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Original Novel Yuki Presents



歴史の果てに


第3章

過去



「…私がするべきことは、なんなのだろうか…?」
私は悩んでいた
いつのまにか、ここにいて、ただ目的もなく、時が流れていく
私は、なにをすべきか
…そうだ、この力を使い、試してみてはどうか
突然、ただ目的もなく、生を受けたモノはどうなるのか
私はそれが知りたい
そう、この不思議な力で、なんとかなるだろう
「まずは…器からだな…。」
誰に言うでもなく、ただつぶやく
思考錯誤のすえ、丸い器は完成した
これに、私と同じようなモノを置いてみるとしよう
この不思議な力は…与えるべきなのだろうか?
私と同じ条件でなければ結果は得られないだろう
私は与えてみることにした
しかし、結果は失敗であった
「ううむ…失敗か…。」
まさか、この力を使い、私に攻撃するとは…
下等生物のくせに、生意気な…!
「よし、次は…。」
力は与えない、そして、酸素という鎖を作ってはどうだ?
それに、食料、重力…これだけそろえば、逆らうこともできまい…
そして、この丸い玉だが…
食料を育てるのに、土を使うようにしよう
大地の玉か、…よし
「地球だ、地球と名づけよう。」
この地球に住むモノ…便宜上にも名前を決めなければ
「ヒトという類…そう、人類だ。」
さらにそれを細かく分け、人間という種、それをとりまく環境…
構想は、完璧だ…
しかし、私1人でこの作業が完成できるだろうか?
時間はある、しかし…
「私は、この人類が、どういう道を歩むか、早く結果が知りたいのだ…!」
そして、私は忠実な部下を創った
四大元素をつかさどる、ミスティリス、ワドラスト、キュスティ、アスラシャム
そして、その大天使を統べる天使長、アストラディウス

その後、私と五人の天使は力をあわせ、地球に生命を宿した
私は「大地の記憶」として、基礎となるべき生命誕生から45億年分の歴史を地球に記した
「ふう…。」
コト…
ペンを置く
45億年分の記憶、それは膨大な量だ…
私1人では、成し得なかっただろうな
コンコン
「ディベリウス様、よろしいですか?」
「うむ、丁度一息ついたところだ。」
ガチャ
そう答えると、アストラディウスが入ってきた
私の補佐をするため、アストラディウスは私のように「時読み」ができる
おかげで、作業のほうもはかどっている
私にはもったいないくらいの部下だな…
「ディベリウス様、全ての作業が完了いたしました。」
「うむ、そうか。ご苦労様。」
「いえ、お礼を言われるようなことは…。私はディベリウス様が喜んでいただければ…。」

こうして最初に生まれた人類は3000年もの間繁栄した
神は最初の人類誕生から途方もない間、見守りつづけた
「…順調ですね、ディベリウス様。」
「うむ、そうだな。」
本当に、嬉しそうですね
あなたは…幾星辰の時をお一人で…
私は、あなたに一生ついていきますから
それから40億年後、次の生命の誕生
これを地球は、人類は、永久に繰り返していった

「アストー!」
「ああ、どうした?」
アスラシャムが走ってくる
「うわっ!」
そのままの勢いで抱きついてくる
ドサッ!
「いてて…こら、アス!」
勢いでその場に倒れこむ
まったく…子供なんだから…
「だって、ずっと帰ってこれなかったんだもん。」
そう言うとぶーっとふくれてみせる
まあ、これがかわいいところなんだけど
「あ、なんか赤くなってるよ〜。」
「な、なんでもないよ。」
やばいやばい、いつの間にか顔に出てたみたいだ
「さてと、ディベリウス様に報告にいかないとな?」
「え〜、アストと遊びたい〜。」
「しばらくは休みだし、あとでいくらでも遊んであげるよ。」
「うん、約束だよ!」
ああ、約束だ
これが終わったら、どこに行こうか
しかし…
そのとき異変は起こった
「ディベリウス様!緊急収集とは!?」
いったい、何事が?
「見よ、アストラディウスよ…。」
そこには、人類が天界に昇ってくる様子が映し出されていた
そう、人類が天界を見つけてしまったのだ…
「ディベリウス様!今すぐ排除しましょう!」
「いかん!それだけは…ならん!」
「ディベリウス様…。」
あなたは、そんなにも彼らのことを…
「わかりました。私達はディベリウス様に従います。」
「…すまんな、わがままを言ってしまって…。」
そして、人類は天界に攻め込んだ
「ディベリウス様、すでに結界第二方が破られました。…ここも危険です。」
「そうか、分かった。」
「少しは、こちらからも仕掛けるべきではありませんか?」
「ならん!…彼らは、私達の存在に、恐怖を覚えているのだろう。」
誰でも、自分の知らないものを見れば、恐怖する
当然のことだ、ならば私がすることは…
「よし、行くぞ。」
「は?どちらへ?」
「人間たちに、姿を見せてやろう。我々は、味方なのだと。」
天界はひどいありさまだった
全ては破壊され、何人かの天使が捕らえられていた
その場に歩いていこうとするディベリウス様
この光景を見てどう思われるのだろうか…
そして、全ては、ここから狂いだした

