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Original Novel Yuki Presents



歴史の果てに


第10章

デストリウスの過去



「…すまないな、デストよ…。」
わたしが旅立つ日、おとうさんは泣いていた
おかあさんは…姿を見せてくれなかった
わたしは、なぜおとうさんが泣いているのか分からなかった
おとといの夜、おとうさんとおかあさんが激しく言いあっていた
「私は、反対です!あの子を…天界に養子に出すなんて!」
「私だって…できるならあの子を守ってやりたいが…仕方ないことなんだ…。」
…おかあさん、なにを怒ってるの?
おとうさん、泣いてるの?
幼いながら、それがわたしには分かった
「あの子を見捨ててまで、私は生き延びたくなりません!」
「しかし、私の代でこのアウストラッツォ家を断絶させるわけには…。」
「…あの子が、男の子だったらよかったのに…。」
…おかあさん?
わたしが、おとこのこだったら、二人とも泣かないでいてくれるの?
わたしもおとこのこに生まれたかったなあ…
そして次の日、天使のおじさんが家にきた
「ほら、デスト…おじさんに挨拶して。」
おとうさんはわたしに言った
だからわたしはぺこっとおじぎした
「ほう、この子を…ね。ふふ、なかなかかわいいじゃないか…。」
そう言うとおじさんはわあしの頭をなでてくれた
でも、その手は恐かった
とっても、恐かった
わたしはそのまま天使の国に連れて行かれた
「おい、それに着替えるんだ。」
おじさんはすっごくかわいい洋服をくれた
だから、わたしはおじさんを好きになった
おじさんはわたしに着替えさせると、きれいな場所に連れて行ってくれた
そこには、わたしと同じぐらいの女の子がたくさんいた
でも、みんな泣いてる…
わたしは勇気を出して話しかけてみた
「こ、こんにちは…。」
でも、その子は返事をしてくれなかった
だから、わたしはもう一度言ってみた
「こんにちは…なんで、泣いてるの?」
「…あなた、ここがどこだか知らないのね?」
「うん、さっきおじさんに連れてきてもらったの!」
「そう、だったら、自分を見失わないように頑張ってね。」
その子はよく分からないことを言った
しばらくして、何人か連れて行かれえた
でも、帰ってきたのは一人
すごく疲れているみたいで…怪我もしていた
その子とお話したかったけど、疲れているみたいなので邪魔しないことにした
そして、わたしと他に何人か一緒に部屋を出た
そこには、あの子もいた
「ねえねえ、なにするのかなあ?」
でもその子は
「ごめんなさい。」
と一言つぶやいた
連れて行かれた先には…たくさんの天使さんがいた
丸い運動場の真ん中に連れて行かれる
「みなさま、お待たせいたしました!本日のメインイベント!!」
…なにするんだろう。すっごく、みんな楽しそう…!
「連戦連勝を誇る、王者・セシティに戦いを挑むのは、新たなる挑戦者四名です!」
歓声がまきおこる
…戦いって、なに?
そんなことよりみんなで遊びたいなあ…
「それでは戦闘開始です!!」
カアァァーーーン!!
鐘が鳴った
その瞬間、みんなが散った
「…え?え?」
なにをすればいいのかわからなかった
その時、後ろからいきなり殴られた
「きゃああ!!!」
「ちっ、はずした!」
いたいよ…なんで、殴られなきゃいけないの…?
「うああ!!」
と、私を殴った子が、違う子に…え?
私が見たときには、他の三人は、さっき私が話しかけた子に…殺されてるの!?
みんな、血を流して倒れている
「おおーーっと!!さすがセシティ!これは強い!!」
また歓声がまきおこる
「ねえ、なんでこんなことするの!?」
殴られて痛いけど…我慢して起きあがった
「…殺らなきゃ、殺られるでしょ…?」
「な、なに言ってるのかわかんないよお!」
「…あなたの名前は?」
「え?デストリアス…だよ。」
「私の名前はセシティ。あなたのこと忘れないわ…。」
そして、セシティがわたしに飛びかかってくる
それを、寸前のところでかわす
「おおーーっと、挑戦者、セシティの攻撃をかわしたぁ!?」
わたしもかわしたと思った
その直後、すぐにセシティはわたしに向って飛びかかってきた
左腕に衝撃を受ける
「いたっっ!!」
「ここで、セシティの攻撃が挑戦者を捕らえました!!」
いたいよ…
なんで、こんなことしなきゃいけないの?
