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Original Novel Yuki Presents



歴史の果てに


第8章

離別



 
「…そんなことがあったんか…。」
俺はあの時のアストとのやりとりをみんなに話した
正直話していいのか迷った
みんな、アストが生きかえるのを望んでいた
これはゆるぎない事実
俺が生き残ってしまうことでみんなを失望させてしまう、そう思ったからだ
アストの記憶、力、性格…全部俺は知っている
だから、なりすますことだってできた
でもそれは、みんなをだますことになってしまう
だから、俺は全部を話した
「アストがそんなこと言ってたんだ…。」
「ああ、みんなには済まないことをしたとは思っている…。」
「でも、どうして今回に限ってアストはん、死んだんや?」
だって、七支の呪文は肉体と魂を切り離すだけ
死ぬなんて…あらへんはずやし
「俺と、アストの魂を剥がしてしまったから、だと思う。」
「どういうこと…?」
青葉が考えこむ
つまり…
今までは魂と肉体を切り離していた
天使としての魂が、冥界に行かずして生き長らえさせて
人間としての魂が、転生を可能とした
今は、違う
体に人間の魂を残したまま天使の魂だけ切り離してしまったのだ
しかも、天使の力、記憶を残したまま
実質死んだも同然なはずだ
「…嘘。」
その時黙っていた美堂が口を開いた
「アストが死んだなんて…!」
嘘よ…あの人は、殺したって死なないわ
今まで、何回七支刀で斬ったっていうの!?
七支刀は魂を分離するだけのもの
あれで、死ぬわけないじゃない…!
「美堂…気持ちは分かるけど…事実なんだ。」
「嘘よ!」
私はあなたのために、あなたを殺したのよ
あなたが生きかえると信じて、殺したのよ
また笑いあえると信じてたのに…
突然、死にました、って言われて、信じられると思う!?
なぜ、あなたはいつも私を見てくれないの…?
「落ちつきなって、ミスティはん。それに、まだ死んだっちゅうのは早いで、梓零はん。」
「ワドラ、あんた何言ってるんだ!もう気配なんて…消えてしまってるだろう!?」
「おい、やめろって!」
美堂が渡辺に掴みかかった
それをあわてて制止する
「どういうこと?渡辺さん?」
「切り離された魂はどこに行くか、考えはった?」
「…?」
どこに行くんだ…?
アストの記憶からすれば、死んだ魂は冥界に行くことになっているけど…
「天使の魂は死ぬことができへん。だから、冥界に行くことも無い、と。」
そうだ、天使の魂は死ねないんだよな
転生できるかもわからず、浮遊するだけだったな
「…そうか!」
分かった気がした
「たぶん、梓零はんが考えとることであっとるよ。」
「ええと、説明してほしいな〜…。」
青葉が苦笑する
「だから、行き場が無いんだから、その辺に浮遊してる、ってことだろう?」
「そう、その通りや。」
そこで、美堂がため息をつく
「あんたらね、気配がどこにもないのよ!?それなのに…生きてる、ですって!?」
「気配っていうのは、そのap反応とかいうやつなんだろ?」
「ああ、そうだよ。天使だけの特有の反応よ。」
だったら、反応がないのは当然だ
「だってさ、天使の力は…俺がもらっちゃってるんだぜ。」
全員俺のほうを見る
そして、数秒の沈黙
「それに、あいつ…アスラシャムのところに行くって…。」
「…!」
さらに沈黙が深くなる
「わ、私のところに!?」
「そういう意味じゃなくて…なんて言うかな…。」
あいつは、すでにアスラシャムの人格は失われていると言っていた
なら、あいつは後を追っていったんだろう
天使の力を捨てて、ただ一つの魂として…転生するために
この歴史に、これからの歴史に転生できるように
いつか転生するアスラシャムに会うために
その歴史を創るために、俺に力をくれたんだと思うし…
じゃなかったら、俺なんかにこんな大事なことをまかせるもんか
不真面目で、授業では寝てて、家でも寝てばっかり…
おう、俺ってこんな人間だったのか…反省
「あんた、心の中で最後にオチつけたな?」
むう、お笑い関西芸人の渡辺にはばれたのか!?
「今、すごく失礼なこと考えたんちゃう!?」
「うるさいっ!!」
突然美堂が叫ぶ
目には涙が浮かんでいる
「私は、アストを生きかえらせるために、ここまできたんだ…。」
何度も殺して、傷つけて
あなたが帰ってきてくれると信じていたから、何度も…
「後はあなたに任せる、ですって!?冗談もほどほどにしなさいよ!」
こんな裏切り方はないよ…
なんとか言ってよ、アスト…
なんで、アスラシャムのほうに行くの?
私じゃだめなの?
いつでもあなたはアスラシャムに向いていく…
「落ちつき、美堂はん。まだ死んではおらんのや。その辺に浮遊しとるだけで…」
「だったら、探してちょうだいよ!この、数えることのできないほどの魂の中から!!」
いったいどれだけの歴史がここにあったというのよ
冥界に行けず、苦しんでいる魂なんていくらでもいるわ!
その中から…アストを探せですって!?
「できるものなら、やってみなさいよ!!」
「おいおい、いいかげんにしろよ!美堂!」
今にも暴れだしそうなぐらい興奮していた美堂を、止めにはいる
やっぱり、俺が消えていればよかったのか…
「あんたの、あんたのせいなのよ!」
この人間さえいなければ、あの人は何度も転生できたはず
こいつのせいで…!
「確かに、俺のせいかもしれない。でも…。」
「な、なに言ってるの梓零くん!?」
「そうやで…別に、あんたが無理やり力を奪ったんやないんやろ?」
俺が、さっさと死んでいれば、アストは復活できた
でも、あいつは俺に託すと言った
自分の命を投げ捨ててまで、俺にかけてくれた
だったら、俺が俺の存在を否定するならば
あいつの選択は、間違っていることになってしまう
だから俺は、生きる
「俺は俺だ。だから…どう言ったらいいのか分からないけど。」
この世界
この歴史
俺にどうできるのかはわからない
でも、あの時に青葉や、俺が死んでしまう歴史を変えれたんだ
できないことは、ない
「だから、俺はできる限り、この歴史を変えたいと思う。」
それに、俺には使命がある
アストラディウスとアスラシャムが
再び出逢うための舞台を創るという使命が
これが俺にできるあんたへのはなむけ
そうだと信じているから
しかし美堂は
「そう、なら私は私のやり方でアストを探すわ。」
「だったら、俺も協力するって…」
「うるさい!!」
アストを殺した本人が、何を言うか…!
あんたがいすわっている限り、アストはそこには帰れないんだ
例え違う体に転生できても
あんたがもっている記憶がなければ…
それは別人と同じなんだよ!
「私は行く。あなた達は、せいぜいディベリウスの手の上で遊んでなさい。」
アスト以外に…神に逆らえるもんですか…
下界の猿に、何ができる…!
「さよなら…。」
そう言うと美堂は翼をひろげ、空へ昇る
それを見て渡辺が止めようと回りこむ
「ま、待ちなって。美堂はん!」
「ワドラ、別に私についてくることはないんだよ。」
少し考えるそぶりを見せる渡辺だったが
「悪いな、梓零はん、青葉はん。」
答えは出たらしい
「ああ、仕方がないさ…二人にとっちゃ、俺は邪魔者だろうし…。」
皮肉でもなんでもない
本心からそう言っているつもりだ
「そんなことはないで…アストはんが選んだんやから。」
「ワドラ!そこどきな!じゃないとたたっ斬るよ!」
「ミスティはん、もうちょい落ちつきな。うちだって、つらいんや。」
うちだって、アストはんの復活のためだけに、ここまでしてきたんや
だけど…これはアストはんが選んで決めたことや
うちらが反対したら…あの人がかわいそうや
だから、せめてアストはんの邪魔はせん
けど、まだ復活させれる目はいくらでも…
「そう、いくらでもあるんや…。」
「…ワドラ、あんた…?」
渡辺の顔に一瞬なにかが写った
それが何かは分からないが
危険な何かが…
「じゃあ、ミスティはん、行こうか…。」
「あ、ああ…。」
そう言って二人は…消えていった


