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Original Novel Yuki Presents



終わらない夏


第二幕

旧夏



1986年 夏・出逢い


「ねえ、お母さん。今からどこに行くの?」
「おばあちゃんのお知り合いの家よ。」
僕は夏休みにおばあちゃんの家に遊びに来ていた
僕の住んでいる家からはすごく遠いけど、すごく長い間車に座って退屈だけど
おばあちゃんが大好きだから僕は我慢できた
そしておばあちゃんの家に着いてすこしたったある日、僕たちはまた車ででかけた
そして
「ほら夏樹。ついたわよ。」
「わあ、すごい!」
お母さんが言ったとき、そこは一面が緑色の草で一杯だった
ずーっとずーっと向こうまで緑色だった
そこには牛さんがいた
お馬さんも、わんちゃんも、うさぎさんもいた
僕は友達になりたかったけど、お母さんが危ないから近寄っちゃだめって言った
だから僕はすごく退屈だった
だから僕はそこでごろんって寝転んだ
しばらくすると誰かやってきた
僕は起きあがってそっちを見る
「…君、誰?」
「わたしはさつき。あなたは?」
「僕はなつき。ここは君のおうち?」
「うん、そうだよ。ねえ一緒に遊ぼうよ!」
「うん!一緒に遊ぼう!」
僕たちはそのあと空が赤くなるまで遊んだ
お馬さんに触って、牛さんにもお〜って鳴かれて、
わんちゃんにおっかけられて、うさぎさんと遊んで…
すごく楽しかった
さつきちゃんもすごく楽しそうだった
「ねえ、なつきくんは…この近くに住んでるの?」
「ううん。車でずーっと長い間乗っていったところに住んでるんだ。
 今はおばあちゃんの家に遊びに来てるの。」
「そっか…じゃあすぐに帰っちゃうんだね。」
さつきちゃんがすごく悲しい顔をしてうつむいた
なんでかわからないけど僕もすごく悲しい気持ちになった
「でも、また来年の夏に、遊びにくるよ!」
だから僕はさつきちゃんを励ましたくてこんなことを言った
お父さんはいっつも忙しそうにしてるから、わからないのに…
お母さんに嘘はついちゃいけないって言われてるけど
さつきちゃんを笑わせるために僕は…嘘をついた
「ほんと?」
「うん、ほんとだよ!」
さつきちゃんの顔がすごく嬉しそうに笑った
僕もすごく嬉しい気持ちになった
その日はそれでばいばいになった
でも僕はおばあちゃんの家にいる間、さつきちゃんの家に遊びに行った
体の小さい僕にはとっても遠いところに感じたけど
さつきちゃんに会うために僕は毎日歩いた
だけど、家に帰る日がやってきた
僕はお父さんとお母さんに頼んでさつきちゃんの家に寄ってもらった
そこで僕はばいばいをした
「うえーん…。」
さつきちゃんは泣いてしまった
僕も泣きたかった
だけど僕は男の子だから我慢してこう言った
「また来年遊ぼうね!」
こうして僕の出逢いの夏が終わった