いたいのは、もうやだよ…
その時、聞こえるはずのない観客の声が聞こえた
"ちっ!結局セシティの勝ちかよ…。"
"お前さあ、なんであんなやつに賭けたんだ?オッズ最低人気じゃねえか。"
"ほら、親に捨てられたって聞いて、なんか一発やらかしてくれそうだったから。"
"おいおい、そんなうまい話しがあるかよ…。"
…捨てられた?
おとうさんと、おかあさんがわたしを捨てた?
だって、おとうさんは…
「デスト、よくお聞き。すぐに、帰ってこれるからね。」
そうやって言ってたんだよ…
だからわたし、天使の国に行くって言ったんだもん!
すると、今度は後方にいる衛兵達から言葉が聞こえてくる
"そういやさ、これに勝てばセシティって願いが叶うんだっけ?"
"ああ、そうさ。そういうルールだからな…やばいぜ、なに言われるか…。"
"大丈夫だろう?たかが子供だし。それより、新しいガキに教えといたんだろうな?"
"え!?お前が教えたんじゃないのか!?"
"おいおい、ルール知らなかったら、かわいそうじゃねえか。"
"20回勝ちぬいたら願いを叶える、だろ。大丈夫だって、セシティが勝つさ。"
…勝てば、願いが叶う
…勝てば、おとうさんとおかあさんに会える
…勝てば、いたい思いをしなくて済む
…勝てば…いいんだ
ギンッ!!
目を見開く
あかあさんに聞いた、羽の出し方
おとうさんに聞いた、力の使い方
それを使えば勝てる…
でも、勝つって、なに?
なにをしたらいいの?
あたりを見まわす
そこには、他の三人が横たわっている
…いっぱい、血を流している
そうか、血をたくさん流せばいいんだ
相手の、血をたくさん…流せばいいんだ
そして、わたしは力を開放した
生まれながらに持つ四枚の天使と悪魔の翼
そして、悪魔の特徴の額の眼
わたしは、教わった光の剣を作りだした
セシティから血を、集めるために
突然の力の出現に、セシティは動きを止める
「デストリアス…あなた、まさか…?」
「わたしは、おとうさんとおかあさんに会うんだ…。」
そう、みんなのところに帰るんだ
次の瞬間わたしの剣がセシティの体を貫く
それを力で抜こうとするセシティ
「そんなこと…させないんだから。」
わたしは光を曲げてセシティの体から剣が抜けないように形を変えた
「うそ!光の剣を…光分子を変形させるなんて…そんなばかなこと…。」
「血を、ちょうだい。そして、勝利を、ちょうだい。」
わたしは、もう一本の剣をとりだして、セシティを斬った
それを見て、会場の天使が息を飲む
デストリアスは死ぬことのできないセシティの体を斬り続けた
「血を、血を、血を!!もっと、血をだしなさい!!」
もっと、集めないと…勝ちにならないよ…!
「あぐっ…もう、ヤメテえぇ…。」
すでにセシティの体は原形をとどめていなかった
それでも、デストは斬りつづける
「血を、血を、血を…。」
天使である母の羽を使って作った純白のドレスが、鮮血に染まる
背中には、天使である白い翼と、悪魔である黒い翼、額には眼
デストの周りには血の水たまりができていた
その光景は、まさに地獄だった
そして、セシティの頭に剣が刺さろうとする
ブシャアアア!!
「し、試合終了!!勝者、デストリアス!!」
勝者…ってことは、勝ったんだ
これだけ血を流せば…勝てるんだ
20回勝てば…おとうさんとおかあさんに会えるんだ
だったらわたし…頑張る!
いたいのはいやだけど…頑張る
あと、19回…勝てばいいんだ


「…そんなことがあったのか…。」
俺は、かける言葉がなかった
「いいのよ、気にしなくて…。あなたは、違ったんだから。」
俺が、違う?
「どういうことだ?」
「あの時ね、あなたがいなかったら…私、もう死んでいたかもしれないから。」
あの時は、すごく恨んだわ
だけど、やっとあなたの行動の意味が分かって…嬉しかった


その後も、わたしは戦いつづけた
あとうさんとおかあさんに会うために
ほとんどの試合は一瞬だった
試合開始の合図とともに闘技場は血の海と化した
そして、20回目の、戦い
これに勝てば願いが叶うんだ!
