおこる
「安心しろ、いいお知らせだ。」
言っとくが、いままでの「いいお知らせ」は全部肉体労働だったぞ
「明日から、転校生がくるぞ。」
おおーーー
「まじで!?」
みんな口々に話し始める
俺も、転校生って、見るのはじめてだな
でも、新学期早々に転校って、大変だな
「今日は自己紹介だけしてもらう。 …どうぞ、青葉さん。」
ガラッ
「はじめましてみなさん。青葉 雫(しずく)といいます。」
「みんな、仲良くするんだぞ。」
…ここは小学校か
「とりあえず、今日はもう終わるから、席についいててもらえるかな。」
熊田が転校生に向って言う
「はい。」
「そうだな…。」
そう言ってクラスを見渡す
空いてる席を探してるみたいだが…
俺の横しか、空いて無いじゃん
お約束だな…ベタすぎる
「…緋禮の横が空いてるな。青葉さん、二列目の一番後ろに座ってくれるか。」
「はい、わかりました。」
転校生の女の子がぺこりとおじぎすると、こちらに向ってくる
「よし、じゃあホームルームはじめるぞ!」
おいおい、今のHRじゃないのかよ
クラス中ブーイングの嵐
「今のはなんだったんだよ〜?」
「先生、電車に間に合わなくなるよ〜。」
熊田って、こういうことするからな…たまらねー
と、そこに転校生の女の子が席につこうとしている
たしか、青葉さん、っていったっけ
ガタッ
「はじめまして、青葉です。」
「あ、緋禮です。よろしく。」
基本の挨拶を交わし、しばらく熊田の話しを聞いていると
横からの視線に気づく
何見てるのかな…?
「…なあ、俺の顔、なんかついてる?」
なにをじーっと見てるのか…
「あ、ごめんなさい。なんでもないです。」
あうう…ちょっと見すぎたかな…?
でも…あれからまた、六千年もたってるんだから…
今ぐらい、いいよね…?
また、新しい歴史になっちゃったけど
今度はこそは、幸せになれるといいね
「…あのさ、俺達、どっかで会ってない?」
え!?
「ううん、たぶん、初対面…だと思う…けど。」
今まで…こんなことなかったのに…
「ええと…、やっぱり、なにかついてる?」
「あ、ううん。そんなことないよ〜。」
また、違う歴史…
今までどおり、悲しみの繰り返し…?
でも、今度はちょっと違う感じが…する
あの時の、梓零くんの感じがする…
「あ、あのね。」
「ん、なんだ?」
「梓零くんって、呼んでいいかな…?」
「ああ、いいよ。」
って、なんで俺の名前を?
「あ、昨日頑張って、クラスのみんなの名前と顔覚えたんです。」
なるほどね
しかし、まあ大変だな…
というか、すごい記憶力だな
「よし、じゃあ、おしまい!」
ガタガタガタッ
この声を聞いてみんな一斉に立ちあがる
それより、まだHRやってたのか…熊田、おそるべし
そうしている間にも、電車組みが慌てて教室から出ていく
「電車、電車!」
電車組みは大変だな…
ちなみに、この高校は結構有名らしく遠くからも通う人が多いらしい
そのために、学生寮も完備されている
俺は寮暮らしをしてる
まあ、帰る家もないしな…
「俺も、緋禮みたいに寮暮らしにすればよかったよ…。」
「運命と思って諦めるんだな。田中。」
「くそう…覚えとけよ、緋禮!」
さあて、俺は寮だから、ゆっくり帰るか
鞄を持って、帰ろうとすると
「あの、梓零くんって、電車…?」
「いや、寮だけど。」
「あの…よかったら、案内してもらえませんか?いまいち自信がなくて…。」
「ああ、いいよ。」


1人の天使がこちらに走ってくる
「シルバ様、やつらの行動を検知しました。」
そして、下界の動向を、土の大天使、シルバリウスに報告する
ふうむ、もうそんな時期であったか
「うむ、報告ご苦労だった。私からディベリウス様にお伝えしておこう。」
この報告も、何度目になるのか…
あなたの気持ちがよく、分かります
今のディベリウス様は、あの頃とは違ってしまいましたよ
私は、あなたを、今でもお待ちしています…
おっと、こうしてはいられないな
今はあなたとは敵対の身、こんなことを言っていては、怒られますね
ディベリウス様に報告にいかなければ…
そして天閣の門を叩く
「ディベリウス様、彼らが動き出しました。」
「ふむ、今回も性懲りもなく私に逆らう気なのだな。」
あいつら、まだ逆らうのか…
だが、この期待と不安はなんなのだろうか…
「ディベリウス様〜。もういいじゃないですか〜。殺しちゃいましょうよ♪」
風の大天使、セルディストが口をはさむ
「セルディ、口を慎め。」
「も〜、シルバは硬すぎるんだよ!」
今の四人はたしかによくやってはくれている
だが、なにかが…違うのだ
私は…あいつが、うらやましいのだろうか?