しばらく飛んで、私達は天界付近で休憩をとる
「なあ、ワドラ。さっき言いかけたこと…なんだい?」
「アストはんを復活させる方法、思いついたんや。」
「なんだって!?」
いったい、どうやって…
あの人の魂は…もうどこにいるのか分からないのよ!?
それに、あいつがあの体にいる限り、転生先も不安定
できるかどうかも分からないし、反応も感知できない
それを、どうやって?
「あの体から、人間の魂だけ追いだせばいい、ってこととちゃう?」
そうすれば転生先の器が空っぽになるし
悪くても、人間の魂と融合しての転生ぐらいは可能になる
七支刀を改良して、人間の魂を蒸散させれば、簡単にいくはずや
ミスティに説明するとその顔には困惑の色が浮かぶ
当然や…今まで誰もこんなこと考えたやつはおらんやろうし…
「そんなことが、可能なの…?」
「うちらでは無理やろうな…けど。」
ディベリウスなら、あるいは…可能かもしれん
結局最後は神頼みっちゅうこっちゃ…
「まさか、あんたいまさら神に頭下げるって言うの?冗談じゃないわよ!」
誰のせいで、こんなことになったっていうのよ…
「ミスティはん、あんた忘れたんと違う?うちらのするべきこと…。」
忘れるもんですか
アストラディウスを復活させる
そのためにならなんだってするって決めた
だけど、私達はでディべリウスを裏切った
いまさら…協力してくれるとでも…それに
「ディベリウスはアストを殺そうとしてるでしょ?うまくいくかしら…。」
「そのことも考えたんやけど…。」
これから先のことはもう、誰にも分からん
神にとっても、同じことやろうし
アストと違う意思のものが歴史を創ることができるんや
知らんやつの考える歴史なんて…誰も想像できへん
だから、これはうちの勘やけども、神はアストを殺そうとはせんはずや
よう知らんやつが歴史を創る
まったく想像もできんことをしてくるはずや
アストはんの歴史
これは、うちらならある程度読める…
まだアストはんが生きとるほうが、神にとっても安心なはず
だから、きっとうちらの話しを聞きいれるはずや…
「もう決めよ、ミスティはん。」
「そうね、あの時からなんでもするって…そう言ったわよね。」
例えそれが、どんな手段であっても
だから私はあなたを刺すこともできた
ならばいまさら手段を選ぶつもりはない
「行きましょう、天界へ。」
「よっしゃ、決まりやな。」
その時、高速で下界に向う力を感知した
「…なに?この力…!」
ディベリウス!?いや、違う…
こんな強い力…天使のものじゃない!?
微かだけど、悪魔の匂いがするわ
…誰!?
「なあ、この悪魔の感触…まさかデストリアス…!?」
「そんなはずはないは…この力、強すぎる!」
とんでもなく強大な力…
神と比べても遜色はない
それどころか、ゆうに超えている…?
「こんな力の持ち主が…なんで地上に向うんや?」
そもそもこんなに強いやつ天界におったんか?
「わからない、わからないけど…。」
天界で、何かあったのは確かみたいね
「とりあえず、急ぎましょう。」
「ああ、そうやな。」
私達は天界へと急いだ