わたしは、おとうさんとおかあさんに会える気持ちでいっぱいだった
そして、試合が始まると、いつものように一瞬で終わらせようとした
そうすれば、願いが叶うからだ
でも、そうはいかなかった
「…あれは、悪魔貴族の…アウストラッツォ家の、令嬢じゃないのか!?」
「うん、そうみたい…だね。私もどこかで見たことあるよ…。」
そこには、偶然にも賭博場の違法調査をしていたアストとアスラシャムがいた
「なんでこんなところにいるんだろうね?」
「答えは支配人に聞いたほうが早いな。」
そう言って、アストラディウスは支配人室に入る
「これはこれは、アストラディウス様!ようこそおいでくださ…」
「挨拶はいい、なぜここにアウストラッツォ家の令嬢がいる!?」
…こんなことが魔界に知れたら…一大事だ
「いやいや、なにをおっしゃているのか私には分かりかねますが…?」
「自分の目で確かめてみるんだな。」
ぐい、っと支配人の首を掴み、闘技場が一望できる窓に押し付ける
「どうだ?まだしらをきるか?」
「い、いえ、本当に私はなにもしらないんです!前に仕入れ業者を変えたので…今調べます!!」
そう言って支配人は仕入れ帳簿をとりだした
そこには…"ジャビス・レッドバード"と書かれていた
「おいおい、こいつは大物だぞ…!」
「ほんとだ、指名手配A級犯罪者だよ…。」
「とりあえず、試合を止める。いくぞ、アスラシャム。」
「うん。」
ちらっと闘技場を見る
…結構な遊びだな…そのうち廃止にしないといけないな、こんなものは…
「おい、支配人。後で王宮まで来い。然るべき処罰をもって、貴様の腐った心を直してやるからな。」
「ひいい!!!」
これだけおどしておけば、もう悪魔の子供を使った戦いは中止するだろう…
支配人室を出ると、一段と歓声がわいた
アウストラッツォ家の令嬢が…もう一人の子供を引きちぎっている
「くそ…悪魔の血が目覚めるぞ…。」
「私、みんなを避難させるね!」
「ああ、俺はあの子を止める。」
俺は翼を広げた
「試合終了!!勝者、デストリ…」
「待て!!」
誰!?
もうわたしの勝ちなのに
邪魔するのは、誰!?
「残念だが、この余興はもう終わりだ。」
「なによあなた、邪魔しないで!もうすぐ…もうすぐ願いが叶うのに!!」
「いいですか、デストリアス嬢…もう終わったんです。」
だめ!そんなの許さない!
「どうして…私から願いを奪うの!?」
「あなたがいくら望んでも、もう魔界には帰れないんです…。分かってくれますね?」
「嫌よ!そのために今ここまで、みんなを殺してきたのに!!」
20回目の戦いを終えるまで
すでに何年もの月日が経っていた
その私の苦難の日々を…台無しにするつもりなの!?
「すでに、あなた達の身柄は天界で預かると、魔界には了解を得ていますから…安心してください。」
それに、もうアウストラッツォ家は…ないんだ
そうと言うことはできず、俺はデストリアス嬢をなだめ続けた、が
「じゃま、しないでよおおおお!!!」
デストリアスが力を開放する
とてつもない力の気配
「これが、混血の力か…!」
そして、デストリアスが斬りかかる!!
キイィィィーーン!
剣と剣とがぶつかり合い、光を散らす
デストリアスの力は恐ろしいほどに強かった
「…まだ子供だというのに…この力は…!」
「わたしだって、帰れると思ったから…友達だって、斬ったんだからね!!」
確かに、力や技のきれはいいものを持っているが…
「…遅い!」
ドカッ!!
みぞおちにひざげりを食らわす
「くはっ!」
その場にデストリアスが崩れ落ちる
「はあ、はあ、はあ…。」
「おつかれさま、アスト…。」
「アスラシャム…この子を頼む。」
「え?アスト…いいの?この子たちを助けるって…言ってなかったっけ?」
「もう、俺はこの子には嫌われただろうし…女のこのほうがいろんな部分で世話になりやすいだろう?」
「ふふ、やさしいね、アスト。」
「そんなことは、ないさ…。」
俺は、この子から見たら悪魔だろうよ…
親子を引き離す、ってな
そうだ、俺達は…罪深い生き物だから
こんなことがあっても、取り締まることができないなんて…
なんのための大天使なんだ?
ディベリウス様…あなたは、なにを考えているんですか?
俺はこのとき初めて神に対して不信感を抱いた
「…そんなことがあったのか…。」
俺は、かける言葉がなかった
「いいのよ、気にしなくて…。あなたは、違ったんだから。」
俺が、違う?