1987年 夏・約束


僕は頑張ってお父さんとお母さんのお手伝いをした
毎日毎日頑張ってお手伝いをした
そしてお願いした
「今年もおばあちゃんの家に行きたい!」
って
そしたらお父さんは
「そうか、夏樹は頑張りやさんだから、ご褒美に連れて行ってあげるよ。」
やった!僕の言ったことは嘘にならなかった
また今年もさつきちゃんに会える
そう思ったら僕は全然眠れなかった
そしておばあちゃんの家についた
だけど、おばあちゃんがいなかった
“びょういん”で“けんさ”を受けてるんだって
僕はびょういんはきらいだった
へんな匂いがするし、注射をされるからきらいだった
だから僕は行きたくないと言った
そしたら僕だけさつきちゃんの家においていってくれた
すごく嬉しかった
久しぶりにさつきちゃんに会える
そしてまた僕は緑の上にごろんと寝転んだ
しばらくすると足音が聞こえてきた
また僕は起きあがって確かめた
「なつきくーーん!!」
「さつきちゃん!久しぶり!」
さつきちゃん、僕のこと覚えていてくれた
すごく嬉しかった
「なつきくん、変わってないね…。」
「さつきちゃんだって変わってないよ。」
あ、でも…僕より背が高くなってる
「そうかな。よかった。」
そしてその日もいろんなことをして遊んだ
でも僕はよく分からないことを聞いた
「かくれんぼしよう!」
「うん!いいよ!」
じゃーんけーん、ぽい!
僕は「ぐー」、さつきちゃんは「ぱー」
「あ、僕の負けだ。じゃあ僕がおにだね。」
「うん、じゃあ私は隠れるね!」
さつきちゃんが走っていく
僕は10かぞえると探しに追いかけた
お馬さんの家に近づいた時、さつきちゃんのおばさんの声が聞こえた
「あんた、本当にこの土地、私らのものになるのかい?」
「ああ、澄原のばあさんが亡くなったんだ。それに借金のほうも時効だしな。」
「そうかい、これでもうあの澄原家に頭下げなくていいんだね。」
「そうだ、あの子供。もう皐月に近づけるなよ。機嫌をとる必要もないからな。」
僕にはなんのことか分からなかったけど
俺は今でもはっきりと覚えている
そのあと僕はさつきちゃんと一緒に遊んだ
そこで僕はいいことを思いだした
お父さんが前に言っていたこと
親しい人とは“めいしこうかん”をするそうだ
「ねえさつきちゃん。めいしこうかんしよう。」
「…めいしこうかんって、なに?」
きょとん、とさつきちゃんがこちらを見る
僕もよくは知らないんだけど…
確かこれぐらいの紙に住所と名前が書いてあったような気がする
僕はようちえんのかばんから紙とエンピツを出した
それに頑張って覚えた名前を漢字で書く
“澄原 夏樹”と
…うーん、住所は難しい漢字が多いからひらがなでいいかな?
「はい、これが僕のめいしだよ。」
それをさつきちゃんに手渡すと
「へぇー、なつきくんて、夏樹くんっていうんだ。」
じゃあ私も、とさつきちゃんもめいしを書く
「はい、これが私のめいしです。」
そこには僕と同じように名前と住所が書かれていた
住所はひらがなだったので読めたけど名前がすごく難しかった
“櫛田 皐月”…?
「えーと、なんて読むの?」
「くしださつきだよ。すっごく難しくて覚えるの大変だったんだよ。」
「へー、さつきちゃんって皐月ちゃんっていうんだね。」
それが終わるとまた僕らは緑が赤くなるまで遊んだ
もっと遊びたかったけどお母さんが明日はだめって言った
なんでもおばあちゃんが遠いところに行ったからお見送りするんだって
なんで泣いてるのかな?
遠いところに遊びに行くのなら楽しいのにね
次の日は僕は幼稚園の制服を来て、おばあちゃんを見送りに行った
おばあちゃんは木の箱に入って眠っていた
お花に囲まれてとても幸せそうに眠っていた
でもみんな泣いていた…なんでだろう
僕には分からなかったけど
みんなが泣いているから悲しかった
それから僕はすぐに帰ることになった
皐月ちゃんにお別れしたい、と言ったらお父さんは
「いいよ。行こうか。」
と言ってくれた
僕は皐月ちゃんにばいばいを言いに行った
「うえーん…。」
また皐月ちゃんは泣いていた
「泣かないで。また来年も来るよ。」
「うん…わかった!」
皐月ちゃんは笑顔で答えてくれた
だから僕も嬉しくなった


1988年 夏・再会


また今年も夏がやってきた
また今年も僕は頑張ってお手伝いした
「ねえ、今年もおばあちゃんの家に行くの?」
でもお父さんは
「そうだね、今年は一回忌だから、おばあちゃんの家に行こうか。」
僕は嬉しかった
一回忌とか、よく分からないけど嬉しかった
そして今年もおばあちゃんの家に行くことになった
また皐月ちゃんに会える!
今年は僕も背が伸びた
皐月ちゃんを追い越してるといいな
だからまた緑まで歩いて、ごろんと寝転んだ
また誰かやってきた
僕は起きあがった
「わあ…!」
皐月ちゃんだった
お馬さんに乗っていた
「すごいよ、皐月ちゃん、お馬さんに乗れるんだ!」
「うん、あれから毎日練習したんだよ。」
「すごいなー。お馬さん、おとなしいね。」
お馬さんはぶひひん、と鳴いた
しっぽをぱたぱた振って、僕に挨拶してくれた
「夏樹くんも乗ってみる?」
「いいの?」
「大丈夫。この子すごくおとなしいから。」
僕は皐月ちゃんに手伝ってもらってお馬さんに乗った
お馬さんはすごく早く走った
「あははは!すごい、すごいね!」
「うん、私お馬さんに乗るの大好きなの!」
その日もまた空が赤くなるまで遊んだ
そろそろばいばいしようか、と言った時
バキッ!!
………………
時間が止まった
僕には何が起こったか分からなかった
お馬さんが前に倒れこんだ
僕も皐月ちゃんもただそれに流されるように、一緒に空に飛んだ
僕と皐月ちゃんは緑の上に叩きつけられた
僕の体は動かなくなっていた
どこも痛くないのに動けなかった
目の前には赤い空
どこまでも続く緑の上の赤い空
しばらくして皐月ちゃんが来てくれた
「夏樹くん、大丈夫!?ねえ!」
「…う、」
なにも喋れなかった
皐月ちゃんが泣いている
どうしてだろう?
僕の名前を何度も何度も呼んでいる
聞こえてるよ?皐月ちゃん
だから…泣かないで