その頃天界では、デストリウスの行動にシルバは困惑していた
あの後デストリウスの世話係がティストーラウ、セルディストの死体を発見
ディベリウス、ならびにシルバリウスに通報したのだ
「申し訳ありません、ディベリウス様。知らぬこととはいえ、デストがこのような真似をするとは…。」
「シルバよ、お主のせいではない、気にするな。」
「は、もったいないお言葉、この身に余るほどの…」
「もうよい、下がれ。」
「は、失礼しました。」
そして天閣の間を後にするシルバリウス
そして一人、答えの出ない質問を考える
「デスト…いったい何を考えている?」
大天使の力を奪い
天界を抜け出し地上に行くなんて
目的が分からない…
ただ悪魔の血の衝動に負けただけなのか?
しかし、それならこの天界で暴れるはずだ
「アスト様の覚醒に何か関係があるのか?」
確かに、偶然にしては都合がよすぎる…
しかも、力を増幅するとは…
「力が必要なことが、地上にあるのか?」
しかし人間が反乱を起こそうとしているわけでもない
その時、デストのあの言葉を思いだした
"早く覚醒してほしいだけよ…。"
そうだ、確かにデストはそんなことを言っていた気がする
「まさか、アスト様と戦う気か…!?」
もし、デストが悪魔貴族からの命を受けていたとしたら
「時読み」を手にいれようとしているのなら
すべてが、つながる…!
こうしてはいられない
相手の力を奪う技を使えるのなら
アスト様も例外ではないはず
まだ目覚めたばかりのアスト様では…!
「デストは…今どのあたりにいる!?」
デストの反応を感知する
この時すでにもうデストは地上にさしかかろうとしていた
「早い…!」
今から助けを送っても、間に合わない…
どうする…!?
ブウーーン!ブウーーン!
その時、警報が鳴り響く
この警報は…結界に穴が空いたのか!?
天界の結界にはいれるとは…誰だ?
デストが戻ってきたわけではなさそうだが…
次から次へと…なぜ重なって問題が起こる…
警報のなった方へ向おうとした時
「シルバ様!た、大変です…!」
監視班の天使が飛んでくる
「どうした!今の警報は、何があった!?」
「そ、それが…ミスティリウス様と、ワドラスト様が、結界を破って、天界に…。」
…旧四大天使だと?
何をしに来たんだ…?
まさか、直接攻めに来たのか!?
「どこだ、案内しろ!」
くそ…二つか…
私一人では、相手になるかどうか…
しかし、シルバの心配とは裏腹な答えが返ってくる
「今、ディベリウス様と、話しをされてます…。」
…話しだと?
いまさらなにを話すというのか…
あの二人が戻ってくるということはそれなりの理由があるはず
いずれにせよ、確かめる必要がある
私は天閣の間に向う
すると、すでに話しは始まっていた
「…というのが、ワドラが考えた案だ。」
私は今までの出来事をこと細かく報告した
当然、アストの復活についても
「ふむ、なるほどな…確かに、理論上可能ではある。」
「できるんか!?」
「確かに、可能ではある。しかしそれにはあの人間を追いださなければならない…。」
さらに、もう一つ条件が…
「その上、その魂が体に未練を持っていては成り立たん…。」
「どういうこと?」
「つまりは、こういうことだ。」
私が最初に人類と呼べるものを創った時
いろいろな"鎖"を施した
それは、酸素といい、水といい…
しかし、これは人間にはどうとでもできるもの
目に見えるものでは繋ぎとめることはできない
だからこれをおとりにして、私は違うものを真の鎖として、植えつけたのだ
人は、生まれながらにして、同じ肉体で時を廻るのだ
自ら死を望まない限り、同じ肉体に転生する
しかし、これは同一の人物になるわけではない
人格などは全て魂の中に封じ込められる
死ぬときの、苦しみの記憶と共に…封じこめてしまうのだ
そう、自分から否定しなければまた、同一の魂として復活する
「言ってることがようわからんのやけど…。」
「魂の絶対数は常に一定。それは、私でも変えることは容易ではない。」
たぶん、あの人間とアストの魂は一つのものとして融合してしまっているのだろう
それゆえ、何度殺しても同じ人間として転生しているのだ…
これも全て、あの人間達のせいだ
天使の意思を封じこめるなどとくだらない事を…
私の通りに進めば、アストは復活していたというのに
余計なことをしてくれたものだ…
「でも、それやと自分で死を選んだ魂はどうなるん?」
「冥界に行き、全ての記憶を消され魔物として廃棄される…。」