「どういうことだ?」
「あの時ね、あなたがいなかったら…私、もう死んでいたかもしれないから。」
あの時は、すごく恨んだわ
だけど、やっとあなたの行動の意味が分かって…嬉しかった


その後も、わたしは戦いつづけた
あとうさんとおかあさんに会うために
ほとんどの試合は一瞬だった
試合開始の合図とともに闘技場は血の海と化した
そして、20回目の、戦い
これに勝てば願いが叶うんだ!
わたしは、おとうさんとおかあさんに会える気持ちでいっぱいだった
そして、試合が始まると、いつものように一瞬で終わらせようとした
そうすれば、願いが叶うからだ
でも、そうはいかなかった
「…あれは、悪魔貴族の…アウストラッツォ家の、令嬢じゃないのか!?」
「うん、そうみたい…だね。私もどこかで見たことあるよ…。」
そこには、偶然にも賭博場の違法調査をしていたアストラディウスとアスラシャムがいた
「なんでこんなところにいるんだろうね?」
「答えは支配人に聞いたほうが早いな。」
そう言って、アストラディウスは支配人室に入る
「これはこれは、アストラディウス様!ようこそおいでくださ…」
「挨拶はいい、なぜここにアウストラッツォ家の令嬢がいる!?」
…こんなことが魔界に知れたら…一大事だ
「いやいや、なにをおっしゃているのか私には分かりかねますが…?」
「自分の目で確かめてみるんだな。」
ぐい、っと支配人の首を掴み、闘技場が一望できる窓に押し付ける
「どうだ?まだしらをきるか?」
「い、いえ、本当に私はなにもしらないんです!前に仕入れ業者を変えたので…今調べます!!」
そう言って支配人は仕入れ帳簿をとりだした
そこには…"ジャビス・レッドバード"と書かれていた
「おいおい、こいつは大物だぞ…!」
「ほんとだ、指名手配A級犯罪者だよ…。」
「とりあえず、試合を止める。行くぞ、アスラシャム。」
「うん。」
ちらっと闘技場を見る
…結構な遊びだな…廃止にしないといけないな、こんなものは…
「おい、支配人。後で王宮まで来い。然るべき処罰をもって、貴様の腐った心を直してやるからな。」
「ひいい!!!」
これだけおどしておけば、もう悪魔の子供を使った戦いは中止するだろう…
支配人室を出ると、一段と歓声がわいた
アウストラッツォ家の令嬢が…もう一人の子供を引きちぎっている
「くそ…悪魔の血が目覚めるぞ…。」
「私、みんなを避難させるね!」
「ああ、俺はあの子を止める。」
俺は翼を広げた
「試合終了!!勝者、デストリ…」
「待て!!」
誰!?
もうわたしの勝ちなのに
邪魔するのは、誰!?
「残念だが、この余興はもう終わりだ。」
「なによあなた、邪魔しないで!もうすぐ…もうすぐ願いが叶うのに!!」
「いいですか、デストリアス嬢…もう終わったんです。」
だめ!そんなの許さない!
「どうして…私から願いを奪うの!?」
「あなたがいくら望んでも、もう魔界には帰れないんです…。分かってくれますね?」
「嫌よ!そのために今ここまで、みんなを殺してきたのに!!」
20回目の戦いを終えるまで
すでに何年もの月日が経っていた
その私の苦難の日々を…台無しにするつもりなの!?
「すでに、あなた達の身柄は天界で預かると、魔界には了解を得ていますから…安心してください。」
それに、もうアウストラッツォ家は…ないんだ
そうと言うことはできず、俺はデストリアス嬢をなだめ続けた、が
「じゃま、しないでよおおおお!!!」
デストリアスが力を開放する
とてつもない力の気配
「これが、混血の力か…!」
そして、デストリアスが斬りかかる!!
キイィィィーーン!
剣と剣とがぶつかり合い、光を散らす
デストリアスの力は恐ろしいほどに強かった
「…まだ子供だというのに…この力は…!」
「わたしだって、帰れると思ったから…友達だって、斬ったんだからね!!」
確かに、力や技のきれはいいものを持っているが…
「…遅い!」
ドカッ!!
みぞおちにひざげりを食らわす
「くはっ!」
その場にデストリアスが崩れ落ちる
「はあ、はあ、はあ…。」
「おつかれさま、アスト…。」
「アスラシャム…この子を頼む。」
「え?アスト…いいの?この子たちを助けるって…言ってなかったっけ?」
「もう、俺はこの子には嫌われただろうし…女のこのほうがいろんな部分で世話になりやすいだろう?」
「ふふ、やさしいね、アスト。」
「そんなことは、ないさ…。」
俺は、この子から見たら悪魔だろうよ…
親子を引き離す、ってな
そうだ、俺達は…罪深い生き物だから
こんなことがあっても、取り締まることができないなんて…
なんのための大天使なんだ?