「ディベリウス様!ここは危険です!」
日に日に人間の攻撃は激化していった
すでに天界は70%も機能を停止していた
もはやこの天閣の間も、危ない
「しかし、彼らは知らないだけなのだ。無知のものを殺すことは…!」
ディベリウス様、そこまで…しかし、もうそんなことを言っている場合では…!
バタン!!
「大変です!ディベリウス様!!」
その時キュスティが飛びこんできた
「どうした、そうぞうしいぞ。」
「人間の代表者が…ディベリウス様に会いたいと…、申しておりますが…。」
人間の代表者…?
ここまでしておいて、いまさら話し合いだと…?
一体、何を話すつもりなのか
だが、胸騒ぎがする…
「ディベリウス様、いかがなさいますか?」
「アスト、お主はどう思う?」
「たぶん、罠かと…。」
おそらくは、罠に違いない
ここまで破壊しておいて、いまさら和解話を持ちかけるとは思えない…
「まあ、それも一興。行ってやろうではないか。」
そう言うと、人間たちが待つ天楼の間に向う
そして
「これはこれは、人間の諸君。何か用ですかな?」
人間の代表、名は椎田と言った
「あなたが、神ですかな?」
椎田はこちらを観察するように眺めている
今のところ怪しい気配はないが…
「神であるあなたにお願があるのですが、聞いていただけますかな?」
「うむ、私に出きることであれば、だがな。」
その瞬間、椎田に殺気が満ちる!
「ディベリウス様!危険で…」
言い終わる前に椎田がこちらに何かを投げつける!
シュパーーー!!
く!なんだ、この光は!?
ディベリウス様…!!
「ふはは、やったぞ!!」
光の中、椎田の声が聞こえる
「どうです?僕の研究は?」
もう一人…いる
誰だ…光に邪魔されてはっきりと捕らえることができない
「神という人形を手にできるのだ、感謝するよ、博士。」
そう聞こえた時、光が収まっていく
ディベリウス様は!?
光が消えた時、そこには、一人の、神が、威光を捨て、獣と化していた
…なにが、起きたのだ?
「…下等生物の分際で、私に、逆らう気か!!!」
ディベリウス様が、力を開放する
いや、これはもはや、ディベリウス様ではない
猛り狂うその姿は、まさに、鬼神の如し
そして、その人類を一瞬で消し去った
それから、何回目の人類誕生…
もはや、そこには昔のディベリウス様の影はなかった
力で全てを押さえつける
気に食わない歴史は、全て滅ぼしていく
そのため長くても、2000年程度しか歴史は続かなかった…
「ねえ、アスト…。」
アスラシャムが話しかけてくる
「ディべリス様、どうしちゃったんだろうね…。」
「そうだな…。」
あれ以来、変わってしまった…
私は、今の人間たちが不敏でならない
生まれる時から、死ぬ時まで、決められた道筋しか歩めない
これを、生物と呼べるのか?
どうあがいても、運命には逆らえない
これでは、家畜と同じではないのか…
しかし、あの方の心の痛みも、分からないではない
あの時、何が起こったのかは分からないが…
信じるものに裏切られたのだ
私でも、こうしてしまうのかもしれない