いや、私を裏切ったあの五人ども
あのときに分かったであろう、人間の愚かさに
それを…なぜ、かばおうとするのか
「しかし、ディベリウス様、私もセルディの意見に賛成です。」
それまで黙っていた水の大天使デストリアスが進言する
「おーおー、デストも過激だね。」
火の大天使、ティストーラウが遅れてやってきた
「うるさいわねティス。」
しかし、ここまで来たのだ…
私から、折れるわけにはいかない…
「まあ待て。おまえらの気持ちもわからんでもない。」
「だったらさ〜。」
「しかし、旧四大天使が相手なのだ。力が同じ者同士が戦えば、どうなるかわかるであろう。」
「その辺は考えてありますので、ご安心を。」
デストリアスが、私に言う
人間どもがこの天界を発見した今、私が表立って動くのもまずいだろう
「そうか、ならば今回のことはおまえ達に一任しよう。」
「は!了解いたしました。」
「裏切り者には死を〜♪」
「セルディ、女の子が言うセリフじゃねーぞ。」
「ティスだって、そろそろ溜まってるんじゃないの?」
「おい、ディベリウス様に失礼だ。さっさと行くぞ。」
「は〜い。」「はいよ〜。」
バタン
さて、今回も、私の歴史どうりに進んでいる…
アストラディウスよ…どう、打ち破る?
お前の言う、信じる力とやらで、打ち砕いてくれ
仲間に…裏切られるのはもう嫌であろう?
「さて、デスト、どうする気だ?」
ああは言ったものの、どうするというのか?
あの方は…想像を超えているぞ
「簡単なことよ。囚人の誰かをぶつけて、さっさと殺してしまえばいい。」
「でもよ、そんなことしたら、なんたら協約に違反するんじゃあ…?」
「その囚人は勝手に脱走し堕天化後、人間を襲うのよ。私達天界には迷惑はかからないわ。」
確かに、それなら我々天界や、ディベリウス様に迷惑はかからない、が…
「しかし、二枚では大天使の足元にも及ばんぞ。」
いくら覚醒前とはいえ、難しい話ではある
それに、旧四大天使も…たぶん、近くに潜んでいるはず
「ん?私も殺せるなんて思ってないわ…。」
「じゃあ、どうするつもりだ?」
「そうね…早く覚醒してほしい、からかしら…。」
なんだと!?
「おい、デスト…言ってることが分かってるのか?」
ふふふ、もちろん、計算していってるのよ…
「当然でしょ。いっつも、あの娘に殺させるんですもの…。」
つまらないじゃない?