1988年 夏・病院


「夏樹!気がついたか!?」
僕が次に聞いたのはお父さんの声だった
「ああ、夏樹…よかった…。」
お母さんも泣いていた
目の前には白い天井
匂いで分かった
ここは病院だ
僕の嫌いな場所だ
「ねえ、どうして僕はここにいるの?」
「夏樹、もうあの子にあっちゃだめよ。」
「なんで!?」
「あの子と遊んでいて夏樹は大怪我したんだよ。もう病院にはきたくないだろう?」
そういえば、少しだけ覚えている
皐月ちゃん、泣いてた…
僕は怪我も病院も嫌だ
だけど皐月ちゃんに会えなくなるのはもっと嫌だった
「いやだ!僕、皐月ちゃんに会いたい!」
「夏樹!言うこと聞きなさい!」
「いやだ!」
「母さん、いいじゃないか。…どうせもう来ることはないんだ。」
え?どういういこと…?
「なんで?もうおばあちゃんに会いにこないの?」
そう言うと二人はとても困った顔をして
「…夏樹、もうおばあちゃんは帰ってこないのよ。」
「おばあちゃんはね、遠いところに行ってしまったんだ。だからもう帰ってこないんだ。
 だからもう、ここに来ることはないんだよ。」
「いやだ!僕…皐月ちゃんにまだばいばい言ってないよ!」
「夏樹!あなたはあの子のせいでこんな目に会ってるのよ!?
 夏樹が…怪我したって聞いた時、お母さんすごくびっくりしたんだから…!」
お母さんは僕を抱いた
お母さんの気持ちはよく分かるよ
でも、僕は皐月ちゃんに会いたい
「さ、母さん。夏樹はまだ入院が必要だから。今日のところは帰るよ。」
「そうね…夏樹、なにかあったら看護婦さんに言うのよ?」
「うん、わかった。」
二人は部屋から出ていった
僕はすごく退屈だった
皐月ちゃんに会いたかった
お馬さん、大丈夫かな
あの時すごい音がしたよ?
大丈夫かな、さつきちゃん
泣いてたけど、大丈夫かな…


1988年 夏・別れ


僕は二日ぐらいベッドの上で寝ていた
別にどこも痛くなかったけど、寝てなさいって看護婦さんに言われた
だから寝ていた
しばらくしたら二人がやってきて
「さあ、夏樹。もう怪我のほうは大丈夫だから。家に帰ろう。」
「うん…でも僕まだ皐月ちゃんにばいばい言ってないよ?」
「いいのよ、夏樹。皐月ちゃんはもうあなたに会いたくないんですって。」
お母さんは嘘をついている
お母さんはいつも嘘をつく時必ず目をそらすんだ
だから僕にはわかった
「いいかい、夏樹。今はまだ分からないかもしれないけど、皐月ちゃんは夏樹に酷いことをしたんだ。
 だから、もう会っちゃいけないんだよ。」
僕にはまだわからないこと?
だったらまだ今の僕にはわからない
何が酷いことなのかわからないから、皐月ちゃんに会いたい
「それにまだ夏樹の怪我は完全に治っていないんだ。
 家に帰ったら違う病院に行かなければならないんだよ。」
「じゃあ、帰る前にばいばいが言いたい。」
「じゃあ、また来年にしよう、夏樹。」
「あなた!」
お母さんが怒る
なんでだろう
お父さんはお母さんのほうをしばらく見た
「さあ、夏樹。楽しみは来年にして帰ろうか。」
「うん、わかった。」
今年の夏は皐月ちゃんにばいばいが言えなかった


1989年 夏・希薄

また夏がやってきた
いつの間にか僕は自分のことを“俺”と言うようになっていた
それと、女の子を“ちゃん”づけで呼ぶのが、なぜか恥ずかしかった
それに女の子と仲良くしていると友達がなにか言ってくるのであまり遊ぶことはなくなった
去年までは必ずおばあちゃんの家に行って皐月ちゃんに会いに行くんだけど…
これを思いださせたのはあの時に交換した名刺のせいだった
俺は今年はどうしよう…と思った
去年、約束しなかったのに…行ったって、絶対忘れちゃってるよ
どうしようかな…友達と遊んでたほうが楽しいよな
うん、そうしよう
あれから何も連絡をとっていないわけだし
宿題もたくさんあるし…今年はいいか
そう思って俺は名刺を捨てた
「おーい!夏樹ーー!遊ぼうぜーー!」
「わかったーーー!今行くよーー!」
せめて電話番号ぐらい聞いておけばよかったかな
まあいいか、ばあちゃんち、遠いし
それより友達が待ってるし
さっさと行くか