こうして進言することができぬまま、またいくつもの人類が誕生していった
そんな最中
地球を監視に行っていたアスラシャムが、偶然、飛行機と接触
地上に落下し、捕らえられたという報告が入った…
「なぜです!なぜ、救助に行ってはならないのです!」
神が出した結論は、こうだった
天界の機密を守るのが第一である
そのためにも、こちらからは一切、地球とは関わらないこと、だった
つまり、アスラシャムを見殺しにする、ということだった…
「アスラシャムは、あなたの言いつけで、地球を見まわりに行ったんです!」
それなのに、なぜ…?
「自分で蒔いた種だろう。放っておけ。」
なぜ…?
今までのあなたは、そんなことをを言う人ではなかったはず
やさしく、すべてを包んでくれる…
そんな、あなたを、私は尊敬していたのに…
あなたは…
「ディベリウス様…、いや!」
なぜ、そこまで
「ディベリウス!あんたのしていることは、間違っている!」
変わってしまったのですか…?
「貴様、私に向って、何を言うか!」
「あなたは今、自分のために、歴史を動かしている!そんなことが許されるのか!?」
「私は、神だ!この空間のものは、私のものだぞ!!」
ディベリウスがしていることは、子供がすねていたずらしているのと同じだ
自分の保身のための歴史
そんなものは、歴史とは呼べない…
「俺は、仲間を見捨ててまで、天界を守ろうとは思わない…!」
「自分の不注意から生まれたものだ、自業自得であろう!」
「なら、俺は自分の力でアスラシャムを助けに行く。」
それだけ言うと、天界を後にした

「くそ…アスラシャム、どこにいる…!」
無用な殺戮は避けたい
なるべく接触しないように姿を消してアスラシャムを探す
すこしでもいい…!反応を、見せてくれ
こうしてもう何ヶ月も過ぎようとしていた、その時
「…!これは!?」
初めて見た地上
そこには、ディベリウスの像が建てられていた
そう、ディベリウスは、俺を探すためだけに自ら地上に降りた
そして人類を支配し、俺を見つけ次第殺せ、と命令していた
あちこちで、天使に有効な反物質誘導装置が取り付けられていた
全ての原子を、反転させる物質
さらに、俺をおびき寄せるために、アスラシャムの公開処刑を行う、と世界に通告した
「そこまで、するのか…ディベリウスよ!」
俺は、もう迷わない
あなたは、私の敵であり、倒すべき存在だ
どんな罠があろうとも、俺はアスラシャムを助けてみせる
そして、その時がやってきた
海の中心につくられた小さな島
ここにアスラシャムは捕らえられていた
「…汝、水の大天使よ。」
「…はい。」
さっきから延々とこればっかり…
なにがしたいの?
ずーっとこの繰り返し
ここにいるヒト達、空を警戒してる…
なにを、探してるんだろう
ディベリウス様はここにいろって言うだけだし…
ちょっと、退屈かな
「アスラシャムーー!!」
「え!?」
ものすごい勢いで、アストが…
なんで?
地上には、降りちゃだめなんじゃないの?
「大丈夫か!アスラシャム!」
「…あの、アスト?なに言ってるの?」
これって、訓練だって、言ってたよね、ディベリウス様…
「きたぞ!!攻撃準備!!」
人間たちが叫ぶ
え!ちょっと待って、攻撃ってなに?
「ねえ、アスト!どういうこと?」
「ディベリウスは、お前を殺そうとしたんだぞ!!」
うそ…!
「冗談、だよね…?」
おもわず笑みがこぼれる
だって、そんなこと、冗談以外に考えられないよ…
「とりあえず、説明は後だ!!」
う、動けないよ…
あの方が、私達を…裏切るなんて
こんなに、信じあってるんだよ!?
「アスト…あなたこそ、変よ!?」
「頼む、俺を信じてくれ!」
あの方は…絶対だもの…
「充填完了しました!!」
「よし、反物質砲、発射!!」
…くそ!このままじゃ、まずい…
「頼む、アスラシャム!くるんだ!!」
あれが発射される前になんとかしないと!
「アスラシャム、気づいているだろう?反物質砲を、俺達に向けているんだ!!」
「分かってるけど…だめ、動けないの…。」
頭で理解していても、体がいうことをきかない
そう、目で訴えるアスラシャム
そこまで、俺達のあの方への信頼は深かった
俺だって、できれば…夢であってほしい
だが、容赦なくそれが、放たれる
「うわああ!!!」
反物質が、俺の体を切り裂こうとする
だめだ、貫通されるわけには…!
せめて、アスラシャムだけでも…
「アスラシャム、頼むから、逃げてくれ…。俺の体が、実態を持っている間に…!」
「そんなこと、できないよ!」
「いいんだ、俺は、お前が無事なら、それで、いいんだ。」
翼が分解し始める
もう、長くは持たないな
「さあ!行け!!」
「いや!私も、一緒に…」
「俺、お前のことが、ずっと好きだった…。」
そう、遥か昔から
「私も、ずっと…。」
それだけ言うと、口づけを交わす
最初で、最後のキス…
「さようなら、アスラシャム。」
「だめぇ!まだ、だめだよう!!」
アスラシャムを拘束していた鎖を解き放つ
そして俺はふり返り、人間たちを睨む
「時を司る大天使の力、見るがいい!!」
最後の力をふりしぼり、反物質砲を破壊する
その場にいた人間たちも、全て、排除した
その時には、すでに俺の体は完全に無くなっていた
しかし、俺はまだ生きている
天使である以上、肉体が失われても、魂だけで行動できる
もちろん、力は使えないし、誰からも見えることはない
あとは、ただ延々と歴史を眺めるだけだ
そう、干渉など、一切できぬまま、永遠に
何千年、何億年と…
その時、目の前にディベリウスが現れた
「ふふ、私に逆らうとどうなるか分かったか、愚か者め。」
俺がここにいるとは、夢にも思わないだろうな…
安心しろ、もうじき、どこかに行ってやるよ
そう思った時に、それは起きた
「む?アスラシャムよ…生きていたのか。」
「ディ、ディベリウス様!!」
アスラシャムのほうにディベリウスが歩み寄る
しかし
「一緒に死んだのではないのか…手間をかけさせおって。」
アスラシャムの体に深々と光の剣が刺さる
「な、なにを…?ディベリウス様…。」
その場にアスラシャムが倒れこむ
ディベリウス…貴様!!
くそ!ここにいるのに、なにもできないなんて…!
俺は必死に、ディベリウスにつかみかかった
しかし、今の俺にはどうすることも、できない
「さて、あとは、この歴史を消すだけだな。」
それだけ言うと、ディベリウスは天界に戻り、この地上から歴史を消した