そう、人間なんて殺してもつまらないでしょ…


「ん…?」
体育が終わって、教室に戻る途中のこと
「どうした、緋禮?」
「いや、ちょっとな。」
なんだろう、今の、胸騒ぎ…
なんでもないはずなのに、なにか引っかかる
「さてと、さっさと着替えようぜ、熊田のやつ、早いからな。」
「ああ、そうだな。」
体育といっても、運動ではなくモンスターとの戦闘をシュミレートする、模擬戦闘だ
これがなかなかつかれるし、攻撃を受ければ傷もできる
まさに命がけの体育なのだ
「…なにしゃべってるんだ?」
「舞台設定についてちょっとな。」

「ふー、間に合ったな。」
「おつかれさまー。」
「ああ、青葉もお疲れ。」
「前の学校よりモンスターの思考能力が高くて、ちょっとてまどっちゃったよ。」
「一応進学校らしいからな。他のところより強めに設定してあるんだってさ。」
キーンコーンカーンコーン
おっと、チャイムだ
疲れてるときの歴史ほど、眠くなるよな…
と、
「…?」
なにか違和感を感じた
空の、向こう…?
じーっと窓の外を眺めてる、と青葉が
「なにしてるの?」
「いや、なんか外に気配を感じてさ…。」
「え!?」
うそ…全然きづかなかった…
「あの、梓零くん。それって、いつごろから?」
「ああ、ちょっと前だけど。」
…わからない。私もまだ感じ取れてないのに…
私より、感覚が優れてるなんて…
「…どうした?」
「ううん、なんでもないよ。」
…俺、へんなこと言ったかな?
「!!!」
突き刺さるような冷たい意識
…これは、殺意だ…!
「どこだ!?」
教室、廊下、校舎の中…
…外!
そう思った瞬間
「みんな!窓から離れろ!!」
外から膨れ上がるような力の気配を感じ思わず叫ぶ
が、間に合わない!!
「くそっ!」
とっさに守護結界を展開する!!
バリーーン!!!
「きゃあ!!」
「うわあああ!!!」
「なになになに!?」
外から飛んできた光の玉が守護結界と激しく衝突した
その衝撃で窓ガラスが割れたのだ
「くそ!なんて重い攻撃だ…!」
俺の結界も限界だった
が、ぎりぎりのところで光球は威力を失い、消滅した
「はあはあはあ…。」
助かったのか…?
「梓零くん!大丈夫!?」
青葉がかけよってくる
「ああ、なんとかな。」
しかしまだ気配は消えていない
この、冷たい空気は…なんなんだ?
人間が…こんなにも冷たい空気を発することが出きるのか?
「どこだ!?」
辺りを見まわす、が
「ここだ。」
!?
いつのまにか俺の体は廊下の壁に激突していた
「ぐはっ!」
なにが起こったのかまったく理解できない
ただ目の前に写ったのは、二枚の翼
「死ね。」
そいつが言い放つ
ああ、もう動けない…好きにしてくれ…
「って、派手にやってるねー。」
「ほんま、ガラスは飛び散ってるし、もうちょい加減てものをせんとな〜。」
誰かが、二人こっちに向ってくる
くるな、逃げろ…
声にならない声で叫ぶ
「あんた、デストの部下だね。」
「なぜ、それを!?」
「古い友人なんや。」
…デスト?友人?なに言って…
「今傷なおしたるさかい、ちょっとまってな。」
ぽわぁーー
あたたかい光が俺を包む…
「痛く…なくなった。」
「あんたもたいした生命力しとるなあ〜。さすがは、大天使長やな。」
「こら、話してる場合じゃないよ、ワドラ。」
「ん、でもそないなやつ、1人で大丈夫やろ。」
「まあね。」
…こいつら、何者?
痛みがなくなったにもかかわらず、その場から動けない俺
むう、なんか情けないぞ…
「ほんまに丈夫やな、あんた。」
1人の女の子が話しかけてくる
確か、ワドラって呼ばれてたっけ?
…ハーフ?
「ああ、ありがとうな…。助かったよ。」
すっかり和みムードのところに
「ふざけるなああ!!!!」
やつが目の前に!