1990年 夏・事実


「行ってきまーす!」
「こら夏樹!宿題しなきゃだめでしょ!!」
「ええ〜、明日やるからさー!」
「だめ!昨日も同じ事言ってたじゃないの。今日は遊びに行っちゃいけません!」
「ちぇ〜、わかったよ…。」
仕方なく俺は友達と遊びに行くのを諦めて机に向った
「だいたい、量が多すぎるんだよ。」
などとぶつぶつ言いながらも宿題にとりかかる
最近お父さんが出張とかで家を長い間留守にすることが多くなった
それからとういうものお母さんは俺に対して事細かに注意するようになった
お母さんの言いたいことはよく分かる
けどこっちも遊びたい年頃なわけで…
「えーと…社会の宿題、信楽焼きの原材料を調べなさい。」
なんだこれ?小学生の俺に分かるわけないよ
とも言ってるわけにもいかず、俺は辞書を探した
「ええと〜、あれ?辞書…辞書…と。」
ないぞ?確かにここにおいといたのに
まあいいや。お父さんの部屋に本がたくさんあったから、辞書ぐらいあるよな
俺はお父さんの部屋へと向った
部屋を出ると洗濯機が回る音と掃除機の音がうるさかった
そしてお父さんの部屋で本を探す
しばらくして一冊の辞典を発見した
「…ええと、これぐらい分厚いなら載ってるよな。」
子供の俺には少し持つのに苦労する重さだった
なんとかして本棚から引っ張り出そうとする
バサバサバサ!
「…結局、全部落ちるわけだ。」
無理に引っ張ったせいで両脇の数札も一緒に落ちてきた
幸い下の音に負けてこの騒ぎはお母さんには気付かれなかった
でも、それにしてもすごい音だな…下
「まあいいや。それより早く片付けよう。」
散らばった辞典と紙切れを拾ってはなるべく元通りに戻す
その時数枚の手紙を見つけた
比較的新しいもので、いつもなら見逃していただろう
だけど、封が切られていないことに俺はすごく気になった
それは…もしも見つけなければ幸せだったのに、と思わせるようなものだった
それの宛名には“澄原夏樹くんへ”と書かれていた
胸が高鳴った
その下の差し出し人は“櫛田皐月より”となっていた
どういうことなのかさっぱりわからなかった
あれから一回もなかったという連絡
じゃあこの封筒はなんなんだろう?
慌てる心を抑えて俺は一番新しいものを開ける
その日付は1990年7月28日
“もうこれで10通目になります。夏樹くん、お返事くれないからさみしいです。
 今年、あのお馬さんに赤ちゃんが生まれたんだよ。すごくかわいいの。
 なつきくんにも見せてあげたいです。
 だから連絡下さい。 TEL:○○○−×○△○”
と書いてあった
僕の…時間が動き出した、そんな感じがした
音も、光も、なにも感じないぐらいに心臓の音だけが聞こえている
俺が待ちつづけてたものは、とっくに来ていたのだ
今年も、去年も、おととしも…
このとき初めて俺はお父さんとお母さんを信じられなかった
だけど今この事を話しても二人はここに行くことを許してくれないはずだ
だから俺はこっそりと、公衆電話から電話をかけた
トゥルルルル…トゥルルルル…トゥルルルル…トゥルルルル…
ガチャ
「はい、櫛田です。」
「あ、えっと…。」
僕は名前を言おうとした時
「…夏樹くん?夏樹くんでしょ!?」
「う、うん…皐月、ちゃん…?」
「そうだよ!よかったあ…もう私のことなんか嫌いになっちゃったのかと思ってたの。」
「そんなこと絶対にないよ!…ほんとうに、ごめんね。」
俺は馬鹿だった
皐月ちゃんはずっと俺を待っていてくれたのに
俺はどうでもいいなんて思ったこともある
それなのに、皐月ちゃんは笑ってくれている
涙が出てきた
男が泣くのは恥ずかしいことらしいけど
今の俺は我慢できなかった
「どうしたの?どこか痛いの?」
「ううん、違うよ…なんでもないから。心配しないで。」
「ねえ、夏樹くんは今度いつこっちに来るの?」
「わからない…ううん、来年。来年は絶対に行くよ!」
「ほんと!?やったー!!私楽しみにしてるね!」
「うん!絶対に行くから、待っててね!」
そこで俺のおこずかいは切れた
でもどうやって行こう
おばあちゃんの家はすごく遠い
とりあえず家で調べてみよう
俺はすぐに家に帰ると地図を探した
たしかおばあちゃんの家は…この辺りだった気がする
…そうだ
「ねえ!お母さん!」
「なに?夏樹、あわてて…。」
「おばあちゃんに手紙を送りたいんだ。住所教えて!」
「え?…夏樹、おばあちゃんはもう遠いところに言っちゃったの。だから…。」
「返事はなくてもいいの。だから、教えて。」
「…わかったわ。…はい、これがそうよ。」
お母さんは住所を書いてくれた
目をそらしていないからこの住所は本物だと思った
皐月ちゃんも名前だけじゃなくて住所も書いてくれてるとよかったのに
…ってだめだよ。悪いのは俺なんだから、皐月ちゃんを悪く言っちゃだめだ
くっそー、こんなことなら去年名刺捨てなきゃよかった…
とりあえず俺はお母さんに聞いた住所を調べた
「…ええと、これなら社会で習った“新幹線”で行けるぞ!」
たしか“しんかんせん”は俺なら“子供料金”で大人の半分のお金で行けたはずだ
“来年、来年は絶対行くよ!”
俺は絶対、来年の夏に…皐月ちゃんに会いに行くんだ