とは言っても、そんな人間はそうそうおらんがな
「よく分からない話しをありがとう。で、私はなにをしたらいい?」
こんなことを聞かされても、私にはどうこうできるわけじゃないし
時間の無駄だわ…
こうしている間にも、あの人はアスラシャムと…
その時、ドアをノックする音がする
「すいません、シルバです。…入ってもよろしいでしょうか?」
「かまわん、入れ。お前にも聞いてもらいたい。」
ガチャ
「失礼します…。」
「おお、シルバはん、久しぶりやなあ。」
「ワドラさんも、元気そうでなによりです。」
「挨拶はあとにして。で、続きは?ディベリウス。」
…そういえば、あの混血の悪魔の娘が下界に行ったな
おおかた父親の敵でも討つつもりなのだろう…
無駄なことをするものだ
いや、待て…そうか、あいつに任せておけば
「いいことを思いついたぞ。」
「なに?」
「今、四大天使のうち三人が減ってしまってな…大変なのだ。」
「何が言いたい?」
「しばらく、天界で働かないか?」
「あんた、そんな暇があるとでも思ってるのか!?」
こんなときに…何を言いだすかと思えば
冗談じゃないわ!さっさとアストを…帰らせたいのよ!
「果報は寝て待て、と言うだろう?」
「…ディベリウスはん、何を考えてるん?」
そうだな、できればアスラシャムもこちらに引き入れたいものだ
「後のことは、デストリアスに任せておけ。きっと、うまくやってくれるはずだ。」
「デストに任せるぐらいなら、私が行くわ!」
「焦る気は分かるが…あいつに任せておけば、人間のほうを殺せるぞ?」
「!?」
全員ディベリウスを見る
「だから、待っていろと言うのだ…。」
人間にとって、死んでもいいと思う状況
それがどういう状況か…あいつに作りだしてもらおう
信じるものを失った人間の、心の壊れる様を見せてもらいたいものだ…
「私に任せておけ、全ては、うまくいく。」
「だけど、デストにアストを救いださせるなんて…納得いかないわ。」
デストはいつも両親のことでアストを恨んでいた
敵を取ろうとしてもおかしくはない
でも、ディベリウスが考えもなしにこんなことを言うわけはないし
だったら、今私にできることは…
七支刀を改良して人間の魂をも分解できるようにすることかしら…
そうね、アストなら、そう簡単に殺されたりしないでしょうから
もしもの時は…私が、守ってあげるから…
「じゃあ私は行くわ。さようなら。」
「ちょ、ちょっと待ちい、ミスティはん!」
「そうだ、感情に任せていてはいい歴史は創れないぞ…。今は、耐えろ。ミスティ…。」
私も…もう一人にはなりたくはない
アスト、アスラシャム…
代わりに迎えた新しい四大天使もまた離れて行く…
この上ミスティ、お前にまで行かれては…
「悪いようにはしない。だから、今はここに…いてくれないか?」
「ディベリウス…?」
初めて聞く、この人の頼み
なにを、そんなにおびえてるの…?
「な、なに言ってるのよ…私は、別にどこにも行かないわ。」
いつも、私だって父親のあなたを忘れたことはなかったわ
だけど、私は一刻も早くアストに会いたいの…
「ディベリウス様、報告は終わりましたので私はこれで失礼します。」
「そうやな、うちも久しぶりに天界の町でも見てくるかな。」
雰囲気を察したシルバリウスとワドラストが部屋から出ていく
そして天閣の間にディベリウスとミスティリウスが二人きりなる
「お父…いや、ディベリウス。何を考えているの?」
「…まだ、父親とは呼んでくれるのだな…。」
あなたがあの時アストを助けていたらこんな事にはならなかったのよ
アストが無事に帰ってくるまで、そうは呼べないわ
あの時…そう決めたから
「じゃあ、七支刀を改良しなきゃいけないから…もう行くわ。」
「ミスティ…。」
寂しそうにディベリウスがミスティリウスを呼びとめる
「まだ、アストのことを愛しているのか…?」
「そうでなきゃ、こんなことはしてないわ…。」
そう言うとミスティリウスは天閣の間から出ていった
「そうか、まだアストのことを…。」
あいつには心に決めた者がいるというのに…
しかし、私も久しぶりに話しがしたいものだ
あれだけ辛い歴史を見せたというのに…
まだ、アスラシャムのことを思いつづけているのか
ミスティのためにも、お前には帰ってきてもらわなければ
まずは、アスラシャムを引き入れることから始めるか
「封印しておいたアスラシャムの記憶…あの少女に受け入れられるか…?」