それから、俺は混沌の闇をさまよっていた
一体、どれだけの時間が過ぎたのだろう
感覚というものはすでになく、ただ、ひたすらにさまよっていた
そして、光がさす
そう、新しい歴史が始まったのだ
なにも知らずに、ただ神が決めたレールの上をあるくだけの人類
すでに、生まれた時から、死ぬことまでが決められている生物
なぜ、俺は天使なんだ…
もう、消滅したい!
もう、こんな映像を見るのはいやだ…
そんな時、俺は信じられない映像を見た
「…アスラシャム、の反応…?」
いや、まさかな…
半信半疑でその場所に行ってみる
そこには、アスラシャムの転生した姿があった
たくさんの人に囲まれて、楽しそうなアスラシャム
常にそこには笑顔があふれていた
よかった
俺は心底そう思った
ディベリウスに殺されて、どうなったかと思ったが…
転生できたのか、よかったな
あいつに気づかれないように、生きてくれ…
もう、俺も、用済みだな
この力を捨て、人として転生できれば…
アスラシャムに、会うことも出きるのに
俺には、それすらも叶わない
そうして、俺はしばらくアスラシャムの姿を眺めていた
が、異変が起きる
「いやだ!やめて!」
アスラシャムを数人の男が囲んでいる
俺は、その場をただ呆然と眺めることしかできなかった
そして、その次も、またその次も…
同じ歴史の繰り返し
うまく転生したと思っていた、俺の考えは違っていた
あいつに、転生させられたのだ
苦痛を、永遠に与えるためだけに
俺にはもう、耐えられない
ディベリウス…
なぜ、ここまでする…
俺が、ここにいるからか!?
俺に、永遠にこの歴史を見とどろけろというのか!
これが、神のすることなのか!?
俺の、天使としての力よ
失われてしまってもかまわない
最後に、言うことを聞いてくれ
俺の、「時読み」の力よ!
歴史を、消せとは言わない!
せめて…せめて、アスラシャムを、開放してくれ…!
俺は、どうなってもかまわない
どんな苦痛にも耐えてみせる
あいつを…助けてやってくれ
さあ、見るがいい、ディベリウスよ!
この力の、恐ろしさを…
生命を弄ぶと、どうなるかを!!
力をそこに、収縮していく
そして、歴史を書き換える
アスラシャムの苦痛を、すべて俺に…
お前だけは、笑っていてくれ
これが、俺の最後の願い
あとは、どうなってもかまわない
世界が滅びようが
アスラシャムに殺されようが
永遠に、苦痛を味わうことになろうが
俺は、かまわない
お前さえ、笑っていてくれれば、それで…

そして、また、何度目かの転生を、向える
自分で創った歴史のために
永遠に、苦痛を受けつづけるために



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