1991年 夏


11歳の夏、俺はここに立っている
もう何年も見なかったわりにはあまり変わっていない駅のホームからの景色
一つだけ違うのは、俺が年をとったということだけかな
「子供らしくない発言だな…。」
この間見たTV“47人の侍”とかいうやつの影響かな?
でも、本当に俺は今ここに立つことができた
話は一年前のあの日にさかのぼる
手紙を発見した俺は心に誓った
必ず会いに行くと
それから学校で先生に聞いたりしていろいろ調べた結果
新幹線にのるには年齢制限はない
途中の駅まで乗り換えることなく行けるということ
子供は大人の半分の料金だということ
大人一人分でちょうど往復できる計算になる
俺は貯金箱をあさった
お母さんに言われて仕方なく貯めておいたお年玉
全部で六千円あった
「…だいたい片道分くらいかな。」
あと片道分…一年で貯まるかな
いや、貯めてみせる
そう誓ってから俺は毎月のおこずかいを全部貯金箱にいれた
まんがも、プラモも、ほしかったけど我慢した
お菓子も、アイスも、みんなみんな我慢して貯めた
皐月ちゃんに…会いたい
それだけが俺の思いだった
そしてちょうど夏休みに入る前にお金は貯まった
俺はお母さんにばれないように駅に切符を買いに行った
「すいません、この駅までの切符をください。」
「僕、お母さんは?」
駅員さんはそう答えたので
「俺…僕一人でおばあちゃんの家に行くんです。だから、今日は僕一人です。」
「お、偉いな〜。じゃあ往復切符で禁煙席にしてあげようね。」
よく分からなかったけど買えたみたいだ
それに嘘はついていないぞ、うん
「はい、お待たせ。この日付の間に使ってくださいね。」
「ありがとうございます。」
よし、あとは皐月ちゃんに連絡しよう!
俺は駅の近くの公衆電話に入った
トゥルルルル…トゥルルルル…トゥルルルル…
ガチャ
「はい、櫛田です。」
「あ、夏樹です。ええと…皐月ちゃんですか?」
「あ!うん、そうだよ!お久しぶりだね。」
「皐月ちゃん、俺…明日会いに行くよ!」
「え?ほんとに!?」
「うん、今ね、新幹線の切符も買ったんだ。だから約束通り…行くよ。」
「…うん、私、駅で待ってるからね!」
「うん、なるべく早く行くよ。」
「うん!楽しみにしてるね!」
カチャ…
俺はすごく嬉しくなった
また皐月ちゃんに会える!
そう思っただけで飛び跳ねたくなるぐらい嬉しくなれた
あとは、お母さんになんて言おうかな…
「二日ほど家出します。」
…なんて言えないしなあ
どうしようか…
俺は家に帰ってから悩んでいた
「まあいいか。“友達の家に遊びに行く”って言って出かけよう。」
俺はお母さんにそう言うと
「そう、おうちの方に迷惑かけちゃだめよ。」
とだけ言ってくれた
どうしてだろう?きっと「だめ」って言うかと思ったのに
まあいいや、これで皐月ちゃんに会いに行けるんだし
そうだ、準備しないと
俺はお父さんの部屋にあるリュックサックを内緒で持ってきた
そしてそれにいろんなものを詰め込んだ
大好きなまんが、大好きなチョコレート、大好きなおもちゃ…
会えなかった二年間の俺の出来事を全部話したかった
皐月ちゃんはどんな2年間を過ごしたの?
俺はね、こんな事があったんだよ!
なにから話したらいいんだろう?
それを考えるだけで俺は眠れなかった
そしてついに運命の日は訪れた