ディベリウス様…あなたは、なにを考えているんですか?
俺はこのとき初めて神に対して不信感を抱いた…


そこで、わたしは気づいたらベッドの上にいた
血で汚れた服も、綺麗なものと取り替えられていた
「わたし、どうなったんだっけ…?」
コンコン
その時ドアをノックする音がした
「誰!?」
とっさに身構える
「お邪魔しま〜す。」
きれいな女の人が入ってきた
「調子はどう?」
その手には湯気のたつおいしそうな食べ物
それを、テーブルの上に置く
「はい、熱いから気をつけてね…。」
わたしは夢中で食べた
あの闘技場で暮らしていた間、まともな食事なんてしたことがなかったから
ものすごく、おいしかった
けど…
「おかあさんの料理のほうが、おいしかったなあ…。」
「あ…。」
お姉さんの顔が一瞬曇る
「あ、これだって、おいしいよ!」
わたし、悪いこと言っちゃった…かな
お姉さんがせっかく作ってくれたのに…
「よかった…こうみえても私、料理得意なんだよ♪」
そう言って、お姉さんはたくさんお話してくれた
お姉さんは、アスラシャムという人だった
いろんな絵本を読んでくれたし、いろんなことを教えてもらった
でも、お部屋から出してくれることはなかった
「ねえ、お姉ちゃん。」
「ん、なあに?」
「わたし…外に行きたい!」
「え…と、ごめんね、それだけはできないの…。」
「えー、なんでー?」
「デストちゃん…あの時の、お兄さんのこと覚えてる?」
ピシッ
わたしの脳裏に亀裂が走った
あの日…私から全てを奪った人
忘れることなんて、できない
「うん。…覚えてる…。」
「あのお兄ちゃんがね、もう少ししたら外にでれるように神様に頼んでもらってるから…。」
…あの人が?
憎むべき人が…?
「そんなの、信じられないよ…。そうだ!わたしが直接神様にお願いしたい!」
「うーんと、それも、できないよ〜。」
お姉さんは、すごく困った顔をした
「あ、ごめんなさい…わがまま言って…。」
「ううん、いいの。お姉さんだって…できるなら外にだしてあげたいんだから。」
「ねえ、神様とお話するには、どうしたらいいの?」
わたしは、どうしても外に出たい
おとうさんとおかあさんに会いたい
「そうだね…頑張って勉強して、大天使になれば会えるけど…。」
大天使…
それになれば、神様に会えるんだ
「わたし、頑張って勉強するよ!それで、神様に会う!」
「そうね、頑張れば、なんだってできるよ。」
「うん!」
お姉さんはそれから、お屋敷の中なら歩いてもいいって言ってくれた
それからわたしはずっと、難しい本をたくさん読んだ
しばらくして、試験を受けた
「中級天使昇格試験」とかいうやつだった
わたしは、それに合格した
お姉さんのいった通り、頑張ればなんだってできるんだ!
合格発表の日、大天使さんからお話を聞いた
でも、わたしはそのお話の内容を覚えていない
そこには、あのお兄さんが立っていたから
わたしの、憎むべき人…
あの人を、殺したいほど憎んでいた
それからわたしはそればっかり考えていた
どうすればあの人に勝てるのか?
中級天使になって分かったことがある
あの人にも、大天使にならないと会えないということ
あの人は、神様の次に強いということ
"…遅い!"
あの一言が頭をよぎる
「わたしは、遅いんだ。」
だったら、速くなってやる!
くる日もくる日も、あの人を殺すために練習を重ねた
それを何十億年と積み重ねた
努力のかいもあって私は大天使補佐にまで昇格していた
当時の同僚で私より速い天使は皆無だった
訓練をしてくれた、あの憎むべき人以外には…
訓練中、結局私はあの人よりも早く動けなかった
それでも私は努力しつづけた
それなのに、またあの人は私を裏切った
アスラシャムと一緒に…下界に降りて、死んでしまった
私の…やってきたことはなんだったの!?