「よ、ミスティはん。」
天閣の間を出ると、ワドラストが待っていた
「ワドラ、天界の町を見に行くんじゃなかったの?」
「それより、時間潰せることを思いついたんや。」
アストの復活…うちもできる限りのことはするで
そう、二人で決めたんや
「で、なに?時間が潰せることって。」
「んー、例えば…七支刀の改良とか、やな。」
「結構よ。これは、私の仕事よ…。」
七支刀の呪文を念で変化させるのにはとてつもない精神力が必要
精神の疲れがもろに肉体に降りかかる天使にとってそれは苦痛を伴う作業
苦痛を味わうのは私だけで十分よ
「まあまあ、一人より二人や。そのほうが呪文も完璧になる。」
そうだけど…もともとは私のわがまま
これ以上ワドラを振りまわしたくないし…
「うちだって、これ以上失敗しとうないから…手伝わしてな…。」
「!」
そうね…私だって、もう失敗したくはない…
これ以上アストの記憶に苦痛を味あわせたくない…
「…ごめんね、ワドラ…。」
「なに言うてんねん。最初に決めたやろ。なんでもするって…。」
「そうね、そうだったわね。」
二人で決めた約束
"あの人のためならなんだってする"
唯一の取り決めごと
「じゃあ、やりましょう。あの人間を殺す、刀を作るのを…。」
緋禮はんには恨みはないけど…な
「ああ、絶対完成させよな…。」

各々がそれぞれの思いを交錯させる
アストラディウスの復活のために
だがシルバリウスだけは、違う思いを馳せていた
あなたは今、幸せなのですか?
この歴史が、あなたの望みなのですか?
復活することない、この幸せな歴史
あの二人のための…この歴史が…
あなたの、望みなのですか…?と…

そして、デストリウスが地上に降り立った…
「うふふ、待っててね、アスト…。」
さて、狩りの始まりね…!




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