1991年 夏・駅

「というわけで俺はここに戻ってきたというわけだ。」
俺はホームを歩く
切符を駅員さんに渡して改札口を出る
確か…この駅には南口と北口の二つ出口があるはず
皐月ちゃんとの約束は…北口だったな
俺の記憶が正しければ、南口には駐輪場があって車が入れなかったはずだ
ここからさつきちゃんの家までバスで15分ぐらいとか言っていたっけ
「…迎えに来てくれてるらしいけど…どの辺かな?」
俺は北口を出ると駅に面している道路まで歩く
こうすれば皐月ちゃんも俺を発見しやすくなるだろうし
きょろきょろ…ん?
道路を挟んで向い側にあるバス停に一人の女の子がこっちに手を振っている
皐月ちゃんだ!!
嬉しかった
また…会えたんだ、そう思うだけで俺は満足だった
今日は緑の上で遊んで、馬に乗って、うさぎとかけっこして…
明日は近くの川に行って、泳いで…
頭の中が楽しい未来でいっぱいになる
皐月ちゃんがこっちに走ってくる
俺もすぐに走っていきたかった
だけど、2年間の空白が、皐月ちゃんを忘れかけた心が
俺の足を…止めた
今更どんな顔をして会えばいいんだろう?
そんなくだらない考えが頭をよぎる
せっかくここまで来たのに…
だけど、そんな気持ちも
「夏樹くーーん!!」
皐月ちゃんの声でかき消される
その声で俺の視点は地面から皐月ちゃんへと移される
俺はできればそのまま現実から目を離したままならよかったのに
そのことで、その一瞬を見ることになってしまったことを後悔した
パパーーーーーーーッッッッ!!!
キキーーーーーーーッッッッ!!!
「え?」
そのせいで…俺はこの光景を、自分自身に「嘘」だと思いこませることができなかった
そう…自分自身の目で見てしまったばっかりに…
電車が到着した駅
それに合わせてバスが到着した駅
それを利用していた家族を迎えに来る車で大賑わいだった駅
そのざわめきを一瞬で止めてしまう
皐月ちゃんが…視界を横切る
車は止まったままだった
俺はすぐに皐月ちゃんに駆け寄った
考える前に体が動いた
「皐月ちゃん!!」
皐月ちゃんは動こうとはせずに赤の上に倒れていた
「皐月ちゃん!皐月ちゃん!皐月ちゃん!」
俺は名前を呼び続けた
だけど皐月ちゃんは動かない
俺はぎゅっと手を握った
皐月ちゃんの手は握り返してこない
でも…皐月ちゃんは笑っている気がする
道路の上の赤が大きくなっていく
「皐月ちゃん!皐月ちゃん!皐月ちゃん!」
俺はなおも皐月ちゃんを呼びつづける
すると
ぎゅ…
「皐月ちゃん!!」
「…ごめんね。」
にこっ
!、!、!
この笑顔を・・・なぜだか忘れようとした
それは笑ってくれるなんて、という俺の考えに反していたせいもあった
それよりも俺はなぜかもうこの笑顔を見ることはできないんじゃないのかと思ってしまった
一度でもそう思ってしまった俺に一気に苦痛が押しかかった
“もう見ることができないのなら、初めからなかったことにしてしまえ”
そう俺の心の一部がつぶやいた
この笑顔を消してしまえば…思いださなければ俺に苦痛になることはない
ならば…消し去ってしまえばいい
でもそれはできなかった
それをするほうが俺には苦痛になってしまうかもしれないから
そうしたら俺は…この手を離せなかった
今度この手を離したら…もう二度と会えない
二年間ぐらい会えなかったことなんてちっぽけなものに見えてしまうから
おばあちゃんのところにいってしまう
なぜかそう思った
涙が溢れる
止める事はできなかった
「おい!大丈夫か!」
その時誰が呼んだのか救急車が来ていた
だけどその声も俺には届かない
俺は止まってしまった笑顔を見つめていた
固く、固く握り合った手を離すことはできなかった
「ほら!病院に運ぶから、手を離しなさい!!」
俺は絶対にこの手を離さない!
だから…だから、俺を忘れないで…
俺はそのまま一緒に救急車に乗った
白い服を着た人達は救急車の中で忙しそうに動いていた
「もしもーーーし!!聞こえますかーーー!!」
そんなに怒鳴らなくても聞こえてるよ
俺もあの時、皐月ちゃんの声が聞こえてたんだから
きっと今も聞こえているはず
だから…
「ねえ、皐月ちゃん、聞こえてるんでしょ?ううん、返事はしなくていいから。」