その後、四大天使がいなくなってしまい、私たち大天使補佐の四人が、それぞれ大天使になった
しかし、私にはもうどうでもよかった
憎しみをぶつける相手はもういない…
それからしばらくしたある日、神から命令を受けた
魔界の調査だった
「デスト、これが資料だ。」
「ありがとう。」
シルバから資料を受け取る
「瘴気に気をつけてな。」
「私は混血よ。魔界の瘴気ぐらいで死にはしないわよ。」
それから資料を読み返して、思いがけないものを見つけた
"アウストラッツォ家のとり潰しについて"
ただそう書かれた一枚の資料
慌てる心をおさえ、それを読む…
"魔界暦4897年、貴族として魔王から襲名を受ける"
"魔界暦6588年、家督を継ぐ子ができず、ここに没落する"
この間の資料はまったく残っていなかった
「なぜ…?それに、私が引き取られたのは確か…5488年だったはず…。」
このとり潰しは…今からほんの数年前に試行されている
とり潰されるのなら私が連れて行かれた時にされていなければおかしいのでは?
1000年も経ってからとり潰されるなんて…
真実を求めて私は急いで魔界に降りた
半妖の私にとって、悪魔の町を徘徊するのは簡単だった
手当たりしだい、図書館を回って、歴史書を読んだ
そして、ついに一冊の本を見つける
"天魔地暦書<改訂版>"
その本には、ありとあらゆる事実が書かれていた
曲解することのない歴史が、綴られていた
その中の一ページ、"アウストラッツォ家の歴史"
そこにはこう書かれていた
"5489年、神により、家督断絶が言い渡される"
"理由は、悪魔貴族の乱立による格の低下を防ぐためという、一方的なものからよる"
"5489年、大天使アストラディウスの抗議により法の試行の取りやめが決まる"
"6588年、大天使アストラディウスの死により、神によって断絶法が再試行される"
「…あの人が、家を…お父さんとお母さんを守ってくれたっていうの…?」
これを読む限りではあの人が、断絶を中止させたと書いてある
「もっと…こういうことは早く言いなさいよ…!」
涙が止まらなかった
二人に会うために戦った日々を破り捨てたあの人
そう思って、ただ憎んで、復讐したくて、ここまで来たのに…
私は、あてもなく魔界をさまよっていた
このまま、二人のもとにいこうか、そう考えて、歩いた
二人は、もういないと思っていたから…
二人のいない世界には未練はなかった
死んでしまってもよかった
それで、二人のもとにいけるのなら…
しかし、町の中心にさしかかったとき衛兵に呼びとめられた
「申し訳ありません、身分証を提示してもらえますか?」
「ええ、どうぞ…。」
私は天魔界通行許可証を渡した
すると一人の衛兵が
「あなた、アウストラッツォ家の!?」
「それが…どうしたの?」
「実は、ご両親から捜索願いが出ていまして…。」
「…え?」
衛兵に連れて行かれた場所には、高級住宅街の一角だった
その家には、二人が…驚いた顔をして、私と向いあっていた
「お、父さん…お母さん…?」
「デスト…無事だったんだね!?」
「おお、デスト…大きくなって…。」
私たちは抱きあって、声にならない声でいっぱいしゃべった
話したいことがたくさんある
聞きたいことがたくさんある
その日、久しぶりに親子で食事をとった
「ごめんな、デスト。こんな不甲斐ないお父さんを…許してくれ。」
「ううん、生きていてくれた、それだけで…私…。」
「これも、アストラディウス様のおかげなんだよ…。」
「え!?」
思いがけない言葉がお母さんの口からこぼれる
「あの人がね、家が断絶されそうな時に助けてくれたのよ。」
「あの人がいなければ…私と母さんは、神に…殺されていたんだろうな。」
げんに、他の多数の貴族の人は、殺された人もいた
理由は、子孫による家の再興を防ぐため、だそうだ
「そういえば、こんなことを言っていたが…。」
"私は、あの子にひどいことをしてしまいました…。せめてもの罪ほろぼしなんです。"
「そう言って、たくさんの貴族の人を助けてくれたんだ。」
お父さんとお母さんは、そう言った
私は、そんなことも知らずに、ただ憎んで…
「おい、どうした?どこか痛いのか?」
自然と涙がこぼれていた
「ううん、私…あの人に、ひどい事…していたから…。」
「そう…でも、あの人はきっと許してくれるわ。」
お母さんは、私の頭をなでてくれた…
本当に、許してくれるの…?