「げ!?」
しかし、次の瞬間にはやつは廊下の突きあたりまでふっ飛んでいた
「…なんだ?」
瞬間移動したとしか思えない速さで廊下のつき辺りまでそいつが吹き飛ぶ
「ミスティ〜、そろそろきりつけや〜。」
そうワドラと呼ばれた女の子がどこかに向かって言う
「わかってるよ。」
どこからとも分からない場所から声がする
ミスティ…とか呼ばれてた女の子か?
その直後、やつが崩れ落ちるのが見える
「終わったな〜。」
終わった…のはいいけど、えらいことに…
「どうするんだ、これ…。」
一面にはドアと、ガラスの破片が飛び散っている…
それに、クラスのみんなも心配だし…
「大丈夫よ。」
いつのまにか目の前に、さっきの女の子が
ミスティと呼ばれた女の子が、言う
「ええと、どの辺が大丈夫なんだ…?」
「全部、よ、梓零くん…。」
「え!?」
ふり返ると、青葉が…
「青葉!大丈夫か!?クラスのみんなは…?」
「見てもらったほうが早いかもね…。」
そう青葉に言われて教室に入ると…
「え!?」
俺は言葉をのんだ
クラス全員が…止まっている
そう、時が止まっているかのように
「時間は止まってはいないわ。ただ、こういう空間を創っただけよ。」
「空間…、って、いったいこれはなんなんだよ…!」
もう、むちゃくちゃだ
人間を守るはずの天使には襲われるし…
分けわかんね−よ…
「まま、とりあえず、自己紹介でもしとこか?」
「そうだね…。私はアスラシャム。水の天使よ…。」
そうだな、名前が分からないとなんとも
って…なんだって?
「はい?青葉…何を言ってるんだ?」
今…天使、って言ったのか…?
「私は、天使なの。二人と同じように…。」
そういうと、背中に四枚の翼がはばたいた
「だまってて、ごめんなさい…。」
いや、謝られても
「別に、いいって…。突然そんなこと言われても、信じなかっただろうし。」
あまりにも、非現実すぎて、ちょっとな…
今でも…信じられねえし…
「私が、ミスティリウス。風の天使ね。よろしく。」
「ああ、よろしく。」
「うちが、ワドラスト、土の天使や。よろしゅう。」
…なんで、関西弁?
「人間名は、渡辺…って、聞いとる?うちの話し。」
…天使の関西弁か…ある意味、新鮮だ
「なんか、すごーく、失礼なこと考えてへん?」
「いや、そんなことないぞ。ええと、…橋本さん?」
「違うわ!あんた、大事な話してんのに、聞いとかんかい!」
おおう、なんか、怒られてるし
「まてまて、なぜに俺が怒られる?ええと、堺さん?」
「いっぺん、死んでみるか…?」
そう言うと光が剣のように形を作る
おいおい、ほんとに殺すきか…!
「わりい、ちゃんと聞いてたって…渡辺さん?」
「あんたなあ…もうちっと、緊張感ていうもんを持ちな…。」
なんかあきれかえってるぞ…
緊張感って言っても、突然のことでなにがなんだか
「…場を和まそうと思ったんだが。失敗か?青葉…。」
「わ、私にふらないでよぉ…。」
突然ふられた青葉が、困惑する
ちょっと、やりすぎたかな…
「ふふふ…。」
と、今まで黙っていたミスティが笑い出した
…受けた?
「ごめんなさい…でも、おかしくって…。」
ほんとに…ひさしぶりね、こんなに楽しいのは…
少しだけ、あの頃に戻ったみたいで…
「さて、じゃあきりのいいところで本題に入りましょうか。」
でも、これだけは避けては通れないのね
早く…会いたい…
ね、アスト…
「そそ、全部教えたるわ。あんたのことも、この世界のことも。」
うちかて、本当は教えたくないけど…
でも…これもアストはんが望んだことなんやから…



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