「こら!邪魔だから離れなさい!」
俺は強引にひき剥がされる
それでも俺は語りつづけた
「ねえ、皐月ちゃん。ごめんねなんて言わないで…。
 俺は…今日会えてすっごく嬉しいんだから…さ。」
すると
「……。」
にこっ…
「もしもし!大丈夫ですか!?」
おじさんが必死に皐月ちゃんに呼びかけている
でも皐月ちゃんの笑顔は…俺に向けられていた
そして、俺のほうへと弱々しく、一途に伸びてくる手
俺はそれを固く、固く結んだ
「君、この子の友達かい?」
おじさんが俺に聞いてきたので
「…うん。親友だよ。」
俺はそう答えると
「よし、じゃあこの子が眠らないように呼びかけてもらえるかい?」
「うん、わかった。」
おじさんに言われて俺はさつきちゃんに話し掛けつづけた
皐月ちゃんにはきっと聞こえているから
俺は話し掛けつづけた
「おい、もっと急げないか!?このままだと…!」
「はい、いつもの道が工事していて迂回したんですが…、
 地元車がこっちに迂回してきているようです。」
なにやらおじさん達は話しあっていた
それから救急車は揺れたり止まったりを繰り返していた
しばらくするとサイレンがやんでどこかに着いたようだ
後ろの扉が開くと、看護婦さんとお医者さんがいた
みんなで救急車から皐月ちゃんを運び出す
俺は皐月ちゃんと一緒に救急車から降りる
「状況は!?」
「血圧100の55。バイタル68です。」
「よし、レントゲンとCTの準備、急いで。」
「はい!」
おじさんとお医者さんと看護婦さんが慌てている
皐月ちゃん…大丈夫じゃないのかな?
「ほら、君はここで待っていてね!」
看護婦さんに言われて俺は皐月ちゃんの手を離す
俺はこの場はお医者さんに任せるしかないような気がした
そして、その時にまた一瞬見えてしまった笑顔が…心に刻まれた
しばらく3時間ほど一人で座っていた
ゆっくりと時間が流れているように感じる
…なんで俺がここにいるんだろう?
皐月ちゃんは今、痛い目にあっているかもしれないのに
…なんで俺はここにいるんだろう?
俺が車にひかれればよかったのに…
俺があの時迷わずに飛びだしていれば、駆け出していれば…
俺がひかれるだけですんだのに…
また俺は…皐月ちゃんを悲しませてしまうのだろうか
2度も…俺は皐月ちゃんを…傷つけるのか
もしも、もしも俺があのままさつきちゃんを忘れていれば…
こんなことにはならなかったんじゃないのか?
もしも俺が会いにこなければ…皐月ちゃんは駅に来ることはなかったんじゃないのか?
子供だった俺の精一杯の責任転嫁だった
俺が接してしまったせいで…皐月ちゃんは…
「皐月!!」
その時皐月ちゃんのお母さんがやってきた
だけど俺は一目もくれずに思いつづけていた
俺の責任にすることで、俺のせいにすることで俺の気持ちがまぎれるのなら…
「先生!皐月は…皐月は!?」
「今はまだなんとも言えませんが…きわめて危険な状態です。」
「そんな…!」
おばさんがその場にしゃがみこむ
するとちょうど俺と目線の位置があってしまった
「あなた…まさか!?」
おばさんは俺がここにいることにひどく驚いたようでしばらく俺のほうを見ていた
そしてこっちに向かってきながら
「飛びだしたなんておかしいと思ったのよ…。少し前から落ちつかなくて、
 なにか隠してると思ったら…こういうことだったのね!!」
そして俺の肩を掴み
「あんたが皐月を…突き飛ばしたんでしょ!!」
「ち、違う…!俺はそんなこと…!」
「いいえ!そうに決まってるわ!あの子は…皐月は道路に飛びだすような子じゃないわ!」
「櫛田さん!子供相手になにをしてるんですか!」
看護婦さんとお医者さんがおばさんを俺から引き離す
おばさんはそれを振りきろうとしながらこう言った
「あんたが…あんたが皐月を殺したんだ!!」
その言葉に俺は…特に衝撃を受けなかった
ああ、そうか…やっぱり俺が殺しちゃったのか…
そう思いこませる程度にしかならなかった
俺が殺した
俺が殺した
俺が殺した
俺が…殺した
ただそれだけを思っていた
だからその後どうなったかも覚えていない
お母さんもあの子は死んだ、とだけ伝えてくれたから
だからそう思うだけだった
その思いは年月と共に俺に刷りこまれていった