その答えは、もう聞くことはできない…
その夜は本当に久しぶりに、二人と一緒に寝た

「デスト…行くのか?」
朝、別れ際にお父さんが聞いてきた
「うん、行くわ、私…。」
このまま隠れてここに三人で暮らしてもよかった
でも、私には神に…用ができたから
「帰らないと、いけないから。」
「いつでも帰ってきてね、デスト。ここがあなたの家なんですからね。」
「うん。分かってます。」
「それじゃ、元気でな…。」
そして私は天界へと戻った
そしてすぐに、神の元へ赴いた
「ディベリウス様、一つお聞きしたいことが…。」
「なんだ、デスト?」
「なぜ、我々の管轄外である魔界に貴族のとり潰しを施行したのですか?」
確かに我々は、この世界の全てを掌握していた
しかし、それぞれの国には、ある程度の治外法権など、その国ごとのやりかたがあった
もしとり潰しを行うのならば、魔界の王が命令を下すべき
「気に入らなかったからだ。」
「は?」
「私が作った世界だというのに、魔物の分際でいっぱしの口を開くものでな。」
「いったい、どういう…。」
「治外法権だのなんだのと私のやることにいちいちつっかかってきたのでな。見せしめに殺しただけだ。」
この人は…本当に神なの?
たったそれだけの理由で…何百人という貴族を殺したっていうの?
「そうだ、デスト。お前に頼みがある。」
「は、なんなりと。」
「アストがくだらんことをしていたらしい。貴族の生き残りがいると報告が入ってな。」
「それで、私に…なにを?」
「全員殺してこい。」
全身に衝撃が走った
「な、なぜいまさらそんなことを?もう放っておいては…?」
「どうも、アストに助けられた恩に報いようと、生き残りどもが決起しようとしているらしいのでな。」
…誰、こんな報告をしたのは…
そんな話し、お父さん達はもちろん、他の貴族の人もしていなかった
「ディベリウス様、私の調査ではそのような事実はまったくございませんでしたが…?」
「かまわん。適当な理由をつけて殺してしまえ…。」
「そんな、むちゃくちゃな…!」
「私は忙しいのだ…さっさと行くがいい。」
「ちょっ、…お待ちください、ディベリウス様…!」
ディベリウスは耳を貸さず、そのまま自分の部屋に行ってしまった
そんな…私に、みんなを殺せっていうの…?
そんなことできないわ…!
私は、天界を出た
こんな国、もうまっぴらごめんだわ…
もし天使どもが来ても、私がみんなを守ってみせる
そう思って魔界へと再び降り立った
しかし…
「嘘よ、なんで…!?」
すでに町は天使達によって破壊し尽くされていた
「瘴気は…?なんで、無事なのよ!」
天使は、瘴気には対性を持っていないはず
どうして…?
私は家に向った
せめて、二人だけでも…
「あ、デストリアス様!」
家の前に、数人の天使の兵士達がいた
「あなた達!なにをしているの!?」
「なにって…神の命令で貴族狩りを…。」
「すごいんですよ!貴族一人につき賞金が出るんですからね…。」
「私なんて、三人もしとめたんですよ!」
「あなた達、瘴気は…?」
「ああ、この間ティストーラウ様に教わったんですけど、魔物の血を翼にかけるんですよ。」
「そうすると、瘴気だけを遮断してくれるんです。」
そう言って兵士達は翼を広げた
兵士達の翼は紅く、黒くぬめっていた
うかつだった…
ティスも私と同じ魔界の出身だったわね…
まさか、自分の仲間を裏切るなんて思わなかったけど
あいつ…帰ったら殺してやる…!
「おーい!二人まだ隠れていたぞ!!」
兵士達が一斉に声のほうに駆け寄る
「へへ、これで二人分の賞金追加だな!」
「楽な任務で大きな稼ぎ!いつもこうだったらいいんだけどなー。」
「それを言うなって。」
そこにはお父さんとお母さんの姿があった
殴られたのか、顔は赤くはれていた
二人とも呼吸も弱々しく、私には気づいていなかった
「どうします、デストリアス様!」
一人の兵士が私を呼ぶ
そのせいで二人は私に気づいてしまった
「デスト…?」
「おい!貴様ごときが大天使の名前をきやすく呼ぶな!」
そう言って二人を殴りつける
「やめなさい!」
「え?デストリアス様、なにを言ってるんですか?」
例え神を敵にまわしても、私は二人を助ける
下級天使が束になろうと、私の敵じゃない…
斬ろうとしたとき
「ディアリリス・ラストゥ・ティズカートラド。」
これは、魔界言語…?
悪魔にしか聞き分けることできない言葉
案の定天使どもは顔に「?」を浮かべている
でもお父さん、私には…できないよ
「ディアリリス・ラス・ニナンスティア…。」
「気色悪りぃ…さっさと殺しちゃいましょうよ?」
「デ・ラストゥ・シスラドラ。」
「イル・スラス・ティンカラ…?」
"私たちを殺しなさい"
"私たちはかまわない…"
"あなたは生きなさい"
"神に疑われますよ?"
私は、二人を斬った
二人を見ないように、遠くを見て
泣かないように、表情を殺して
「それで…いいのよ…。」
お母さんは笑っていた
「おまえだけも…生きてくれ。」
お父さんも笑っていた
だけど私は笑わなかった
泣きたかったけど我慢した
二人は最後に私との関わりを絶った
私が、悪魔とつながっていると神に疑われないように…
私は、なんて悪い子なんだろう…
「デストリアス様…この二人と知り合いなんですか?」
「…いいえ。それより、殺した悪魔を丁重に埋葬してあげて。」
「は?なぜ…?」
「さっさとしなさい!」
「はい!し、失礼しました!」
せめて、お墓だけでも、私の手で…
私は二人の墓前に誓った
いつか、必ず敵をとると
それまで…待っていてね、お父さん、お母さん…
そして、私は神に報告をしに天界に戻った
「…合計18人の貴族の生き残りを始末しました。」
「そうか、ご苦労であった。」
「それでは、私はこれで…。」
これ以上ここにいると神に斬ってかかりそうだった
そして、一礼すると背を向けた
だけど、私は…この一言に打ち砕かれた
「ところで、どうであった?」
「…なにがですか?」
振り返らず尋ねた
「実の両親を殺した感想だよ。」
辺りの時間が止まった気がした
この人は、全て知っていたのだ
私と悪魔との関係を…
知っていて、私を、魔界に行かせた
わざと、天使が町を荒らした頃合を見計らって…
「…私を捨てた親ですから。特になにも…。」
二人の犠牲を無駄にしたくなかった
だから私は、そう答えた
「そうか。…下がっていいぞ。」
「…失礼します。」
バタン
その夜を堺に、私は泣くことを、感情を出すことをやめた
その後、罪を犯した者は、天使、悪魔問わず、その場で切り捨てた
不穏分子は全て、私が斬った
そのかいもあって、歴史は神の思い通りに動きつづけた
「これもお前達の働きのおかげだ…礼を言うぞ。」
…いつか、見ていなさい
その幸せの絶頂から…叩き落としてやるから
そう思って、私はくる日もくる日も神の隙をうかがった
そして、そのチャンスはやってきた
天界全土の交流試合
天界で腕に自身のある天使が集まって力を競い合う
今までにもやってきたことだが、今回は違った
優勝者には願いを一つ叶える権利が与えられる
これに勝てば、願いは叶う
「第一試合、デストリアス対ティストーラウ!」
初戦、大天使対大天使のデモンストレーション的な試合
でも、私はあの時の恨みを晴らすことにした
仲間を裏切った、ティスに対して…
「なあ、デスト。わざと負けてやるからさ、今度…」
「…全力で、いかせてもらうわ。」
力を開放する
「おいおい、まじかよ…!」
ズバア!!
一瞬で勝負はついた
あの人と互角なこのスピード
誰も、追いつくことはできないわ
ティスはその場に崩れ落ちた
「勝者、デストリアス!」
私はティスを抱き起こすふりをしてささやいた
「ピアスニア・ラス・ニナンスティア…」
"裏切り者には死を…"と
その後、たいした相手もなく、私は簡単に優勝した
「さすがはデストリアス。約束通り願いを叶えてやろう。」
…この時を、どれだけ待ち望んだかしら
「は、ありがたく、述べさせていただきます…あなたと、手合わせをしていただきたいのです。」
会場にどよめきが起きる
「はっはっは、そんなことでよいのか?いいだろう、久しぶりに、私も運動するとしようか。」
…余裕なのは、今のうちだけよ
私の計画は、事故に見せかけて神を殺す
なんの小細工も要らない
全力で…叩き潰す!!
「よし、いくぞ…。」
神が力を開放する
凄まじい圧力…
でも、この程度なら!
「はあああ!!!」
全力で、斬る、斬る、斬る!
しかし
神のスピードは、半端ではなかった
力も、技も、格段に上だった
かなわない…
私の、力ではかなわない
もしも翼が八枚あったなら
ついていくことぐらいは、できるかもしれない
結局その願いは私の敗北で終わった
「さすがはディベリウス様…私では足元にも及びませんね。」
「いやいや、なかなか楽しかったぞ。」
やっぱり、神に勝つのは不可能なの?
そんなことはないわ
あれこれ考えを巡らせていたとき
アストの復活という話しが浮上した
まだ覚醒はしていないけど
あの人なら、もしかしたら…
最後のチャンスかもしれない
覚醒させて、力を取り戻らせれば、神を倒せるかもしれない
私がもし、八枚になったとして、それに勝てる力を持っているなら
神を…殺せるかもしれない




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