1997 夏・初恋


高二の夏
忘れられない夏からすでに6年
俺は人並みの生活を送っていた
あの時のことはほとんど覚えていない
ただ今分かることは「嫌なことだった」程度にすぎなくなっている
ふっきれた、というのは少し不謹慎だろうか?
以前テレビで人間は恐怖に対し夢で自己暗示をかけ恐怖に打ち勝とうとする
しかし忘れなければならないこと、自分で閉じた事柄においてはその限りではないそうだ
俺の場合は後者なんだろうな
俺はあれから立ち直るのに一年の歳月が必要だった
じっと家に閉じこもるようになっていた
俺に関わる人は殺してしまう
そう思ったら家族でさえまともに接することができなかった
ちょうど一年が経った日の夜
俺はあの光景を夢で見た
目の前で跳ね飛ばされる皐月ちゃんの姿を、もう一度目に焼き付けた
嫌な夢のはずなのに、その日の朝は信じられないほどまぶしくてすがすがしかった
後にも先にもその夢はそれっきり見ていない
しかしそのおかげで俺の気持ちに一つ整理がついた
皐月ちゃんが死んだ原因の一つが俺であることは変わらない
だけどそれはもうすんでしまったことなのだと
過去のこととして片付けるのは卑怯かもしれないけど…
一つ整理することができたおかげで俺はまた少しづつ戻っていけた
今思えば皐月ちゃんのおせっかいだったのかもしれないな
俺の沈む姿に見かねて、降りてきてくれたのかもしれない
いつまでも悩んでちゃだめだよ、って…
これこそ俺の身勝手でどうしようもない傲慢かもしれないけど
悲しんで、涙を流して人が帰ってくるなら俺はいつまでも泣きつづけるだろう
でも、現実にはそんな事はないんだから
だから、俺はその夢を目に焼き付けた
そうすることでそれ以前の楽しい思い出や…苦しかった思い出と共に、
俺の心の中で皐月ちゃんの笑顔は今も生きているのだから
「っと、バイトに行かないとな…。」
夏休みを利用して始めたバイトも、こうした気分を紛らわすためだった
そのおかげでやっと俺にも人の心を取り戻せた
それに俺は今…恋をしている
果たしてこの感情が「好き」というものなのかはわからないにしろ
これを初恋というのだろうか?などと考えちゃったりするわけで
…って、朝から余計なことを考えている暇はないんだっけ
バイトに遅れる!
俺は大急ぎで仕度するとバイト先に向って自転車を走らせた
俺が真面目にバイトをする理由
それは一つだ
「あれ?夏樹君、早いね。」
「ええ、今日は暇でしたし。」
俺の先輩の紗耶さん
大学一年生らしい
なんていうか一緒にいると「ほわ〜」となるんだよなあ
俺の初めての恋…か
やべ…顔がにやけてる!?
とりあえず今はバイトしないと
こんなことを繰り返してもはや3ヶ月がすぎている
俺ももう受験生に突入している
バイトは今夏限り
つまり…この夏がチャンス!!
そのために明後日のバイトは夜まで一緒にしたのだから!
…俺って嫌なやつか?
まあとりあえず…今はバイトに専念しよう…


1997 夏・告白


昨日は憂鬱な毎日だった
進路希望調査とかなんとかで一日学校にいたせいで先輩に会えなかったし
まあそのおかげで先輩の大学に進路を合わせられたんだけどね
絶対同じ大学に行ってやる!!
ってまあ先輩の大学、恐ろしくレベル高いんですけど
しかし…俺はやるぞ!!
ってバイト行かないとな
「こんにちはー。」
「あ、おつかれさま、夏樹君。」
よーし、今日は…頑張るぞ!
………
ガラガラガラ…
とまあ2行でバイトは終了
ああ〜!緊張するなあ…
「じゃあ夏樹君、帰ろうか?」
「あ、はい!」
途中までは同じ帰り道
なんて言おう…かな
ストレートか?
いや、直球すぎるのも…なあ
あれこれ悩んでいると
「夏樹くーん!おいてくよー?」
その声で俺は先輩を探す
考えこんでいたらしく少しゆっくり歩いていたみたいだ
先輩が横断歩道の向こうで手を振っている
急がなきゃ…そう思った
ブロロロロ…
ちょうど先輩の左手にあったバス停にバスが止まった
ズキン!
頭に激痛が走る
あの光景と重なり合う
手を振っている女の子に…到着したバス
それを迎えに来る車…
あの日の光景が蘇った
「ねえー!夏樹君どうしたのー?」
先輩が俺のほうに…!!
「来るな!!」
「え?」
ビビーーーー!!
止まっていたバスを追いぬいた車がクラクションを鳴らして去っていった
その後バスもいなくなり辺りに静寂が戻る
いつのまにか先輩が俺の横にいた
「夏樹君…ありがとうね。」
「…え?」
まだぼんやりする頭にはとっさに理解することができないせりふだった
「夏樹君が叫んでくれなかったら…私、車にひかれてたかも…。」
別に車が来ていたのを知っていて叫んだんじゃない
俺が向ってくる先輩をとっさに拒絶してしまったんだ
俺に近づこうとしたから、危ないからやめろと
俺がとっさに反応してしまっただけだ
「う、うん。バスの後ろに車がいたのが見えたから…。」
などとは言えずに俺は適当に答えておいた
今回はたまたま何事もなかったからよかったけど
ひょっとしたら先輩は…車にひかれていたかもしれない
俺に関わったせいで…?
いや、こんなのただの偶然に決まってる
ただ偶然が重なっただけだ
そう思うことすらできないほどに俺は自分を追い詰めていた
あの日の光景がまたフラッシュバックしてくる
「とりあえず帰ろうか?」
「そうだね…。」
俺は先輩の言葉にあいまいに答えるとそのまま歩き出した
後日俺はバイトを辞めた
そして進学先の大学も変更した
今の高校からは誰も行ったことのない地方の小さな大学に
担任、両親共に反対された
だけど俺はもうここから離れたいんだよ
好きな人を傷つけたくないんだよ
そのために俺はここから離れることを決意した


そして今
俺の目の前に…



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